デビューから6年間、ヒップホップにこだわり動き続けてきたDeli。彼が生み出してきた楽曲は既に膨大な量。そんなDeliの足跡を辿る2枚組ベスト盤『Still Burnin'』がリリースされた。ファンならばニヤリとしてしまう黒光りするブツだらけだ。

 セ ソロで3枚、ユニット(Nitro Microphone Underground、Aquarius)で3枚、更に総監督を務めたコンピではチカチカ・プロとTeam 44 Bloxで2枚、とこの僅か6年の間に計8枚ものフル・アルバムを出した事になるDeli。アーティストであり、プロデューサーであり、しかもプロダクションの代表でもある彼は、「Still Burnin'」や「Up Rising」を地でゆく活動でシーンに“刺激”を与え続けてきた。切れ味最高の営業声やヴァリエーションに富むフロウ、ドクトクの言語感覚(カタカナの響き?)に、ステージでの存在感等々、ラッパーとして数々の武器を持ち、尚且つセルフ・プロデュースする術にも長けた彼だけに、その“メンタル・スタミナ”は相当なものだと思われる。“作り続ける”事の大切さを誰よりも意識し、そこに“どう見せるか”というポイントをきっちり置いたDeliの作品はだからこそ耐久力のあるモノばかりなのだ。悪戯っ子の理想的成長というか、そのアイデアの一つ一つを明確なヴィジョンへと昇華させていくパワーだけ取ってみても、彼は類稀な才能の持ち主だと言える。「ただラップが巧いだけじゃ生き残れない」事を熟知しているからこそ、彼は止まる事なく音楽をデリバリーし続けてきた訳で…。

 そんな彼のこの6年の“足跡”を辿るベスト盤がリリースされた。先にも触れた通り多作なアーティストだけに2枚組全30曲というヴォリュームも、何ら不思議なものではない。冒頭で挙げたフル・アルバム(“数”だけ、だが)以外にもソロ名義で3枚の独立したミニ・アルバムを発表しているからして選び応えがあるのも当然のハナシ。しかもその対象は、所謂“フィーチュリング・ワーク”(Dabo、Ai、DJ Masterkey、DJ Hazime、DJ Tanaken、それぞれの作品での客演曲)にまで及んでいるのだから抜かりはない。全体の構成もNitro「Mischief」やソロ・デビュー曲「Burnin'」から、このアルバムが初出となる録り下ろし曲「ソレデモ」(プロデュースはDeli作品では初登場となる鬼才Subzeroが担当)までのシングル曲/リード・トラックを中心に組んだ"Main Side"と、客演物を含む裏ベスト的な役割と
"Another Side"(Nitroのタワー・レコード限定E.P「Unreleased」でしか聴けなかった'02年作の「大脱走」も収録)に振り分けられ、Deliの全体像、(これ迄の)活動歴を伝えるには正に“ベスト”な体裁となっている。

抜群の持久力でシーンの最前線を走り続けている当の本人らからしてみたら、これが自身の集大成的な意味合いの作品と捉えられるのは甚だ迷惑な話(“終着駅”はまだ遥か彼方である筈)なのだろうが、そうした勘違いも承知の上でこれだけ密度の濃いアルバムが組めてしまう彼の器のデカさこそを讃えべきだろう。その事実をふまえた上で、このベスト・アルバムに接すると“新しい発見”が色々ある。現在は入手困難な初期楽曲などは、Team 44 Bloxのツアーでファンになった若葉印ファン(中高生)にとっては垂涎のブツだろうし、例え全作品を揃えている年季の入ったファンでも新曲の為だけに購入する価値がある。Deliが信頼してやまないハリウッドのマスタリング・エンジニア="Big Bass"ことブライアン・ガードナーの手によるリマスタリングも言わずもがなの効果を発揮している。「Still Burnin'」のジャケット写真で灯された炎はあの頃(「Burnin'」)よりも確実に大きくなっている…。


DELI Discography


"Still Burnin'"
Deli
[Cutting Edge]
2006.8.

"Aquarius"
Deli
[Reality]
2000.9.
"Delta Express Like Illusion"
Deli
[Cutting Edge]
2002.7.
"Deli Presents
?`?J?`?J(??)???????v
V.A.
[Cutting Edge]
2003.4.
V.A.
"?I?{???^?X"
Aquarius
[Cutting Edge]
2003.10.
"24"
Deli
[Cutting Edge]
2005.10.
"Block Buster"
Team44Blox
[Cutting Edge]
2006.4.
2003.4.

その他、Deli名義のミニ・アルバムとしては「口車〜キミキミ注意キイロイドク」(02年)、「Otakarasagashi」(04年)、「Time 4 Some Action」(05年)がある(全てCutting Edgeよりリリース)。

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