ALBUMS
1. Tha Dogg Pound / Cali Iz Active (Victor)

一時は完全に分裂していたコラプト&ダズも昨年仲直り→アルバムを発表。だがその話には“続き”があった。そのリユニオンに一役買ったスヌープ・ドッグが正式に加わってのDPGC的体裁(?)で、彼の“ドギー・スタイル”からアルバムまで出してしまう、という。快挙? いやこれが今の自然な流れ→動き、のようで。バトル・キャット、リック・ロック、スウィズ・ビーツ、ライアン・レスリー、デヴィッド・バナーら参加プロデューサーも多彩。だが“主役”はウェッサイ100%なのでご安心を。
2. Ice Cube / Laugh Now, Cry Later (Toshiba EMI)

ウエストサイド・コネクションでのリリースはあったものの、ソロでは久々の登場となるキューブ。その通算7作目となる本作は自身の“レンチ・モブ・レコーズ”からのリリース。映画俳優としても多忙な彼はその合間を縫ってドッグ・パウンドとツアー中。このアルバムでも当然ながら“ウァッサイ万歳”と歌いつつも、スウィズ、リル・ジョン、スコット・ストーチらのビートに乗る器のデカさを誇示している。DJグリーンランタンの手掛けた「The Nigga Trap」の様なシリアスな曲もシミる久々の傑作。
3. Ak'sent / International (Toshiba EMI)

『コーチ・カータ』のサントラへの参加で注目を集めたLAの18歳。確かにこれぐらいフレッシュなフィーメイル・ラッパーの登場は久しぶりだ。「#1」で「イースト・コーストのフロウとウエスト・コーストのスピットを持っている」と歌っている通り、その引き出しは意外と多く、アルバム・スケールで聴かせるだけの地力を既に備えている。メキシカンとの混血らしく、ビーニ・マンをfeat.した話題のシングル曲「Zingy」は、スパニッシュ・ヴァージョンも用意されている。DJクイック、サム・スニードらも尽力しているが、約半数を手掛ける新鋭ジャガノーツの存在が面白い。
4. Cam'ron / Killa Season (Asylum)

“ロッカフェラ”を離脱、兼ねてから不仲と噂されていたジェイ・Zをディスし話題を呼んでいた最中に公開された5thアルバム。Buzz云々で言えば彼を含むディップセット勢のそれはずっとアツい訳で、正念場となる本作とてその例外ではない。例の声、例のライム、例のフロウ…とユルくも危険なキラー・キャム節は、あらゆるビートで活かされていて、ジュエルズ・サンタナ、ジム・ジョーンズら“仲間”のサポートも当然ながらガッチリ(リル・ウェインとのコラボも)。ディップセット名義作『The Movement Move On』とセットで聴くべき。
5. Jurassic 5 / Feedback (Universal)

LAのヒップホップと言えば、彼らの存在を忘れてはイカン訳で…。実に4年ぶりとなるこの3rdには脱退した(らしい)カット・ケミストの姿は既に無く、DJヌ・マークを中心に、スコット・ストーチ、サラーム・レミ、エグザイルらで、前2作とはまた一味も二味も異なるオーセンティック云々を越えた突抜け感さえ漂ってい。MC陣のオールドスクール・マナーが光る「Radio」や、ジャマイカのブリック&レイスがフックを歌う「Brown Girl」、更にはあのディヴ・マシューズが参加したシングル曲まで。個性際立つマイク・リレーがまた聴けた!
6. Cut Chemist / The Audience's Listening (Warner)

「グループ(ジュラシック5)と両立させる事は難しかった…。それくらい集中して取り組んだレコードなんだ」と本人がコメントするくらい細部に至るまで凝りまくったアメイジングなアルバム! DJシャドウとの7"盤オンリー・セッションでも有名な彼は、ヴァイナル・アスリートとしての本能をここに完全開花させたと言っても過言ではない。ネタの豊富さと、それを決して嫌味なものにしないユーモアたっぷりのエディット…イードンとMR.リフをfeat.した曲なんて創世記的な豪快さ。チリチリ・ノイズにも人肌の温もりすら感じる名盤。
7. Braille / Box Of Rhymes (Handcuts)

ポーランドを拠点とするライトヘディッドのリーダー=ブレイルのソロ3作目。2ndからのインターバルや、彼のレーベル“ヒップホップ・イズ・ミュージック”のコンピやシヴィオンのソロの事を考えると、彼のモチベーションの高さが伝わってくる様で。事実、本作はあの誉れ高き名作『Shade Of Grey』を超える“打ち出し感”のある作りになっている。ドラムの立ったブーム・バップ・サウンドと、それに掻き消されることのないストレートな(クリスチャン・)ラップは健在。盟友オメガ・ワッツにオセロ、そしてストロ(プロカッションズ)にスピーチ(!)、トニー・ストーン、カウントベースDらの間違いない仕事ぶりにもヤラれる。
8. V.A. / Facets (Tri-Eight)

“ヒップホップから出発した個性的な〈多面性〉”という文言がプレス・リリースにあったが、そのラインナップに目をやるだけでその意味が分かってしまう?? ショーン・J・ピリオドからジオロジー・オーパス、モーガン・スペイセック、ハーモニック33、エルモア・ジャッド、ヒデオ・ササキ etc…この何の脈絡もないような、N.Y、L.Aからヨーロッパ、東京のクリエイターたちには明らかな“共通点”がある。それが何なのかは、聴けば判る。“トライエイト・レコーディングス”信頼の証となるレーベル・コンピ第2弾。ズッシリ濃い5年分のオト。
9. The Coup / Pick a Bigger Weapon (Epitaph)

9.11のテロをジャケット上で“予言”していたことでも知られるハードコア・メッセンジャー・ユニット=ザ・クープの新作。最近で言えばデッド・プレズのM-1のソロや、P.E.とパリスのアルバムがラジカルで意識の高い快作として有名だろうが、最後の“P-ファンクの子供”世代の彼らの方が“アソビ心”で上回った印象。「しなやかでたくましく」という形容がピッタリの、まっクロい音楽(=Funk)。姿勢的にも真っすぐヒップホップなだけに、ブラック・ソートやタリブ・クウェリとの マイク交歓にもアツくなる。
10. ShinSight Trio / Shallow Nights Blurry Moon (Bad News)

ボストン…と言えば「イイイインサイト?」という声も返ってくる位、信奉者も多いスーパーMC=インサイトと、彼のエレクトリックのアルバム等にもビートを提供していた日本人トラック・メイカーShin-Ski、その彼とのプロダクション・チームLavitatorzでも活動するDJ Ryow a.k.a. Smooth Current、という素敵な編成で作られたスペシャルなアルバムがお目見え。タイトルから想起する“夜のイメージ”は、そのムーディなサウンドに見え隠れしている? いや、これは決して雰囲気モノではなく、芯のある“ド・ヒッップホップ”なので、あしからず。あのインサイトが気持ち良さげにラップしている位、精度の高いビーツとスクラッチ。やばし!
11. V.A. / Blue Chronicle (Miclife)

ここ最近で最も売れたインスト物12"と言われる「Gems EP」(1+2の売上は8,000枚以上、とか)の発展型となるプロジェクト=Blue Chronicle。“BBE”の「Beat Generation」シリーズの日本版とも喩えられるこの企みに関わったのはお馴染みの面子=DJ Ryow、Shin-Ski、Levitatorz、そしてCradle。インストであることを前提に作られた珠玉のサウンド・スケープは、様々な表情と物語を秘めている。しかしながらトータルで“青”をイメージさせるところがニクい。座布団五枚!
12. DJ Mitsu The Beats / Excellence : Selected Works (P-Vine)

リミックス版も大賑わいだったリーダー作『New Awakening』、そしてGagleの久々のアルバム、と株価上昇中のDJ Mitsu The Beats。彼がこれまで手掛けてきた国内外のアーティストの音源(主としてリミックス)を、彼も所属するJazzy Sportの監修でアルバムにしたのがコレ。プラチナ・パイド・パイパーズからクラウン・シティ・ロッカーズ、イヴァナ・サンティリ、バクラ他、忘れ難い繊細かつ大胆なミツ仕事の数々は真にクロスオーヴァーなもの。改めて目からウロコ……の一枚。