今年5月11日に25周忌を迎えたボブ・マーリーの名曲の数々をカルカヤマコトがカヴァー。数あるボブのカヴァー集と比較しても全く異色の作品に仕上がった模様。

 カルカヤマコトは、レゲエ・ミュージックの虜となり2001年、高校卒業後単身ジャマイカへと渡り、その後も日本とジャマイカを往来し生活してきた。1stアルバム『カルカヤマコト』は、そんな生活をしていた2003年にリリースされている。ボブ・マーリーやマービン・ゲイと言ったアーティストのカヴァーを交えた内容で、地元大阪のアーティストを迎え、ジャマイカ音楽に対する憧れを素直に繁栄させた作品だった。

同年、長女の出産を経験し、彼女の生活の基盤は次第にジャマイカが中心となっていく。2004年の2ndアルバム『Black and Browny』は、ジャマイカで生き抜くそんな姿がハッキリと示された作品となった。そして、後のQ45制作によるシングル「Gal Anthem」やダブ・アルバムをリリース。2005年の3rdアルバム『Money Voice』では、子を持つ親としての声が聞かれ、続く4thアルバム『System Of Jah』は、彼女の環境の中で見つけていった人間としての考えを更に深めたメッセージに溢れた作品となった。

その後、音楽番組「69 Tribe」の企画によって実現したボブ・マーリーの娘、ステフ・ポケッツとのコラボレーションを体験し、次第に彼女が生きる中での様々な現実は、ある偉大なアーティストが伝えてきたメッセージとシンクロしていく。ボブ・マーリーが、その人である。これまでの彼女の作品の中でもカヴァーされ、歌い続けてきたボブ・マーリーの曲。今回の全編ボブ・マーリーのカヴァーという企画が自然な流れであったことは言うまでもない。

 トラックの制作は、前作『System Of Jah』を手掛け、デタミネーションズの名曲「Mango Rock」のタイトルにもなったギタリスト、マンゴが手掛けた打ち込みのトラックにメロディアスな生音を交えたもの。更に前述のステファン・ポケッツとの「Iron Lion Zion」を含んだ7曲が収録されている(11月にはマンゴと制作した他の5曲とテイク違い2曲を含んだ“パート2”もリリースされるそうだ)。彼女の生き方が見いだしたユニバーサル・メッセージが、ボブ・マーリーの曲を通じて表現されたこのアルバム。カルカヤマコトだからこそ、意味のある作品となっているのが特別なことだ。


「カルカヤマコトCovers Bob Marley」
カルカヤマコト
[LD&K / POCE-5704]