前作『Unity』で懐の深さを示したクール・ワイズ・メンが6/10、待望のサード・アルバム『Salty Dinner』をリリースする。前作とは打って変わってスカ・ミュージックのど真ん中を突いた痛快な作品となった。

 まずは旬な話から。この春、再来日を果たしたリヴィング・レジェンド=リコ・ロドリゲスのサポートを、我らがクール・ワイズ・メンが無事務め上げたことについて。全国4ヶ所でのツアーでは毎回セットリストを変えただけではなく、予定されていなかった楽曲も急遽セッションで追加されたりとハプニングもあったようだが、それもリコがワイズ・メンの実力を認めたことの証。そして、ワイズ・メンにとっても今回の共演で、バンドの持つ、底しれないポテンシャルがグイっと引き出されたようだ。

 「最初、リコのバックをやるっていうのでもらった曲をキチッと覚えなきゃいけないんじゃないか?とか、そういうことばっか気にしてたけど、『お前らもっと楽しめ、リラックスしないといい音楽が生まれてこないんだぞ』って。初日こそ演奏も崩れかけたんだけど、二日目を無事に終えたときに『ここまで立て直した彼らを抱きしめてやりたい』って言ってくれて、その次はまたよくなって……そうしてリコが俺らをどんどん信頼してくれてきてるのがわかった」(篠田)

 スカ〜ルーツ・レゲエはもちろん、グッとジャズに寄ったアプローチまで、リコの音楽性の奥深さに柔軟に対応できるのは、ワイズ・メンがもっとも適任だったのは、最終日の東京のライヴでもしっかり証明されていた。

 で、だ。その大仕事を成し遂げられたのは昨年5月にリリースされたダンスホール・レゲエからカリブ、ファンクまで多彩なゲスト陣とのコラボレーションによって生まれたコンセプト・ミニ・アルバム『ユニティ』と、ド直球にスカと向かい合った待望の3枚目となるニュー・アルバム『ソルティ・ディナー』という毛色の違う2作を通過したことが大きいと思うのだ。

 「わりとヴァラエティに富んでいた『ユニティ』に対して、シンプルに、原点へ帰ったような……それも自然な感じなんですよね」(浜田)
 「奥のほうに閉まっていたスカの7インチが、なんか聴きたくなっちゃったんだよね」(土川)

 日本のシーンのなかで、ワイズ・メンほどレゲエ全般に深くコミットした活動を展開しているスカ・バンドはないと思うのだが、これまでの彼らの作品がさまざまな音楽を呑み込む、スカの貪欲さを前面に打ち出してきたのに対して、そこを追究したことでやっぱり見えてきたスカの揺るぎようのない“核”の部分を、『ソルティ・ディナー』は至極シンプルな味付けで供してくれる。素材の魅力を最大限に引き出した内田直之のミックスとも、素晴らしい相性をみせている。

 「以前は垣根を取り払って聴いてもらいたいって言ってたけど、今はそのままを受け止めてほしいっていうか。『リディム』を読んでるような人のなかでは特殊な音楽かもしれないけど、俺ら、こういうバンドなんで(笑)」(篠田)


「Salty Dinner」
Cool Wise Men
[Or Glory / Galactic / GLOR-0018]