上昇を続ける日本ダンスホール・シーンに次に斬り込むのは誰か?……ここで登場するSingasunとChehonの2組は、その筆頭となるかもしれない存在だ。どちらもなかなかフレッシュな初音源を届けてくれたばかりなので、両者の発言も交えながらその魅力を紹介しよう。

?@「One Love!! 人種、言葉、音楽、すべての壁を取り払え!!」??“歌を通して伝えていきたいことは?”という問いに対してこう答えてくれたのは、このたびデビュー・ミニ・アルバム『Risingasun』をリリースするSingasunのリーダー、Rockin' Tosh(彼はその名の通り、ピーター・トッシュを敬愛しているという)。彼とMaku Di Iver、Asakoの3人が活動を続けてきたのは、日本でもジャマイカでもなく、LAだ。彼の地のレゲエ・シーンについての情報が日本に入ってくることは多くないが、ジャマイカのビッグ・アーティストも頻繁にライヴを行い、現地で活動するクルーも少なくないという。

 「小さいながらも確実に強いものがあるシーンです。やはりウエスト・サイドということでヒップホップが強いですが、レゲエ・シーンもしっかりありますし。ジャンルの壁を作らず、いろんなジャンルと交わる事の大切さをここでは学びましたね」

 実際、様々な人種のなかで活動を続けてきた彼らだけに冒頭の発言があるのだろうし、それゆえに今作は幅広い層にアピールしうる内容となっている。少しソカ・フレイヴァーも盛り込まれた冒頭曲「Sha La La」から一気にアゲまくり、以降もAsakoの伸びやかな歌声に対してRockin' ToshとMaku Di Iverがヴァリエーション豊かに絡み付いていく……その迷いのない真直ぐさは高感度大。自身の個性については「明るい、前向き、ポジティヴ」と語る彼ら。すでに各地のダンスを賑わせ始めているようなので、チェックしておいたほうがいいかもしれない。

 続いてご紹介するChehonは大阪のコリアン・タウン、鶴橋から飛び出した新人DJ。マイクを握り始めたのは2002年とそのキャリアは長くないが、“みどり”という名の女性に捧げたラヴソングの体裁を取ったダブルミーニング曲「みどり」が地元からブレイク、全国へとその名が拡がりつつある中、Dr.Productionから同名のミニ・アルバムがリリースされることになった。その地元に対して訊くと「大阪は毎日ダンスがあってレゲエ人口やスタジオも多いし、環境はかなり恵まれてるっすね。歌い手も多くて生き残るのも大変やけど、その競争心がまたレヴェルアップにもなる」と話す。“Guilty”リディムを使用した「みどり」や“Stars”リメイク・オケの「Banzai」のようなミディアムで映えるストレートな歌声が心地良い印象を残す一方で、背伸びのない等身大のリリックもまた彼の魅力。ただし、それを“芸”として聴かせるだけの言葉運びのおもしろさがそこにあるのも事実だ(その意味では三木道三との共通点を感じさせなくもない)。

 「今の自分の中ではそういうリリックが多いかな。でも、自分の置かれる立場が変わったり年齢とキャリアを重なることでまたさらに変化していくと思うし、コアなメッセージも伝えていきたい」
 「もっとさらにアンダーグランドを盛り上げていけるよう協力していきたい」と話す彼は、まだ21歳。作品リリースのあるDJとしてはもっとも若い世代に属するであろうChehon、今後の動向に期待していいDJの登場だ。