昨年8月にリリースされたU-Dou & Platyの1stアルバム『Vibes Up』に続く2ndアルバム『Big Up』は、レゲエ・ミュージックで垣間見る“2泊3日沖縄の旅”がコンセプト。これまで同様、沖縄の素晴らしさと現状を歌う彼らを案内役にした沖縄を満喫させてくれるアルバムだ。

 レゲエ・ミュージックと沖縄ミュージックを融合させ、自らのアイデンティティを沖縄から全国各地へ発信するアーティスト、U-Dou & Platy。 前作がいま書いたように“沖縄から全国へ”をコンセプトにした作品とすれば、今回は逆にリスナーを沖縄へ迎え入れる形となっている。

 「(『Intro』に続く)最初の 『Bashofu』はウェルカム! 沖縄の情景を思い浮かべる曲ですね。若手の民謡歌手、神屋千尋ちゃんをフューチャーしてるんですけど、この曲は沖縄ではホント誰でも知っているポピュラーな曲なんですよ」。確かに沖縄に行ったら、きっとこんな素敵な情景が見れるんだろうなと思える曲だ。地元のシンガー神屋千尋の歌声も、そんな気持ちを盛り上げてくれるはず。続く「乾杯」でさらに気持ちを沖縄にもっていかれた後は「オトーリ」(宮古島独特の酒のもてなし方法。輪となって一つのグラスを飲み回す。しかもそれはエンドレスで続く)で、U-Dou & Platyをはじめ彼らの仲間たちが盛り上げてくれる。続くはジャマイカと同じく、沖縄にも古くから伝わるヤギの食文化をコミカルに歌った「ヒージャーメー」。

「メジャー・マッケレルが好きで、ちょうどこの頃、家で聴いて真似してたのが始まりで…」と語る通り、あの時代のダンスホールの匂いがプンプンする(後の「そば」も彼等の80'sダンスホール・フリーク振りを強く感じさせる楽しいダンス・チューン)。さらに彼らが見てきた、そして感じてきた沖縄の現状を赤裸々に伝える「上等沖縄」や人生観を投影した「闘牛」へと続く。ここまでは、インタールドも楽曲も共に解りやすく、どれもストレートに沖縄を見せてくれる曲で楽しめる。だが、中盤以降の曲は、少し趣が変わってくる。もちろん沖縄を解りやすく歌っていることには変わりないが、見たものを感じさせるのではなく、感じたものを見せる様な曲が多くなるのだ。特にPlatyのお婆ちゃんに向けて歌った“チェリー・オー・ベイビー”トラックでの「うさみオバー」はその要素が高いし、森田健作の「さらば涙と言おう」のカヴァーも彼らが歌うとそういったものの代表曲として聞こえてくる。「オバーは沖縄の苦難の日々を全部知ってるし、俺にとってはホントV.I.P.。今は呆けちゃってますけど、覚えてるか?オバーちゃんって曲です」。この言葉から、他の曲との違いが解るだろう。

 2泊3日の沖縄の旅、歓迎に始まり、観光案内で様々なものを見せてくれ、沖縄の文化に触れる。もちろん、楽しくもあるが、考えさせてもくれる濃密な時間は過ぎていく。やがて別れのときが訪れ、旅は終わる。
 「1日目から3日目まで情景を膨らましてもらえたら。聴いている人が勝手に、おもいっきり膨らまして下さい」(U-Dou)
 「2泊3日だったら、働いてる人も有休も取れるだろうしね(笑)」。「僕らはせっかくレゲエをやっているんだから、沖縄の楽しさもそうだけど、そうではないところも聴いてもらいたいですね」(Platy)

 『Vibes Up』から『Big Up』へ。今作では、前作以上に沖縄文化とレゲエ・ミュージックを始め様々な音楽を融合させただけでなく、“2泊3日沖縄の旅”というコンセプトの下、彼ら沖縄人ならではの濃厚な喜怒哀楽を表現した充実したアルバムとなった。

 最後に「次作のコンセプトは?」と訊くと「今度は“Link Up”。色んな人をフューチャーしてやっていきたい」と言っていた。そういえば日本一早いレゲエ・フェスティヴァル、「Japan Reggae Festa in 沖縄 2006」のアンセムとしてPushim、Moomin、Ryo the Skywalker、Home Grownといった先輩たちと共にリリースした「Give Thanks」は、次への始まりと言えるかも知れない。




"Big Up 〜我した島沖縄〜"
U-Dou & Platy
[Victor / VICL-61929]