ALBUMS
1. LL Cool J / Todo Smith (Def Jam)

“デフ・ジャム”一筋のマッチョな艶男=LL、通算11作目のオリジナル・アルバム。彼ぐらいのキャリアになれば、どうしてもやり尽くしてしまった感が出てしまうものだが、どうしてどうして、今作も耳を奪われる展開がそこかしこに秘んでいたりする。何と言ってもゲスト(J.Loからジェイミー・フォックスまで)の使い方が凄い(単独でマイクを握ったのは1曲のみ!)。だが、それを決して豪華だと思わせない所が、主役の“華”。最多サポートのトラック・マスターズらが用意したビートも緩急付けられていて、流石の充実ぶり。
2. Bubba Sparxxx / The Charm (Toshiba EMI)

ブリブリブリブリ……とまたアホな曲が海の向うで売れとりマス。ティンバランドの“ビートクラブ”在籍時はひたすら田舎者キャラで売っていたラップ巧者ババが、アウトキャストのビッグボーイ率いる“パープルリボン”軍団入りを果たし、3枚目のアルバムを完成させましたとさ。先の「Ms.Booty」の様な今のアトランタっぽいブーティー・ソング、スナップス系があるかと思えば、これまでの延長線上のオーガナイズド・ノイズ、ティンバとのセッションもあり、アルバム全体的にとてもよくまとまった感じ。相変わらず、ウマいですね、ラップは。
3. Remy Ma / レミーに首ったけ (Universal)

ファット・ジョー率いるテラー・スクワッドの紅一点=レミーの初アルバム。リル・キムお務め、フォクシー引退(?)という現在、トリーナと並ぶフィメール・ラッパーの頂点的存在に早くも成った感じがあるのだが、彼女自身はそのカテゴリーをお気に召さない様で…。スウィズ・ビーツを始めとするビート担当陣と張り合うパフォーマンスを見せる彼女をチェックすればその気持ちも判るような。トレチャラス3のリメイクの例の曲の日本盤のみのスペシャル・リミックスでは先日ステージで一緒になったクレバとの絡みも。
4. DMC / Checks Thugs & Rock'n'Roll (Warner)

レヴ・ランに続きDMCのソロも到着。かなり前から作り込んであったらしく、サラ・マクラクランとのデュエット(?)やら、バック・チェリーのジョシュが歌い、元カーズのエリオット・イーストンがギターを担当したボブ・ディランのカヴァーやら、エアロのジョーイ・クレイマーとトム・ハミルトンが参加した「Machine Gun」やら、キッド・ロックとの新旧マッシュアップ対決(?)やら、故JMJ制作曲やレヴ・ランとのリユニオンと“フック”はテンコ盛り。この大ヴェテランを前にしたら、トレンドなんていう言葉は最早何の意味もない?
5. Fresh Air / Slowly Coming Along... (Miclife)

LAアングラ界に吹き付けるフレッシュな風。海外(USにとっての)でも評価の高い3人組フレッシュ・エアーの1stが日本盤で+3特盛状態で登場。いやぁ…心地いい。奇をてらうことなく快楽原則に従ったツボ押しで、オーセンティックなヒップホップに飢えた輩を癒すラップとビートはどこまでも青く、淀みがない。仏国のジャズ・リベレイターズや、日本のDJ Kiyoによるリミックスもしっかりと輝いていマス。ジャジー云々を飛び越えた気持ち良さがここに。
6. Kollabo Brothers / For My Peoples (Handcuts)

北欧、フィンランドはヘルシンキから届いたオールドスクール中毒者の手紙(?)。キャリア20年のヴェテラン=クール・スキー(“クール・キャット・レコーズ”のボス)と約一回り下のスタッフローの2DJ/プロデューサーが繰り出すビートはひたすらRuggedでDope。つまりアーリー90'sの香り。で、またそこに乗っかるゲストMCたちの面子がスゴい。グランドマスター・カズ、ドナルド・Dから、クレイグ・Gにダイヤモンド、ティム・ドッグ、パリスにア・フーラと今のUS物には到底もとめられないようなセンスが炸裂! ヒップホップ“好きー”なら是非。
7. Team 44 Blox / Block Buster (Avex)

千葉/常磐エリアに股がるラフでタフなMCを無作為に集めたコンピ…などを評してもおかしくない内容だが、発起人は言わずもがなニトロのメンバーで“チカチカ・プロ”代表、そして昨年Yakko、Mars、Manie、Mikrisと共にこの名前で全国をツアーしたリスベクタブルな活動家=Deli。この名義での初音源集となる本作では、Deli、Yakko、Marsや同じく千葉出身のDaboらが曲毎に“番(長)”を張り、トータル・バランスのとれた聴き応え充分のモノに仕上がった。決してサグイズムのみにこだわった作りではないので、勘違いなきよう。 
8. DJ Napey / First Call (P-Vine)

神戸シーンを裏でも支える音職人DJ Napeyの2ndアルバム。“最初の電話(オファー)”というタイトルにも表れている通り、無理なく自然に組むことになった(ような)ひとクセもひたクセもあるゲスト陣〜韻踏合組合、茂千代、Rhymester、Icebahn、Mr. O.K.I.他〜からも透けて見える“以上”に、一体感がありアルバム一枚の流れも面白い。全てにおいてドクトクのセンスと、基本(何を大切にすべきか、というモノ)が感じられる。オススメ。
9. DJ Mucca / Dignity (SP)

東京夜街黒帯集団Black BeltのDJ=Muccaのリーダー・アルバム。彼自身も深く関わる全国インディーズ連盟“SP”からのリリースとなる本作にはBlack Beltは勿論のこと、持ち前のコネクションを生かしたヤバい面子が集結(大蛇、KM-Markit、D-Ask、タイプライター、D.O、Hyena、Kenta5Ras、Norisiam-X & Anty The 紅乃壱、etc)。“Made In Street”という永遠のテーマに基づいたトピックスと、ハードコア(ロック)の流れも感じるダイナミズムと、男のワンループ系のぶっといビートにMuccaの漢(オトコ)気を感じて頂きたい。
10. Anarchy / Growth (R-Rated)

レペゼン京都、関西、レペゼン、Ruff Neck、レペゼンR-Rated、生き様をライムに刻む魂の叫びAnarchyの2nd EP。タイトル・トラック「Growth」では自分のライフ・ストーリーを披露し、カップリングにはライヴで人気の「Represent」に、R-Rated代表Ryuzoとの「Change The Game」、そしてボーナスには先の「Represent」同様、『Ghetto Dayz』(C'oz:完売)に入っていた「Pride」と万全の内容。この男の存在感は既にアルバム・スケールだと誰もが感じる好パッケージ。
11. Shingo☆西成 / Welcome To Ghetto (Libra)

西成大阪関西アジア、長屋の一人っ子と言えばShingo☆西成。「ゲットーにようこそ」と手招きするその男の話芸の幅、ラップのカッコ良さは逆に(得意の)フリースタイルだけでは味わえないもの。曲のストックの多さでも恐らくは関西一の彼が、MSCで知られる“Libra”とディールを結んだのは、どう考えても明るい話題、だろう。Evis-Beatsとの「ゲットーの教えです」(名曲!)からDJ Taki/Greekとの2曲まで、自由自在にスタイルを変えながら、斬れる一家言とおーいお茶真っ青な迷フレーズをブチ込む彼はやっぱり「ゲットーの玉手箱やぁ〜」。
12. Illtecnix / How Ill I Am (Messiah)

Nippsの「Venom 2002」に参加し、その名を全国に轟かせた金沢のイルなマイクマスター=EMB Ryoと、TKSの2MCユニット=Ill Tecnixの6曲入りEP。「これで叩かなきゃお前はインポ わかる耳射抜くプラス抜く度肝 揺らす鼓膜 とびきりのShit 天井知らずのカスタマイズ玄人仕様 つける白と黒ハッキリとアルビーノ上げる激しく打つ心臓 生命動力快音機能付きのコブシ大に肥大した亀頭」というライムに反応出来る人達には間違いない音もフロウもクロいサイコーな一枚。“エル・ドラド”の正統継承者がここ(金沢)にも!