東京を拠点に活動するサウンド、Pace Makerがジャパニーズ・オンリーのミックスCD『Master Blaster』をリリース。自身のイヴェント名をタイトルに冠しただけあって、Pace Makerの本領を発揮する作品となった。早速、中心メンバーであるJagga-Tに話を訊いてみよう。

 近頃、ミックスCD(&テープ)をお手軽なレゲエ・コンピと同じように考えている輩がいるらしいが、正直「ちょっと待て」と言いたい。もちろんミックスにはサンプラー的な要素もあるが、加えて各サウンドマンが持てるアイデアと気合いを込めて作る“アーティスト・アルバム”という側面もあるのだから(全部がそうではないだろうけど)。ここに届けられた『Master Blaster』は、東京を拠点に奮闘するPace Makerがミックスを手掛けたもので、彼らがASLN Movementと共に2003年より開催しているイヴェント「Master Blaster」と連動する形で制作されている。セレクターのJagga-Tはこのイヴェントについてこう話す。

 「『Master Blaster』が目指しているのは、まず第一に踊れること。さらに、ブランニューからダンスホール・クラシック、ファウンデーション、ラヴァーズなど、さまざまなレゲエの魅力を楽しめること。それとフロアとステージの一体感をキープすること、ですね」

 「以前から自分らでもやりたかったし、イヴェントを伸ばしていきたいという思いもあった」ことから制作された今作。その第一の特徴は、日本人アーティストの楽曲のみで構成されていることだ。

 「イヴェント自体、この日本を支える多くのジャパニーズに出演してもらってきた事もありますが、“Made In Japan”のレゲエの面白さを伝えたかったというのもあります。これまでジャパニーズ・オンリーのミックス音源があまり世に出ていなかったので、自分でも挑戦してみたかったという思いもあったし」

 イントロダクション的なHase-Tの「Blast Town」に続き、Ryo the Skywalker、Minmiのミディアムでゆったりと幕を開け、Joytoyの「莫愁1922-1938(Twilight Reggae Remix)」で意表を突き、Spinna B-ill & The Cavemans「ライオンの子」からNG Head〜Boogie Man〜Vaderになだれ込む……という前半戦から耳を引き寄せられる今作。Racy Bulletの面々やBigga Raijiら同じ東京陣の他、Mighty Jam RockやFire Ballのアノ曲なども盛り込まれており、現在のシーンの多様性を強く印象付ける作品となった。

 「心掛けたのは選曲の幅ですね。大物はもちろん、良いVibeを持つ次世代アーティストもセレクトしたことで、“Master Blaster”らしい色が出せたと思います」

 「Stone Loveなどジョグリン・サウンドの影響を強く受けたので、“誰でも踊らせられるプレイが出来るサウンド”を1番に考えている」というPace Makerだが、時にたたみかけ、時に聴かせるプレイは、まさに現場での彼らそのもの。その意味でも、今作は単なるジャパニーズ・ダンスホールのショウケースではないのだ。

 「レゲエの奥深さを知って、楽しんでもらいたい。メッセージ性の強いリリック、丁寧に作られたリディム、チューンに込められたレゲエ・マナーなど、聴かなくては分からないことが沢山ありますから。ぜひ現場に来て自分の目で観て、このCDを自分の耳で聴いて、体感して欲しいです」



“Master Blaster”
V.A.
[Victor / VICL-61875]