ALBUMS
1. Lil'Flip / I Need Mine (Sony)

“サウス・キング”の席をめぐるT.Iとの抗争にもカタを付けたリル・クリップの最新作。コレがいきなりのスクリュー系オープニング曲にのけぞった人もまんまと乗せられてしまう程の驚愕クオリティ。ドクトクの声とフロウを立てるプロデューサー陣にはマニー・フレッシュ、スコット・ストーチ、サラーム・レミ、DJポール&ジューシー・Jの名も。ライフ・ジェニングス、ネイト・ドッグ、“対決盤”も出していたZ-ロウといった曲に合ったゲストの存在も華を添えるキャリア最高作となるべき作品、だ。

2. V.A. / Big Boi Presents Got Purp? Vol.II (Toshiba EMI)

アウトキャストの片割れ=ビッグ・ボーイが新たに設立した“パープル・リボン”の御披露目コンピ第2弾(前回はミックス・テープ・アルバム)が登場。ダンジョン・ファミリーの仲間、キラー・マイクやスリーピー・ブラウンといったお馴染みの顔触れから、ティンバランドの“ビートクラブ”を離れたババ・スパークスに新鋭シンガー、スカー(♂)やジャネイル・モネイ(♀)まで、ジョージア〜ミシシッピ〜カンサスより才能豊かな人材が集まった。ビッグ・ボーイのカラーと趣味がよく反映されたストレートな南部系サウンドとラップが楽しめる、実に良く出来た内容。
3. Public Enemy / New Whirl Odor (Rambling)

サマー・ソニックでのステージも記憶に新しい革命集団P.Eの最新作。メッセージ最優先の社会派なアプローチ(故JMJに捧げた曲も)が不動の柱となっているのは言わずもがなだが、新たな変化を見せているのがそのライムを支えるサウンド・プロダクション。メンバーのプロフェッサー・グリフ(情報相)にジョニー・ジュース、C-ドッグ、アブノーマルらが担当したビートはエキセントリックなコラージュやライヴ・バンド等、所謂従来の(期待されている)P.E路線とは一味違うものとなっている。DVDとの2枚組というのも嬉しい。
4. Blackalicious / The Craft (Sony)

ギフト・オブ・ギャブのキャリア初のソロに、チーフ・エクセルとラティーフのユニット=マルーンズのアルバムといった課外活動(?)を挟んでの久方ぶりのアルバム。今回も勿論プロデュースは全曲チーフ・エクセルが手掛けているのだが、まるでB.E.Pな(?)「Powers」の様なポップな楽曲や、P-ファンク的な宇宙観さえ漂う曲もあり、彼らの器の大きさを強く感じさせる作風、となっている。相変わらず超舌技巧のギャブと、リリクス・ボーン、ラティーフ、ライフセイヴァーズらとの絡みも面白い、一皮ムケたアルバム。もうアングラとは呼ばせない?
5. Lushlife / Order Of Operations (Miclfie)

わずか1ヶ月足らずで20万ダウンロードを突破したカニエ・ウエストmeets『ぺット・サウンズ』のマッシュアップ企画『West Sounds』で名を上げたニュージャージー出身のMC/プロデューサーのデビュー・アルバム。ローン・カタリスツのJ・サウンズをフィーチュアした曲こそあれど、その全体的な“ひとり感”は鬼才イードンにも劣らないくらい強烈、だったりする。クラシック・ピアノとジャズ・ドラムの素養を持ち、ターンテーブリズムにも傾倒していたことがある彼は、リリカルでオーセンティックな90's NYヒップホップを自分なりのやり方で“進化”させている。
6. Masaru / Live Is Life (妄Records)

妄走族の猛攻は続く。今月は般若の泣ける新曲「オレ達の大和」(E.P)、と“フリースタイル・マスター”Masaruの初ソロ・アルバム。まずド頭の「Roots」がいい! 「見るものに感動 得るものに衝動明日への行動 ダチとの共同」等のグッとくるラインばかりのこの曲で改めて4大要素(ルーツ)について自分の視点で説いた彼はその世界観をアルバム・スケールで拡大することに成功している。しかしその足場は決して揺らぐことはない。…という等身大のメッセージが“生”で伝わってくる会心作。何とも魅力的なMCだ。 
7. Ryuzo / Reloaded (Avex)

マグマMCズやヤングガンズでの活動で知られる京都のドン=Ryuzoの初となるソロ作。自身のプロダクション/レーベル“R-レイテッド”からAnarchyやLA Bono、"E"qualも参加した同作は、「ひたすらにグッド・ミュージックを追い求めた」感の強い話題の「戦メリ-One Day-」を含め、徹頭徹尾“ストリートの視点”から歌われたもの。その声やリリックに滲み出ている“哀感”は確かに“R”だけの持ち味だ。まずはリローデッド、おめでとう!! 

8. I-DeA / Da Front And Back (Tokuma Japan)

前作『Self-expression』から約1年半ぶりとなる“ヒップホップ・プロデューサー”I-DeAのリーダー・アルバム。今回もSeedaを始めとするScars連中を始め、MSC、L-Vokal、Kenta5RasからBoo、Saboo、またシンガーでは秋田犬Dob-RokからJamosa、Jay'ed、武田カオリ、鈴木桃子まで、他では見られないような面子と組合せがトラックをよく理解したパフォーマンスを披露している。しかしながら驚かされるのが、“主役”のトラックのレンジの広さ! 生音の無理のない導入を含め、あり得ないレヴェルに達しているのでは!?
9. Chi3 Chee / Pipe Line (Alpha Enterprise)

日本を代表する“異能集団”Think Tankの“ブラック・スモーカー・レコーズ”よりChi3 Chee (チチチ・チー a.k.a ヒキッチ)のソロ作が遂に登場! K-Bombとのプロデュース・ユニット=クワトロシェネガスでの活動でも知られるサックス奏者、エンジニアの彼が、Think Tankの面々はもとより、夜の拠点地とする池袋のクラブ「Bed」に集うアーティスト達(太華からGarblepoorまで)と気ままにセッションした、という趣きの“ジャジーでソウルフルなヒップホップ”。それは音の洪水として流れるのではなく、革新的な“音楽”として鳴り響くものだ。
10. 餓鬼レンジャー / Go 4 Broke (Victor)

持ち前の“ハチャメチャさ”が少し鳴り秘めた感もあった大人な前作から一転、餓鬼レンの“マサ斎藤”魂(ヒントはタイトルにあり)が爆発した新作が到着。刃頭が制作した一曲目から、“ライヴでの勢い”そのままの、ドライヴするラップ・ワールドがしこたま楽しめる仕掛け。“クチコミ”シリーズは何と全地球規模(60億)に!? NG Head、Kreva、Shingo★西成等、ゲスト・アーティストとの顔合わせ的にもかなりオモロイ一枚。
11. Wolf Pack / ファイロマニア (Columbia)

手前ミソで申し訳ありませんが、ウチ(D-St.Ent.)からのニュー・リリースです。(通算)2枚目のアルバムですが、至って3枚目のキャラの2人(…と言ってもアフロとハゲではありません!)。そのマニアックさ加減が随所に滲み出たケッ作です、ハイ。全て地元大阪録音、ゲストもゆかりの人物中心、トラックメイカーは元メンバーのHi-A+ Production(ハイエイタスと読みます)とDJ Wakita、そしてBeach Logic。これ以上申すまい。あ、最後にもう一言。ジャケを見てピンときた人はヤツらと“同じ周波数”です。気ヲ付ケロ。

SINGLE
12. V.A. / ヒバチ!タイムス Vol.1 (ケムリプロダクション)

本誌今号の年間ベストにも選ばれていたDJ Yasの素晴らしいアルバム『Smoking Gun』で幕開けした新興レーベル“ヒバチ!”が贈る定期発信オムニバスEP第一弾。トラックは全てDJ Yasが担当し、その間違いのない音に乗るアーティストは、Lamp Eye(あの「I Shot The Police」のリミックス!)に名古屋のM.A.S.K. & Tetsu、そしてT.H.C. CrewのIgavock、という個性も様々な3組。いずれも“B-ゴコロ”をくすぐる楽曲。早くも“Vol.2”が待ち遠しくなる好企画也。