MIX CD
1. The Silver Child & MSA / Still Searchin' 3 (Beat Design)

いわゆる“ネタものミックステープ”の分野でその先駆者であるMuro以外で絶大な信頼を得ている存在と言えば、コン&アミルかこの2人。3枚目となる今作でもタイムリーなセレクションと抜群の構成力で真っ黒い世界へとリスナーを誘ってくれる。シャウトアウトはMuro、Kashi Da Handsome、Load FinessにBangcho Boogie。黒い音に飢えている人は聴くベキ。ここにはそのヒントが有り余るほどにある。

ALBUMS
2. Lil' Kim / The Naked Truth (Warner)

例の発砲事件での偽証罪で懲役刑(1年)をクラった“クイーン・オブ・スーパー・ビッチ”の4作目。その言動や見せ方の問題は常に物議を醸しているが、それも大物の証拠(?)。スコット・ストーチ、レッド・スパイダ、7、J.R、デナン・ポーター等の彼女の特性を良く知るプロデューサーたちと組んだ楽曲群は、トピックの引き立ても含めて今までも最高の部類なのでは? 早くも1年後の姿が気になって仕方ないが…。
3. Little Brother / The Minstrel Show (Warner)

“アトランティック”から2ndアルバム。この間の9thワンダーの活躍ぶりが象徴する様に、全てにおいて“スケール・アップ”した感アリ。コンセプトは1820年代に始まったとされている“ミンストレル・ショウ”。現在のヒップホップをこの皮肉な芝居に置き換えてアルバムというフォーマットを最大限に生かしている辺りも“ネイティヴ・タン・チルドレン”らしくて良い。地元ジャズタス・リーグの面々の好サポートも見逃せないブラック・ユーモアに満ちた傑作。
4. Rev Run / Distortion (Universal)

“デフ・ジャム・レコーディングス”の創造主=ラッセル・シモンズが99年に売却して以来袂を分っていたその古巣との50/50のジョイント・ベンチャー“ラッセル・シモンズ・ミュージック・グループ”からの第一弾。となればジャム・マスタージェイの死により解散したランDMCのラン(ラッセルの実弟)の出番が順当なところ。サウンド・プロデューサーにジョー・バドゥンとの仕事で知られるホワイト・ボーイを迎えた本作は80'sの黄金律をブラッシュ・アップさせたかのような力強さ。流石にヴェテラン、“説得力”が違います。ランDMCの最期作にガッカリさせられた人も今回はダイジョーブ!
5. Kev Brown / I do what I do (Lexington)

マーリィ・マール、デ・ラ・ソウル、ジャジー・ジェフ、ドゥエレイ、ラヒーム・デヴォーン等の作品にトラックメイカーとして関わりその名を広めたフィリーのプロデューサー/ラッパー=ケヴ・ブラウンの初アルバム。あのグラップ・ラヴァやサイ・ヤングらも所属しているロー・バジェット・クルーのリーダーでもある彼はここでも見事な采配ぶりでソウルフルで芯の太いヒップホップをクリエイトしている。「奴はラッパーとしてもドープだぜ!」と語ったのはかのピート・ロックであるが、その言葉の意味は本作を聴き進めて行くうちに判るかと。
6. O.S.T. / 2K6 (The Tracks) (Decon)

NBAのゲームソフト『2K6』のサウンド・トラック盤。と言ってもメインストリームまっしぐらな内容ではないトコロが面白い。参加アーティストは、RJD2、エイソップ・ロック、ジーン・グレイ、レッドマン、ゴーストフェイス、ザ・ルーツからコモン、ザイオン・アイ、スキルズ、リトル・ブラザー、リリックス・ボーン、エイシーアローンにハイエログリフィックス…とNBAの如く各地の猛じゃが集結した形に。勿論“録り下ろし”なのでそれぞれのアーティストのファンはそのためだけに入手しても損はない。 
7. Dagha / Object in Motion (Miclife Recordings)

ボストン発のスーパー・グループ“エレクトリック”にも名を連ねていた燻銀野郎ダガのソロ・アルバム。盟友インサイト(リリース元の“ラスト・アーク”の主宰者でもある)やDJリアル・マーシャンギャング等のボストン―東京コネクションによる精度の高いビーツをバックに、強靱なノドをと研ぎ澄まされたライム・センスで聴き手をグイグイと引きつける技はここ一番で光っている。相棒クロークとの曲や日本盤では“エレクトリック仲間”プロジェクト・ムーヴのメンバーとの絡み曲等、ボーナス・トラックの存在も嬉しい。 
8. Verbal Seed / Afronauts (Handcuts)

テキサス州ダラスと聞いて思い浮かべるのは……? しかしながらこのヴァーバル・シードは、いわゆるサウス/H-タウン系とは違う、ブームバップ路線。元ATCQのファイフやフー・シュニッケンズのチップ・フーに、K・オティックスにストレンジ・フルーツ・プロジェクト・ワックス・リフォームのS1&イルマインドと客演及び制作陣にどうしても目が行きがちであるが、“主役”のほど良くドープな語り口も十分魅力的だ。ソウルフルなトラックも多く、リトルブラザー辺りのファンに特にオススメしておきたい逸品だ。
9.Beat Assailant / Hard Twelve (Flavour Of Sound)

パリを経由して到着したマイアミ生まれアトランタ育ちの異才ビート・アサイライト。アート・スクール出身なのに嫌みのない彼のどこがフレッシュなのかと言えば、既に「これ以上のクロスオーヴァーはあり得るのか?」とされてきたジャズマタズ(=グールー)のようなヒップホップとジャズの有機融合をよりカジュアルに進化させてしまったところにある。あの『Grey Album』のデンジャー・マウスや、タッシュ(リックス)、フィル・ジ・アゴニー等も絡んでいる本作は基本“自作自演”スタイルでグルーヴィな音とラップ(しかも目線はストリート)が冴え渡るモノ、だがエスプリもしっかり効いている。
10. Nujabes / Modal Soul (Libyus)

グローバルな視野を持つピュア・インディペンデント・レーベル“ハイドアウト・プロダクションズ”を主宰するご存知ヌジャベスの約2年振りとなる2ndアルバム。生演奏を主体としたメタフォリカル・ミュージック・アンサンブルでの活動もあり、更に深味、滋味を増したサウンドスケープは“モーダル・ソウル”というタイトルそのままの世界観と言えるだろう。ペイス・ロック(ファイブ・ディーズ)、Shing02、アパニ・B、サイン、テリー・キャリアー(!!)といった気心の知れたフィーチュアリング・アーティストたちの名演にも注目したい。
11. Gagle / Big Bang Theory (Columbia)

Return Of The 3 Men..... 杜の都の導き星ガグルの2ndフル・アルバムが遂に公開。『Under Cover』誌等、海外でも高い評価を受けたDJ Mitsu The Beatsの、“ガグル用”のサウンド・プロダクションは更なる新境地へ。またその音の響きをドクトクの言語感覚と“メッチャいいフロウ”で味付けするHungerに、隠し味以上の存在DJ Mu-R、それぞれが実にまぶしい仕事ぶりを見せつけている。Breakthrough、Kohei Japan、Verval、Sound Marker Crewらとのセッションも絶妙!
12. Teriyaki Boyz / Beef Of Chicken (Universal)

A Bathing Apeのディレクター=Nigoのソロ・アルバムに参加したことから始まったスーパー・ユニット=Teriyaki Boyz(Ilmari+Ryo-Z+Verbal+Wise+Nigo)の噂のデビュー・アルバムは何と“デフ・ジャム”から。ネプチューンズ、アドロック、DJシャドウ、コーネリアス、ダフトパンク、カットケミスト、ダン・ジ・オートメイター、ジャスト・ブレイズ……といった海外プロデューサー中心のサウンド・アプローチで気負いのないテリヤキ・スタイルを披露するこの4MC……。いやぁ〜、驚かせてくれます。Fresh!