ソロとしてこの5年間で早くも4枚目となるレゲエ・キーボーディストHAKASE-SUNのニュー・アルバムのタイトルは、なんと『A.O.R.』! “Adult Oriented Rock”ならぬ“Adult Oriented Reggae”とは……オシャレなレゲエ? いえいえ、都会的な大人味の中に込められたブルース満載の意欲作です。

今回、ずばり「A.O.R.」というテーマを持ってきた理由は?
HAKASE-SUN(以下H):今までカワイイ路線でやってきたので、今回はちょっと変えたほうがいいと思って。「A.O.R.」と呼ばれた音楽って、中学、高校生ぐらいの頃に一番ラジオとかで流れてて、影響も受けてて。

今までと変えた部分っていうのは?
H:今回はメロディ志向っていうよりサウンド志向って感じですね。サウンドの練り込み作業にすごい時間をかけて。

こういうテーマになると、イージーリスニングに成り下がらないように気をつけました?
H:流れ聴き大歓迎ですね。でもやっぱり自分の「魂」ってものを投入してるから、それも感じてほしいし。「A.O.R.」っていっても「オシャレ」ってイメージよりも「ブルース感覚」なんですよ。今回はそれに尽きますね。それでいて泥臭くならないように、曲としては聴き心地がいい、という。

リディムに関しては、使ってるのはMPC60だけですか?
H:それだけですね。今までずっと使ってたAKAIのMPC60 IIが調子悪くなっちゃったので、1個前のMPC60に変えたら、音がめちゃくちゃ太くて。たまたまだったんだけど、その機材の変化もすごく影響してますね。で、MPC以外は全部手弾きなんですよ。汗と涙の結晶というか(笑)。録る時のいろんな条件……自分の調子とか気分とか、その日の天気、電気の調子っていうのもあって。みんなが電気を使ってる時間帯だと音が濁るから夜中に録ったり。だから最高のテイクが録れるチャンスってすっごい少ないんですよ(笑)。

「A.O.R.」ってことになると、今の時代ならもっとハイファイに仕上げることもできたと思うんですが?
H:リディムのガッツリした感じとか、線の太い音がやっぱり好きで。リディムを組み上げる形として、レゲエの形が好きなんですよね。


1曲目なんかは、ベタですけど「湾岸」とか想像しちゃいましたが……。
H:そう! 実は今回「湾岸をドライヴ」っていう裏テーマがあって(笑)。スピード感とかそういうイメージですよね、スムースな走りをみせてるっていう。家で聴くより動きながら聴くほうがいいと思う。意識的にBPMも速めにしたし。今まではね「国内旅行のお供に」って感じだったけど、今回は「東京」「都会」を意識した部分もあるんで。

ヴォーカル入りの「Easy Chair」では、グッと大人のムーディーな雰囲気が出てきて……。結構曲によっていろんな表情をみせていますよね。
H:アルバムでは自分のいろんな局面をみせていきたいなと思ってるんで。今回は「売りに出た」というか(笑)。レゲエを普段聴かない人にも知らしめたくて。レゲエっていう部分じゃなくて、やっぱり「俺のリズムを聴かせる」ということは昔から思ってます。

もう次の作品のイメージは見えてるんですか?
H:うん、もう来年の夏に出しますよ(笑)。自分の中にもいろんな方向性があるんで、次のプランはもう練ってますね。だから今回はアダルト・レゲエみたいな作品を作る必要があったんですよね。次への布石、伏線としてね。



"Adult Oriented Reggae"
Hakase-Sun
[Nowgomix / NGCA-1023]