05年レゲエ界最大のニュースは、ヒップホップ、ロック・ファンまで巻き込んで「We Call It Murrrder!」と叫ばせたダミアン・マーリー、「Welcome To Jamrock」のヒットだろう。第三作目の同名アルバムも、レゲエ部門以外のグラミー賞も狙えるバッチリの出来だ。

 ボブ・マーリーの息子として生まれることは、幸せなのだろうか。マーリー・ブラザーズのステージを観る度に、つい、考えてしまう。全般としては、カースよりギフトの方が多いと察する。しかし、一人のアーティストとしては、どうだろう。生身の自分が文字通り“ライヴ”で歌っている時に、観客はドレッドの揺れ方や声質に見え隠れする父の姿を探して、歓声を上げる。期待されたら、応えようとする。人間の習性だと思う。パパの曲をそっくりに歌うマーリー・ブラザーズは、頑固なマーリー・ファンの期待に応えつつ、「彼ら自身のステージを観たい」との私の期待をいつも裏切っていた。それが、思い切ってレゲエと距離を取ることで傑作となり得た、2003年のジギー・マーリー『ドラゴンフライ』あたりから変わってきた。

 そして、「Me Name Jr.Gong」から10年、末っ子ダミアンが「Welcome To Jamrock」の大ヒットを放った。「これを目指してずっと頑張ってきた」と本人。覚えやすいフックもさることながら、メッセージ云々ではなく、淡々と状況を描いたリリックが妙に迫力と説得力を持っていたのが勝因。「貧困の中で闘っている人達の曲は、いつも作ってきた。『Halfway Tree』の“Give Dem Some Way”もそうだったし。アメリカには自分の出身地について、どんな場所でどんな風に育ったのかを伝える曲が多いだろ? だから、俺達が出て来たジャマイカのストリートを知らせる曲があってもいいじゃないか、と思って作った」。マイアミを拠点としているダミアンだが、アクセントはジャマイカ人のそれだし、夏のコンサートでは「何を口に入れるか気をつけろ。ファースト・フードなんか喰うな」という曲を披露した硬派なラスタファリアンだ。「あの曲は、来年出るバーリントン・リーヴァイのアルバムに収録される予定なんだ。曲名? えーと、知らないや」。

末っ子のせいか、電話口の彼は何だか無邪気。DJとシング・ジェイのどちらの肩書きが嬉しいかと尋ねたら、笑いながら「正直、そういう質問が出ること自体、嬉しい。どっちかはっきり分からないのがいい」と、ふわりと交わす。サード・アルバムで最も伸びたことは「作詞能力。それから、曲の土台となるアイディアもほとんど自分から出した」と言い切る。「ギターとキーボード、ドラムは操れる。ステージでは演奏しないけど、みんなでジャムったり、曲作りの際に使ったりしているね。得意なのは、ドラム・プログラミング。ドラム・パターンを決めたり、サンプルを引き出したりするのは俺の役割だ」。ダミアンが考えた土台に磨きをかけて形にしたのが、次兄のスティーヴ。彼とバニー・ウェイラー、バウンティー・キラーは前作に引き続き参加している。

「バウンティーも俺もバッドマン・ミュージックが好きなところが共通している。今の時期に自分を守るために武器を取らないとバカを見ることになる。戦争中なんだから、自分の身は自分で守らないと」。どうやら、戦闘派ラスタらしい。266号でレポートされたエチオピアの「Africa Unite」のコンサートでは、一人だけ父の曲ではなく自分の持ち歌を披露した。「俺だけスタイルが違うからね。兄達みたいにストレートに歌うのではなく、ダンスホールが入った音楽をやっているから、やりやすい曲を考えたら、自分の曲になった」とあっさり。そう、ダミアンのスタイルは兄達とも、父とも違う。マーリーの名字を名乗りながら、バニー叔父やキラー番長は元より、Nasやザ・ルーツのブラック・ソート、はたまたボビー・ブラウンの存在感にも負けないヴォーカリストに成長したジュニア・ゴングは、やはり、幸せなアーティストなのだ。


"Welcome To Jamrock"
Damian "Jr.Gong" Marley
[Universal / UICU-1101]