常時進化型マトリクトリー・ダンスホール・クルー=MJRの5thアルバム『Brand New Style Hi-Fi』がまた大変なことになっている! リリック、フロウ、サウンドとどこを取っても進化が感じられるその新作を完成させた彼ら5人にその“全容”を語って貰った。

アルバム『Brand New Style Hi-Fi』について。
Takafin:今回は一人ずつのパートを分けて個人個人を強調した構成にしてみました。ダンス現場向けにガッチリ作りました。
Boxer Kid:3人のコンビの曲を2つ作ろうという話になり、どうせやるなら対照的なものにしようと。これはもう聴いてすぐ分るくらい楽しい感じですね。
Jumbo Maatch:リリックの内容は、俺達がこの音楽を始めた頃はまだ十代のガキんちょやったのに、気づけばいつの間にか結構いい年になってて、改めて時間っていうのは本当に大事やな、と。だから一瞬一瞬を大事に楽しんでいこう、という皆に伝わり易いメッセージを込めて作り上げました。

「Straight Up!〜Anti Heroのテーマ〜」
Takafin:決して曲げない強い意志を持って生きるって内容の“我が道を征く”的チューン、ですね。ヒーローのテーマ・ソングをイメージして作りました。けどAntiな感じで!

「100%」
Jumbo Maatch:このアルバムで一番先に作った曲で、とりあえず最近やってなかったストレートでパンチ力のあるダンスホール・ナンバーを作りたいっていうのが頭の中にあったのでその辺を意識しつつ、ヴァースを少しメロディアスに、でも韻はきっちり踏むって事を気をつけて。Donに今回はミックスも頼んでみたんですが、やはり一流…。このアルバムの中でも一、二を争う音圧です。

「High End」
Boxer Kid:Hun-Kunとは湘南乃風が結成される前からの知り合いで、いつか“コンビ”をやろうと言っていてやっと叶った一曲です。昨年の「ハイエスト・マウンテン」のアフター(@ベイサイド・ジェニー)の時にカウンターで飲みながら「やろうよ!」って誘いました。ダンとセラーニの共演トラックにHun-Kunのきれいな声が乗って俺がガナるって感じで。声のトーンの違う人との掛け合いの楽しさを再確認出来ましたね。

「Back Yaad Man」
Jumbo Maatch:「Brand New一」がソフトやとすると、こっちは超ハード。この頃こういうジャマイカっぽいハードなジョグリンでシングル切る日本のレゲエ人が少なくなってきたっていうのもあり。しかも内容は緑系。今メジャーでこれやんのは俺達以外いないと思うし。
Boxer Kid:3人コンビでのこのネタは初めて。トラックが先に上がっていて、このパンチの効いたオケは3人物しかないな、って事で。誰でも分かる本当にDon't Worry!!
Takafin:全国のバックヤード・マンに向けて。

「Taboo」
Jumbo Maatch:毎回アルバムを作る時に絶対に一曲は重いメッセージを込めた曲を、しかも身近な所で起こってる事を題材にした曲をやりたい、いや、やらなけりゃというのがあって。実際ケミカルのせいで、もしくはそれが引き金となって、今まで俺の友達の何人かが頭おかしくなったり、突然消えたり、パクられたり、ひどい奴は死んだりしている。それだけ危ないもんなんや、って昔から分ってんのになんでかやる奴の数も種類も増えてる。ただでさえ夜クラブ行くってだけで、そういう扱いされがちやのに、ケミ野郎が増えればもっと社会的な信用がなくなって、終いにはクラブ閉鎖なんて事も十分考えられるし。俺達にはホンマ百害あって一利ナシなんで、みんなにもっと解って貰えるように書いてみました。

「Drum & Bass」
Takafin:MJRのミックステープ『MJR#8』に入れる新曲として作ったものです。トラックとミックス・ダウンをスキャッタにやって貰って、超イケイケのダンスホール・チューンに仕上げました。オケ制作から声録りまで全てジャマイカで。

「Power To The People」
Boxer Kid:これも『MJR#8』に入ってる曲。ジャマイカでセラーニに聴かせて作りました。タイトル通り、Vibesをみんなにという感じで、とにかく明るいのが欲しくて楽しんで作りました。韻にも結構こだわったつもりです。

「Guiding Muzik」
Takafin:Moominとの初コンビ曲。オケはHome-Gでミックスはスティーヴン・スタンレー。2004年の数々のショウで印象に残ったアーティストの一人がMoomin。シンガー&DJというレゲエ的なコンビネーションにしたかったのでバッチリでしたね。“こうしてやってるのも出会ったのも、この音楽からや!”という内容。

「No More Time For Lose」
Boxer Kid:これも『MJR#8』に入ってる曲で、オケをファイアー・ハウス・バンドにジャマイカのスタジオで弾いて貰いながら、歌いながら作りました。後でディーン・フレイザーとディーバにアレンジをして貰って更にクオリティが上がりましたね。

「Good News」
Jumbo Maatch:この曲は自分の中ではかなりの革命で、出来た後は照れ臭さもあり、また新たに表現の幅が広がったような達成感もありました。きっちり韻も踏みつつ、言いたい事を上手くまとめられたので。トラはファイアー・ハウスで、トラを作る前から曲が殆ど出来ていたのでスタジオで歌いながら仕上げました。

「Burning」
Boxer Kid:バーリントン・リーヴィーの「Here I Come」っぽいのが作りたくて、Home-Gに相談して、色々アイデアを貰いました。リリックの内容は、色んな意味でこのままではいけない事が沢山ある、というもので思いきり殴り書きしました。

「This Is Not A Last Song」
Jumbo Maatch:今回のアルバムをやるに当って、初めから誰かとコンビでやるって決めてたんですけど、前から少し暗めのミディアムがやりたくて。誰がイメージに合うか考えたら、やっぱPushimかなと。今回はこっちのアルバムなんでこっち主導で作っていこうと。サビと自分のヴァースをとりあえず埋めて貰ってまた返して、みたいな手順で作りました。サビを歌っぽくして2人で歌ったらいいんちゃうかなって漢然と想像してたんですけど、予想以上の出来で、自分の中では本作中で一番好きかも。

「Future Is Good」
Takafin:オケはファイアー・ハウス、ミックスはスタンレー。ホーンはディーン・フレイザー。みな否定せず認め合って、リスペクトし合っていけばいい感じになるだろうっていうユナイト・チューンです。

今回のアルバムで自分自身が最も進化したと感じてる部分は?
Jumbo Maatch:やっぱり大人になっていくというか、色んな経験をしていくうちに人間的に成長して表現力に幅が出てくるし、台詞にも一層温かみ、重みが増してきたように感じます。
Takafin:説明しにくいですけど、レコーディング時の声の出し具合とか。
Boxer Kid:やっぱアルバム5発目っていうのもあったので、全体に対するバランスとかスタンスが前より少しは見えるようになった気がします。

今後の展望と今年の「ハイエスト・マウンテン」に来るお客さんにメッセージを。
Jumbo Maatch:もっと色んな事を知りたいし、もっと色んな所に行きたい。結局それがレゲエDJにとって一番の肥しになると思うので。「ハイエスト」は1年に1回しかない祭やし、もっと正確に言うと2005年の「ハイエスト」は一回しかないって事を頭に置いて、後悔ない様に体調管理して遊びに来て欲しい!!
Takafin:もっと日本をレゲエ色に染めて行きたいです。確実に去年より全てにおいてグレードUP!(「ハイエスト」は)とことん楽しんでくれぇー!
Boxer Kid:年内の話でいうと、まだまだイベントが沢山あるので、全国各地飛び回って火を付けまくる、って感じです。MJR的にもNew Eraとキャップを作ったり(※ジャケ絵参照)、ムラサキさんのミューラルからTシャツも出るので楽しみです。今年の内容もそれ以上で行きたいです。あと、暑さ対策も忘れずに! Big Up!

 更にMighty Jam Rockのサウンド担当の二人、KyaraとRockにも本作について話を聞いた。

アルバム制作中の印象的なエピソードは?
Rock:Jumboの「Taboo」のオケは初めてビッグヤードのバーチに作って貰ったんですけど、とにかく背が高くてめっちゃいい奴で、日本にも20回くらい来た事あるらしく、やたら日本語を使いたがる親日家でした。あと今回初めてミキシンク・ラブのスタジオを使ったんですけど、最近リニューアルされたらしく、プロツールスも使えるようになってて中々イケてましたね。
Kyara:今回Jumboの「100%」のトラック・ダウンをベンデュダのダンに頼んだのですが、普段自分でやる時は3〜4テイクは落とすんですけど、彼は何テイクもあると逆に悩むからといシンプルな理由で1テイクのみらしく。それを聞いて、悩んだ挙句最初のアイデアに戻ってくる事の多い自分もいい影響を受けましたね。今回のアルバムは、自分達のコンセプトでもあるジャマイカ・テイストを最優先に、ルーツ色、オールド・ダンスホール、現在進行形ダンスホールと、あくまでもレゲエ限定ですが、色々なスタイルにチャレンジしようかな、と。同トラもないですし。JTBについては、他に流されず、自分を持ったDJとして熟成してきているように思います。これからも迷う事なくそれぞれが自分のスタイルでやっていって欲しいですね。

アルバム・タイトルについてコメントして下さい。
Rock:やっぱ5人とも新しい物好きやなーと。
Kyara:曲そのものについて言うと、冬ぐらいから作り始めてたので、遂にリリースか、というのが本心です。レゲエの楽しさが全開で、PVもいい感じ出来たと思います。

「ハイエスト」に来るお客さんにコメントを。
Rock:今年は「横レゲ」と一緒の2万人規模でやるので、モニター(ビジョン)や音的にも去年よりパワー・アップしてやろうと。バンドも3バンドになって、皿でのライヴも増やして、より多くのアーティストに参加して貰って、大阪ならではのレゲエ祭にしたいです。
Kyara:昨年苦労した分の何倍もの楽しさを得たので、今年も全力で楽しめるように準備中です。2バンドから3バンドになりますし、西と東の次世代DJも出演しますし、アフター・パーティーも熱くなりそう。2万人のみんなに一番アツい夏を届けますので期待してて下さい。




"Brand New Style Hi-Fi"
Mighty Jam Rock
[Victor / VICL-61697]