デイヴ・ケリー制作の "Fiesta" リディムによるビーニ・マンの「Dude」にフィーチャリングされ一躍注目されたミス・シングが、ショッキング・ヴァイブスによる全面的バックアップを得てファースト・アルバム『ミス・ジャマイカ』をリリース。ビーニ・マンは勿論、ヴァイブス・カーテル等が参加した様々なリズムが交差するパーティ・アルバムだ。

 本名ナターシャ・リンゼイ。この個性的なルックスは、見る者に様々なイメージを喚起させるだろうが、彼女が18歳にして既に一児の母であるという事実に対しては、一様に驚きの声が上がるに違いない。  現行ダンスホール・シーンの最重要人物のひとり、デイヴ・ケリーの目に留まった彼女は、彼と共に「Regular」や「Get That Money」といった曲をローカル・ヒットさせる。03年には、ビーニ・マンによる大ヒット曲「Dude」にフィーチャーされ、ダンスホールとヒップホップの交差点にフォーカスを当てた企画盤『Def Jamaica』に収録された、この曲のリミックス・ヴァージョンのヴィデオ・クリップにも出演。瞬く間に“時の人”となった彼女は、業界の注目を一身に受ける中、ここにデビュー・アルバム『Miss Jamaica』を届けてきた。彼女のマネージメントはビーニ・マンのショッキング・ヴァイブスが行っているようだが、本作の総合監修にはデイヴ・ケリーがあたっている。

 アルバムの冒頭を飾る「Regular」は上記「Dude」と同様デイヴによる "Fiesta" 使い。「Rich & Famous」にはドノヴァン・ベネットの "Tighty Tighty" が敷かれ、ビーニ・マンをフィーチャーした「Ms. Thing & The Doctor」ではこれまたデイヴによる "Mad Guitar" が差し挟まれる。これら既聴感を巧みに利用した一連のプロダクションは、この世界の常套手段とはいえ、本作のヒット・ポテンシャルを格段に高めていると言えそうだ。また、“他ジャンルとの交流”も実に楽しい。「Hot」は、これまでフィールド・モブといったヒップホップ・フィールドにもトラックを提供してきたゴリラ・テクによるプロデュース曲だし、「Love Guide」では、なんと英国のハウス・プロデューサー、スウィッチとタッグを組んでいるかと思いきや、アルバムを締める「Sweet Soca Music」には、シュガー・ダディが参加しているといった具合。一方、こういった音作りの妙に加え、彼女本人によるリリックにも注目したいところ。18歳にもなれば当たり前のことと言ってしまって良いのか、どうにも判断に迷うリリックの内容は、刹那的な物欲で占められ、そして相当にエッチ。聴いているこちらとしては、ドギマギされつつもエキサイトせずにはいられない、パンチ・ラインに溢れている。

 一児の母とはいえ、その声は“若さ”を強く感じさせるものであり、それが彼女の天真爛漫な魅力にも繋がっていそうだが、ダンスホール界のお歴々を迎え、彼らによる渾身の最新リディムの数々を前にしていながら、これだけの堂々たるパフォーマンスを披露できる彼女は、相当な器の持ち主と見て間違いないだろう。そして、本作『Miss Jamaica』を聴きながら彼女の行く末を想像してみることは、そのまま“ダンス・ホールの可能性”に思いを馳せることにもなるような気がしてくるのだ。


"Miss Jamaica"
Ms. Thing
[Victor / VICP-62939]






"Back To Basic"
Beenie Man
[Virgin / VJCP-68663]

ミス・シングをフィーチャーした
「Dude」を収録した
ビーニ・マンの
2004年リリース作品。