去年以上に盛り上がりをみせた2004年のレゲエ・シーン、そして更に進化を続けるヒップホップ・シーン。今年はいったいどんな年だったのか、本誌でもお馴染の執筆者達による対談と、アーティスト、セレクター、ショップ・バイヤー等による個人チャートと共に、2003年12月から2004年11月末にかけてリリースされたシーンを象徴する作品を紹介し、2004年を振り返る。


INTENATIONAL DANCEHALL REGGAE ALBUMS
UNTOUCHABLE / ANTHONY B
(TOGETHERNESS / 024 691 034 2)
BACK TO BASICS / BEENIE MAN
(TOSHIBA EMI / VJCP-68663)
LOVE HAS NO BOUDARIES / BERES HAMMOND
(HARMONY HOUSE / VP / VP1714)
REIGN OF FIRE / CAPLETON
(VP / VP1717)
BETTER DAYS / CHUCK FENDA
(5TH ELEMENT / EMCD001)
KEVIN LYTTLE / KEVIN LYTTLE
(WARNER / WPCR-11835)


STRIP TEASE / LADY SAW
(VP / VP1683-2)
SERIOUS TIMES / LUCIANO
(VP / VP1688)
SPICE IN YOUR LIFE /
RICHIE SPICE
(5TH ELEMENT / FECD0001)
I ON I / RUPEE
(WARNER / WPCR-11924)
GANGSTA BLUES / TANYA STEPHENS
(VP / VP1691)
A TRIBUTE TO REGGAE'S KEYBOARD KING JACKIE MITTOO / V.A.
(VP / VP1675)

DOMESTIC DANCEHALL REGGAE ALBUMS
EVERYTHIN' IS EVERYTHIN' /
BOY-KEN
(V.I.P / CUTTING EDGE / CTCR-14379)
FIST AND FIRE / FIRE BALL
(LIFE STYLE / TOSHIBA EMI / TOCT-25377)
馬鹿話 / H-MAN
(OVERHEAT /
OVE-0090)
TIME IS REGGAE / HOME GROWN
(OVERHEAT / PONY CANYON / PCCA-02055)
TO ALL OVER / MIGHTY JAM ROCK
(VICTOR / VICL-61442)
IMAGINE / MINMI
(VICTOR / VICL-61416)

NO MORE TROUBLE / MOOMIN
(OVERHEAT / UNIVERSAL / UPCI-9002)
ELIMINATOR / NANJAMAN
(爆音SYNDICATE / NO BRAND / BSCD-005)
NEO ENTERTAINER / PAPA B
(LIFE STYLE / TOSHIBA EMI / TOCT-25369)
QUEENDOM / PUSHIM
(Ki/OON / KSCL 698)
ラガパレード /
湘南乃風
(TOY'S FACTORY / TFCC-86165)
ROCK THE SKY / V.A.
(カエルスタジオ / VICTOR / VICL-61502-3)
★CDs Are Listed In Alphabetic Order★

International Dancehall Reggae Albums
石川貴教:基本的な流れは変わってないけど、Chuck FendaBetter Days』とかRichie SpiceSpice In Your Life』が流れを作った感はありますよね。両方とも今年感があるし。
サンダー・キラ:Sizzlaの『Real Thing』にもいえたけど、去年出たアルバムの中の曲が今年になってヒットしたりしてズレが出てきちゃうんだよね。Sizzlaの「Rise To The Occasion」がリリースされた去年より今年になって当たったりとか。
石川:Sizzlaは今年もアルバムがいっぱい出たけど、アルバムより「Rise To The Occasion」の年って感じだし。
キラ:Beres HammondLove Has No Boudaries』、LucianoSerious Times』はやっぱり良かったですね。
大石始:Lucianoはここ数年の彼の作品と比べても断トツに良かったですね。
ランキン・タクシー:アルバムの中の曲を皆で合唱するとか、そういうのってあんまりないからな。
大石:Tanya StephensGangsta Blues』やLady SawStrip Tease』といった女性陣も目茶苦茶良かった。
キラ:両方ともプロダクション的にも本人的にもスキが無いんだけどね。
ランキン:Jackie Mittooのトリビュート盤『A Tribute To Reggae's Keyboard King...』も面白い企画だったけど、あの技術をもってしてもさ、本物の方が良かったという。
キラ:あとKevin LyttleKevin Lyttle』とかRupeeI On I』とか…。
大石:Tower RecordsだとKevin Lyttleが断トツでしょうね。
キラ:レゲエの中に入れるのはどうかという意見もあるけど、現場で散々かけて散々盛り上がっといて外すってのは失礼ですよね。皆さんお世話になったじゃないですか(笑)。
石川:ソカって言葉やリズムだけでも浸透したのは良かったじゃないですか。でもBounty Killerがアルバムを出さなかったのが寂しいかな。
キラ:ま、相変わらずジャマイカはシングル単位で動いてるって事で。
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International Dancehall Reggae Singles
石川:もうVybz Kartelだけで軽く20曲はあがっちゃうんじゃないの?
ランキン:そうだよな。Vybz Kartelだと「Picture This」とか。あとElephant Manも「Bun Bad Mind」とか今年も勢いがあったな。
キラ:「Picture This」だね。あと何だかんだってVoice Mail, Delly Ranks & BogleWeh Di Time」だったと思うけど。下手くそなDJが流行るのは余り良くないとは思うけど、ああいうダンス関係の人がちょっと喋ったりする様な曲って今年の流行りでしたよね。Slotex feat. Fire LinksStop」とかSky JuiceDance Moves」だってそういう流れだったじゃないですか。
ランキン:ダンスの流行りとして「Stop」。ま、ダンス・ブームってのもあるけど、こんな楽しみ方もあるよってな提案だと思うな。
キラ:ジャマイカには元々あったものが、最近特化してきたって事ですよね。ま、ジャマイカ人であそこまでやってるのは本当の遊び人だけだけどね。ジャマイカでもスクービドゥとかを思いっきりやってるのは、ダンサーを含めてもそんなにいないですよ(笑)。
石川:あとFire Linksの "Mad Instruments" リズムの奴(Elephant ManMad Instruments Dance」、T.O.K.Fire Fire」等)とか流行ってましたね。あと、Richie SpiceChack Fendaの5th Element系があって。そこにI WayneCan't Satisfy Her」とかBascom XLonley Girl」があったりね。
キラ:そういった小さなローカル・レーベルの一発ヒットが多い年でしたね。
石川:いつに無く無名のラスタ系と言うかシングジェイ系が多かったかな。あと何年も前に出た曲が流行ったり。
キラ:Jah Cureの流れってのもありますよね。でも、やっぱアーティストってよりも曲の良さでヒットしたって年でしたね。ま、人間、真面目に歌を5〜6年やってると1曲ぐらい良い曲が書けるって事で(笑)。ま、皆公平に一回は山が来るのがいいところですよ(笑)。
石川:Red Ratも「Hush」で2度目が来たしね(笑)。リズムだとDon Corleonの "Drop Leaf" とか 357の "ScooBAY" とか。でも、テープ聴いてる限り、サウンドによってリズムの流行りが全く違うんだよね。
キラ:リズムの種類が多いから支障もないんだよね。前は主流のリズムがあってって感じだったけど、今はないですよね。3人のセレクターがいたら3人の一番のお気に入りが違うんじゃないかなあ。
ランキン:そうなるともう現場でのコントロール能力の差が出るね。ま、皆さんにはダンスホールの現場にもっと行けよって事で。
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Domestic Dancehall Reggae Albums
大石:以前Home GrownTancoさんと話してたら、Pushim(『Queendom』)もFire Ball(『Fist And Fire』)も勝負作と決めて気合いの入り方が違うっていってましたね。確かにそういう気合いが滲み出た作品が多かったような気がします。
大場俊明:去年アルバムを出した人は殆ど今年もきっちり出してきましたしね。インディーズでもアルバム単位で出してくる所が増えましたしね。
キラ:Nanjamanも『Eliminator』を出したし、H-Manも『馬鹿話』を出したり、俺の主治医のDr.Productionも沢山出したし(笑)。あとランキンさんも7"やコンピで大量に出したりして、第二の黄金期が来たのではと(笑)。
石川:ベテラン勢だとBoy-KenEverythin' Is Everythin'』とMoominNo More Trouble』とか頑張ってたし、Minmiも『Imagine』を出したり。でも、一番売れたのは湘南乃風『ラガパレード』なのかな?
大石:数字的には確かですね。個人的にハイレベルだと思ったのはHome GrownTime Is Reggae』。
ランキン:3作目にしてやっと参加させて貰えました(笑)。
大石:Mighty Jam RockTo All Over』も前作よりクオリティが上がってるし、内容的にも分かり易くなった。あとPapa BNeo Entertainer』も面白かったですね。
ランキン:でもベスト・ジャパニーズ・クルーと言えばHemo & Moofireだったかもしれないね。
キラ:確かに。でも今年も夏に向けて相当作品が出たし、イベントも相当数打ったし、ジャパレゲとしてはかつてない程潤った年だったですね。
大場:大阪「Highest Mountain」で12,000人、「横浜レゲエ祭」で20,000人を動員したって事自体がかつて有り得なかった話ですからね。作り手自らが皆、本当に頑張ってますよ。
ランキン:ああいうイベントに来たお客さんには、更に一歩突っ込んで、ダンスホールの現場とかジャマイカにもっと行って貰って音楽の深みに入って来て欲しいですね。
キラ:マイクを握ってる人達ってのはジャマイカを見てる訳だから、結構皆、冷静に今のシーンを見てると思うんですよ。だからこそジャパレゲしか聴いてないお客さんがそうやって突っ込んで来てくれれば、シーンはもっと根付くと思うんですよねえ。
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Domestic Ska, Rock Steady, Roots & Dub Albums
大石:DubsensemaniaAppearance』は本気感が出てましたね。
キラ:Jr. Dee×振動弐百『Freedom』は、他と違うって意味で一番面白かったんじゃないですか。
大石:ああいうバンドで若手が出てくるともっといいんですけどね。
石川:あとやっぱ松永孝義『The Main Man』は私の友人、知人もベタ誉めでした。
大石:個人的にはDubsensemaniaと松永さんがズバ抜けてましたね。あとSpinna B-ill & The CavemansReggae Train』とRub-A-Dub MarketComputerize It』も推したいですね。Rob Smithのリミックスが良かった。スカも悪くなかったんだけど、そろそろDeterminations以降の音を期待したいですね。
キラ:でも、スカやロック・ステディは再現するまでは楽しいかもしれないけど、その次に何を提示するかとなると難しいですよね。
石川:そういう意味ではReggae Disco RockersRainbow』はいいスタンスですよね。
キラ:ああいう歌物マニアのセレクターならではのセンスって、やっぱミュージシャンが作るのとは全く違いますよね。
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Re-Issue & Re-Compiled Reggae Albums
キラ:やっぱBurning SpearSoul Jazz盤とHeartbeat盤のどちらが良いかで掴み合いの喧嘩じゃないですか?(笑)
石川:Coxone Doddが亡くなってから7"もどんどん出るしね。
キラ:しかもいいポイント突いて来るんですよね。Rock-A-Shackシリーズは "Vol.9" からですか?
大石:Rock-A-ShackらしからぬLousa MarksBreakout』が嬉しかったですね。
キラ:いや、今年は何と言ってもHerman Chin-LoyAquarius Rock』でしょう。こんな面白い音源をあの人が持っていたとは。俺、95年にジャマイカに一年間住んでた時、Chin-Loyさんの所に住んでたんです。あの時に聴かされた時はピンと来なかったんですが、『Aquarius Rock』を聴いたら今は最高ですよ。この変わった音は正に2004年に合う音ですね。サイケデリックな感じとか、チャイニーズ・ジャマイカンだからこそ作りえた作品ですね。
石川:昔買い逃したのが最近再発されるってのが多いけど、Chin-Loyのを持ってる人自体が少ないですからねえ。
ランキン:Aquariusのスタジオってどういう物を作り出してたのかって言うのがハッキリしたよね。
キラ:Augustus Pabloが普通に仕事してるんですよね。まだ10代の彼を小間使いとして使ってたんだろうけど、意外とChin-Loyも面白がっていたと言う。ロッカーズ・サウンドの原点はここにあったのかという、レゲエ史的にも面白いですよね。
石川:Soul Jazzの『Studio One Funk』も中々聴けなかった曲が一杯詰まってたし。
キラ:ジャケがしょっぱいし、またアレだろ?って感じで意外と皆買ってないと思うけど、Coxsoneの死後、『Studio One Dub』も『Studio One Disco』も良いし。
大石:David Katzらが始めたAuraluxもライナー含めて気合いが入ってて面白かったですね。イギリスの仕事は本当に丁寧で。あとイギリスならOn-U物も初期の作品がいっぱい再発されたし。
キラ:Trojanの怒濤のアーティスト単位の2枚組シリーズは、買うべきのとカスと両極端ですからねえ。買う人は要注意ですよ。Bob Marley & The Wailersのボックス・セット『Groovin Kingston 12』も1枚は捨てですけど、あとの2枚はJADの "The Complete" シリーズのVol.1〜6にも入ってない曲が沢山ありましたからねえ。
石川:Keith HudsonFresh Of My Skin Blood Of My Blood』とか、あとVPも『Reggae Anthology-Channel One Story』とかね。Channel OneならWailing SoulsAt Channel One』も12"ヴァージョンが入ってたり…。
キラ:でも、何と言っても今年最大のトピックはCoxone Doddが亡くなったって事ですよね。
ランキン:来年辺りアンソロジーが出るんじゃないのか? デジタル・リマスタリングでCD50枚組とか(笑)。
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【2004年を振り返って】
ランキン:ま、ランキン・タクシーはまだアイデア一杯のDJだなと。来年はアルバムも作るぞと。腕も治って来たので新しいスピーカー作って、もっと楽しいダンスホールをやりたいなと。ジャパニーズ・レゲエの苦労を分かってる奴がジャパニーズ・レゲエを盛り上げてくれと。ジャマイカ恐るべし。
大石:年に3枚位しか買わない人がKevin Lyttleとか湘南乃風を買うという状況なので、確かにシーンが盛り上がったといわれるけど、来年どうなるのかというと少し不安にはなりますね。内容がいいだけにそれをそういう聞き手が引き継いで貰いたいですね。Kevin Lyttleで入った人がいつかはStudio Oneを聴くようになってくれるとウレシイです。
キラ:観客が一万人、二万人になったのは凄い事だし、これは手放しで喜んだ方がいいんじゃないかと思います。俺はそれ程危機感は持ってないし、Kevin Lyttleは回す側としてはお世話になったし、カリブ歌謡としては良く出来た曲が多かったと思います。それがジャマイカでヒットして日本でもヒットするってのは面白い点なのかなあと思いましたけどね。ニュー・ダンスも歌も去年流れがあって、進化する所は進化して、廃る所は廃ったってのの繰り返しだし。俺はレゲエは異常なしと。ま、湘南乃風のファンの100人に1人か2人が残って、ゆくゆくはJackie MittooDon Drumondまで辿り着いてくれればこれから変わるだろうし。ま、飽きないで欲しいですね。
石川:僕は毎年楽しいですから。イベントも一杯入ったし。難しいというのは変わらないと思うんですけどね、コツコツと頑張る人がいてこうなったんですからね。とにかく今年は良くも悪くもひとつの区切りになった年だと思いますね。
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●ランキン・タクシー/日本ダンスホール界のオヤジネイター。もちろん網シャツ魂は健在。
●石川貴教/Gloria店主。本誌にて「Raw Singles」を担当。毎回独特な視点でレゲエ・ミュージックを斬るライター。
●サンダー・キラ/Taxi Hi-Fiのセレクターとして長きに渡り活躍。本誌でも様々な記事を執筆。
●大石始/音楽ライター、「bounce」編集部員。本誌でも日本のダンスホールを中心に様々な記事を執筆。
●大場俊明/「Riddim」編集長。今回も様々な意見をまとめるべく司会進行役を担当。
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JAPANESE SKA, ROCK STEADY, ROOTS & DUB ALBUMS
UP RIGHT AND SMILEY /
BAGDAD CAFE THE TRENCH TOWN
(M.O.P. / MOPR-0009CD)
APPEARANCE / DUBSENSEMANIA
(SONY / AICL-1553)
FREEDOM / JUNIOR DEE ×振動弐百
(ALFA ENTERPRISE / YJJ-4019)
THE MAIN MAN / 松永孝義
(RUM TOWN / OVERHEAT / OVE-0091)
RAINBOW / REGGAE DISCO ROCKERS
(FLOWER / FLRC-026)
REGGAE TRAIN / SPINNA B-ILL & THE CAVEMANS
(AARON FIELD / AFCA-030)

RE-ISSUE & RE-COMPILED REGGAE ALBUMS
SOUND FROM THE BURNING SPEAR / BURNING SPEAR
(STUDIO ONE / SOUL JAZZ / SJRCD 101)
FRESH OF MY SKIN BLOOD OF MY BLOOD / KEITH HUDSON
(BASIC REPLAY / BRATRALP-1005)
BREAKOUT / LOUISA MARKS
(BUSHAY / ROCK-A-SHACKA / DBCD-012)
WARRIKA DUB - GHETTO ROCKERS / RICO
(UNIVERSAL / UICY-3792)
AQUARIUS ROCK / V.A.
(PRESSURE SOUNDS / BEAT / BRPS-045)
STUDIO ONE FUNK / V.A.
(STUDIO ONE / SOUL JAZZ / BRSJ-97)
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