自らの名前を冠にしたファースト・アルバム『Always Fresh Rhythm Attack』から一年、今やヒューマン・ビート・ボクサー、Afraの名前を(若しくは顔を)知らない人はいないかもしれない。そんな彼がPrefuse 73と共に作り上げた渾身の一枚『Digital Breath』をリリース。本作について語ってもらった。

 プレフューズ73ことスコット・ヘレンがAfraのアルバムをプロデュースする時に、考えていたのは「ヒューマン・ビート・ボックスでスロウ・ジャムを作る」というアイデアだった。彼は、それをAfraと初めて会うためにセッティングされた夕食会の時にAfraに言ってみた。だが、日本が世界に誇るヒューマン・ビート・ボクサーがそれに応じたのは(自分が作りたいのはダンス・ミュージックなんだ)という答えだった。どのみち、次の日から2人はレコーディング・スタジオに入ることになっていた。与えられた時間は2週間。

 Afra(以下発言はすべて彼のもの)「やっぱり、ヒューマン・ビート・ボックスして、“スゲエ!”とも言わせたいし、技術的なところ、そこはもう間違いなくあるんですけど、でも、ヒューマン・ビート・ボックスを聞いて“気持ちいい”と思わせる、そんな上に行きたいんですね。それはライヴでも思うことだし、アルバムでも単に“スゲエ!”じゃなくて、普通に曲として気持ちいいものまで持っていけると、いいな、と。自分の好きな音楽のマジックというか、ただ音なのに踊りたくなるというか、そういうの、いい音楽だと思うし、そういうの作りたかったし、ライヴでも、“ここで踊ってほしいなぁ”とか、クラブ行っても、踊りたくなったりする自分がいて、体で気持ちよくなれる音楽を目指してますね、今も」

 体で気持ちよくなれる音楽で流通しているのは、ブラック・ミュージックであることは言うまでもない。そして、そのことを体験したのは
Afraがニューヨークにいたことが大きいと言う。

 「大きい。凄い、大きい。イベントとか行って、惜し気もなく踊る人たち(笑)っていて、(彼らは)考えてないんじゃないけど、楽しみっていうことを体で表現出来てるのは、生きていることを楽しんでいるっていうか、言葉と同じぐらい重要な要素っていうか…そこまで導く音楽はやっぱりマジックだし、それは凄いニューヨークで感じましたね。1小節出したら、“Yeah!”ってばーっと始めたりとか、楽しいじゃないですか? そういうのはいいな、と思いますね。僕自身も踊りますね(笑)。でもね、けっこう体力ないんで、すぐ休むんですね(笑)、ばーっと踊って、ばーっと休むんです。それでまた集中的に踊る。人と喋りたくなったりして……だから、小さいクラブで踊って、バー・カウンター行って、みたいな場合が多いですね。でも、これで、僕がテクノとかハウスとか好きになったら、また変わってくるんでしょうね」

 プレフューズ73がやっていることは、ブラック・ミュージック、当時彼が聞いたヒップホップ、より正確に言えば、エレクトロからどんどん音楽にのめり込んだ人間としてやるべきことに他ならない。彼はウータン・クラン(ODBにさようなら)を好きだろうが、ウータン・クランの真似はしない。それが誠実な態度だと言うものだ。そして、ヒューマン・ビート・ボクサーのアルバムをプロデュースしようという時、スロウ・ジャムをやろうという提案も、音楽を作る人間として、ブラック・ミュージックを聞いて来た人間として、とても創造的でまっとうなものだろう。

 「今凄いディスコが好きなんですよ。だから、“スロウ・ジャム”に対して“ダンス、ダンス”ってプレフューズ73にも言ったんですけど。結果、両方が出来たような気がします」

 日本の居間にビート・ボックスを広めた男、Afraのセカンド・アルバムは、プレフューズ73との共同作業により、音楽に肌の色も、人種も、国籍も関係ないのだ、と証明出来る素晴らしいものだ。DVDとのセットなので、Afraの姿も堪能出来るし、音楽としていいのだ。おお、Afraが好きなディスコは、ジョー・バターンだと言う。彼も人種の壁と格闘して活躍した1人だった。偶然だろうか?




"Digital Breath"
[Rush! / ACCR-10019]