ハマのラバダブ・マスター=Junior Deeと、ハマの大地を揺るがすレゲエ・バンド=振動弐百ががっぷり四つを組み制作したアルバム『Freedom』が遂に完成。日本人ならではの懐の深いグッド・レゲエ・ミュージックがたっぷり詰まった名盤に仕上がった。早速、Junior Deeと、振動弐百のスポークスマン、萩谷雄一に本作について話を聞いた。

そもそも振動弐百のコンセプトは?
萩谷:いや。本当になんにも考えてない。最初はただベースの小池さんがレゲエのバンドをやりたいって話で。暫くしてスタジオに遊びに行ったんだけど、そんな遊びバンドだから最初はメンバーも来やしねえし(笑)。それでキーボードの奴がいない時に「俺がちょっと弾いてみようかな」ってスタジオ1の定番の奴を一本指で弾いたりしてたら、なんか気持ち良いなあって思って、その帰り道にピアニカを買いに行ったんだよね。その二日後に小池さんから電話が掛かってきて、「パブロが死んだんだよ。それが萩谷がピアニカを買った日なんだよね」だって。ああパブロが乗り移ったって(笑)。その内、ライヴとかの話もあったりしてね。そうなるとメンバーも戻ってきたりして(笑)。

例えば、どの時代のどのレーベルの音やニュアンスを目標にしてるとか、そういうのも無いの?
萩谷:なんにもない。例えばピアニカだったらパブロみたいなのをやるのが普通かもしれないけど、俺らにはそんなの出来ないし、やっても真似でしかないし。でも特に真似をしないようにしてる訳でもなくて、ただ自然に出てきたものだけをやったらこうなっただけで。本当、ただ自分達が気持ち良いと思うものだけやってる。レゲエに対してもなるべく拘らないようにしてるし。ま、小池さんのベースが圧倒的にレゲエだから、上に何が乗ろうとレゲエになるし。それでいいんじゃないかって俺は思ってるし。強いて言えば、縛られたくないとか型にはめられたくないってのはあるけど、それも意識はしてないし。

「縛られたくない」って意味でインストバンドとして活動してきたんですか?
萩谷:いや、それも何も考えてない。だって最初、俺が歌ってたりしてたしさあ(笑)。バーリントン・リーヴィのカヴァーとか歌ってて気持ち良かったんだけど、あとでテープを聴いたら聖飢魔IIみたいでさあ(笑)。

タイトル『Freedom』は、そうしたバンドの形態や音としての自由という意味を込めてですか?
萩谷:レゲエは勿論好きなんだけど、レコーディングを通じて分ったのは、レゲエって凄い人間臭いなって。あと言葉は悪いけど馬鹿馬鹿しいなって。つまり「くっだらねぇー!」って事が凄いカッコイイみたいなね。それはヒップホップも同じなんだけど、レゲエの方がよりそれを感じる。カッコ良ければいいんだって、それが自由かなって。例えばレゲエって生演奏をブチって切っちゃうでしょ? 普通はあり得ないでしょ? でもカッコイイからいいじゃん、みたいな。

Junior Deeは振動弐百とやってみてどうでしたか?
Jr.Dee:俺はずっと自由にやらせて貰ってたんだけど、今回は今迄以上にそれが出たかなって。俺がアルバムを作るって話になったのが去年の6月位で、その一年前に彼らと知り合って、いっしょに横浜の野外フェスに出たんですよ。それからセッションとかやるようになってね。「じゃあ一緒にやる?」って…。
萩谷:Juniorといっしょにやったのって、俺らがインストで描こうとしていたピースな事と、JuniorDJで描こうとしていたピースな事が近かったと思ってね。その流れかなあ。ほんと全部流れとタイミングなんですよ。俺ら何にも考えてないから。
Jr.Dee:だからこそこういう形になったんだと思いますけどね。

確かに全く策略を感じさせないですからね。その偶然の重なり合いが生んだ本作は、最終的には本当にいい形となりましたよね。滲み出てるもの全てがレゲエ臭くて…。
萩谷:俺らとJuniorが上手いこと混ざってません? 
Jr.Dee:俺も前々からアルバムを作るなら、インストが入ってるのがいいと思ってたし。あと今回、曲作りの段階からいっしょにやったってのもあるかも。

曲も演奏もさることながら、ミックスが絶妙。今回、森俊也に全面的に任せてますね。
萩谷:森さんじゃなきゃどうなってたかって考えるとゾっとする。こんなにも違うのかって…。お陰で隙間がガッチリ出来た。
Jr.Dee:完全なレゲエだね、どレゲエ。
萩谷:録りが良かったよね。あとエフェクターもアナログばっかだし。俺、どうしてもアナログディレイが好きだったり、テープエコーが好きなんで(笑)。

振動弐百から見て、Junior Deeの魅力は?
萩谷:何処にもいない、他にいない、替えのきかない感じ。Juniorはずっと長いこと現場を観てきてて、そんな環境で過ごしてきた彼を見てると、これがレゲエなんだなって凄く思う。それが歌に出てるし。あとレゲエだから○○しなきゃいけないとかがないんだよね。そこにも凄く共感する。あとJuniorって日本人ならではのスタンスでレゲエをやってるしね。

それではJunior Deeから見た振動弐百の魅力は?
Jr.Dee:バンドのメンバーが自分勝手なとこもあるんだけど…ま、それは自由として…拘るところは闘うけれど、基本的にピースな人達ばかりだし。俺は上手いとか下手とか分んないんだけど、演奏はレコーディングを通じて上手くなってるんだなってのを凄く感じた。最初スタジオに遊びに行った時から、とにかく気持ち良い音を出すバンドだなあって思ってたけど。山とか海とかが似合うと言うか…俺、海がスゲえ好きだから、そういう意味でも繋がったのかもね。
萩谷:「気持ち良い」って言われるのって凄い嬉しいね。だって、俺、それしか考えてないからさあ。

さっきから「なんも考えてない」ってのと「気持ち良い」ってのばっかりじゃないですか(笑)。
萩谷:いや、ほんとうになんにも考えてないですから(笑)。




『Freedom』
Junior Dee×振動弐百
[Alpha Enterprise / YJJ-4019]