昨年3月に「往年の名トラックのリメイク」をメイン・コンセプトに設立したレーベル、Star's Arena。第1弾となった前作『Treading Pon Di Stars』に続きこの度リリースされる2ndアルバム『Movin' In Di Arena』も、「リメイク」（再び創る）というレゲエ界の伝統的技巧を再考察させる洗練された仕上がりとなった。第2弾トラックにセレクトされた「Movin'」と「Arena」は、どっちもロング・キャリアなレゲエ好きなら涙腺ゆるみっ放しの懐かしの逸品である。それらをオリジナルの味わいは残しつつ現代の息吹を吹き込んだ最新リディムに衣更えし、“コンシャス”そして“ポジティブ”な視点で幅広いテーマを扱ったリリックが乗っかる。そうして生まれた「普遍の音源」をベースにした新ラインナップは、名作を懐かしむリプリント（＝復刻）とは全く異なる、新たなクリエイション（＝創造）と言うべき仕事ぶり。

　一方、昨年9月に「Stars' Arenaではできんことを全部やる」為に立ち上げたレーベル、Red Hot Records。「ヒップホップ・ビートを取り入れた作品が目立つけど、あくまでダンスホールをやってるつもり（G-Conqueror、以下G）」という新作『Best Of Red Hot Records』は、前作同様ジャンル・レスな人選から最凶軍団を召集し、ストリート・カルチャーに根差すインディー魂を詰め込んだリミックス音源主体の作品集。どちらもレーベルが掲げるテーマを見事に具現化した作品となった。

「新しいことをやったつもりもないし、結局イベント直結型なんだわ、両方とも。リメイクに拘ったのも以前から主催するダンスでのラバ・ダブに使っていたアイデアからだし、ダンスホール・レゲエ以外のアーティストにしても、闇雲にっていうんじゃなくて、付き合いのある分かってる奴らと組んだ結果(G)」とひねり出した感ゼロの、ごく自然にできたものであるという。「音楽は基本的に、あーだこーだと考えて聴くもんじゃない。考えるのは聴いてからでいい。理由はなくても何となくイイなと思う事もある。レゲエは別にちゃんと知ってなきゃ楽しめないってもんじゃないし（Trigger、以下T）」とは、あくまでも現場主義の彼ららしい。

　そんな信念のもと「（ダンスホール・シーンなど）何も無くて、お客さんも何これ？って反応ばかりだった（T）」頃から心血を注いできたレゲエ・シーンは、今やブームと呼ばれた時期を越え“パっと無くなるもの”ではなくなった。名古屋でも横浜・大阪に負けない盛り上がりを見せている。そんな活況を迎えた現在をこのパイオニア達はどう捉えているのか。

　「（今のシーンは）Hypeだね、かなり。まぁ排他的に捉えとるつもりもないけど、俺らはもっとマイペースでリラックスしてレゲエに取り組んでいきたい。一部には上っ面で楽しんでるだけで、アイデンティティーが感じられない（G）」ところがあると。「シーンが拡大した事は勿論うれしい事だよ。ただ、やる側の意識というか発信する立場にいる人達は、その人なりの解釈を加えた上で正しく伝えていく責任があるという事を忘れないで欲しい。特に自分じゃない人が創ったものなんかはね（T）」。また「何百人という人の前でマイク持ってレコードかけてる訳でしょ？　そんなとこに立つ人間が、マニュアル通りみたいなマネ事やっちゃいかんでしょ。そんなんじゃ進化はないでしょ。俺らもだけど、もっとオリジナリティを出さな（G）」と若者達のステレオ・タイプ化への警告とも受け取れる厳しい指摘をする。ただ「やっと名古屋も土壌が出来てきたと思う。昔は考えられない程の。だから若い奴はうまい事それに乗っかって、おふざけじゃなくやってくれれば良い方向へ向かう（G）」と期待もしている。

　「名古屋って比較的さぁ、疎外された…みたいなのがあるでしょ、完ペキ孤立してて。3大都市の一つにも拘らず迫害されてる（そんな気になる）。ヤーディーのパトワもアメリカじゃちょっと恥ずかしいみたいなとこがあって、それを逆手にとってジャマイカンのDJはボスしたって発想じゃないけど、名古屋弁なり名古屋独特のものをちゃんと伝えていけば、もうすぐ認められるっていう自信はある（G）」