B.P.2011が放つ核弾頭、ボス・ゴリラ=シルバー・バックが3/9、1stシングル「ソウル・レベル」をリリース。早速、彼に言いてぇことを存分にしゃべってもらった。

 ここでのインタビューの趣旨からすれば、3月9日に出る新譜の話を…といった感じかもしれない。申し訳ないが、そんな話なんてロクに聞けたインタビューではない。今回のシルバー・バックのインタビューは、彼が考え、実行するレゲエ・ミュージックの捉え方、日本人としてのアイデンティティ、本当の自由、人間解釈、生き方等々…つまり彼の哲学的な話となった。

つまり、なぜ彼がこんな歌を歌うのか? なぜこんな生き方をする人なのか? どんなことをしたい人なのか?…彼の人となりが分るインタビューだったのだ。1つの質問から始まった彼の話は、抜粋してしまうと誤解を招き、彼の想いを伝えきれそうにもない。だから、ここに残すのは今回のタイトル曲にもなっている“ソウル・レベル”についての話に絞った。もしこれで彼に興味をもって貰えたら、是非ライヴに行って欲しい。レゲエという音楽で、彼が何をしようとしているのかがよく分ると思うから。

 「戦争がダメだなんだって言ったって、止まる問題でもないと思うんですよ。それに、ダメなのは行ってる兵士が一番良く分ってるっすよ。テロやってる本人も、テロが悪い事だって分ってるはずっすよ。他の曲を聴くとテロはダメだとか、戦争がどうのこうのって曲が多いじゃないですか。でも、そんな事は皆分ってる事だし。子供にだって分るっすよ、人殺しちゃいけないって。それを分ってて、敢えてなぜそれをしなきゃいけないのかっていう所が、歌としてやっていくべき問題じゃないかなと思ったんですよね。ダメなのは、皆分ってる事をダメなままで進めてしまう事が、遙かに問題が大きいんじゃないかって。そこに、善いとか悪いとかって言う意見が余りにも出て来なさ過ぎると思うんですよ。皆戦争してるからダメだって言うけど、じゃあ、なんで米国が戦争をしちゃいけないんだって言ってる奴もいないし。

 俺は米国が黒船で日本に来た頃と、いま米国のやってる事は変らないと思ってるっすよ。分け前寄こせって、お前の所、潤ってるからって。嫌だ! こっちはこっちでやってるから。いや、ダメだ! 軍艦からドンパチ撃って、それでも聞かなきゃ武力でガツっと言わせて持ってちゃうみたいな。日本が鎖国から開国されたのとイラクのは同じじゃないですか。それをなぜ米国がそういう風にしなきゃいけないんだって。なぜ、その事に対して疑問を誰も投げかけないんだって。

 それに日本は占領されてる国なんで、米国に。占領されてなかったら、アメリカ人は僕達に英語を教えくれたと思うんで。占領されてる国だからこそ英語は必要無いんですよ。同じ国の言葉で喋られたら日本人の方が飛び出していけるの分ってるんで。だってそうじゃないですか、さんざんちっぽけな国だとか、狭いとか資源がないとか言われたって、たかだか5、60年前には俺達、世界相手に戦争してたっすよ。そんだけの力があるっすよ。それが悪い方向に向いてたから、そういう形になったんであって。

その先に、もっと善い形に向けれるだけの下地はあるじゃないですか。1つの方向に向かうって事に対して、日本人っていうのは物凄い力を発揮するって。あんだけ焼け野原にされた東京があんだけのビル街になったのは、1つの方向に皆が向かったからだと思うんですよ。その方向を定めるような歌が、どうしても欲しいって考えて…。何が悪いんだって! 人殺すことでも、なんでもないって! 米国がこうやって、ふ抜けにしちゃう政策が間違ってるから。自分達でもう一回、価値観を作りたいと思って、この「Soul Rebel」作ったっすね。誰かが言ってる曲じゃなくて…。

 別に歌でも言ってますけど、米国嫌いじゃないですよ。好きですよ、米国。ベガスで派手にお姉ちゃんと遊びたいし。ロス行って、向こうの奴とリンクして遊びてぇと思うっすよ。でも、それはあくまで対等な立場でじゃないといけないと思うんですよ。それはジャマイカに対してもなんですよ。それが、向こうはレゲエをやってるジャマイカンだから、向こうの方が上だとか俺は全然思わないし。アメリカ人がヒップホップで英語使えるからって、だからどうしたの?って。だって奴らの国の言葉なんて大した事ないっすよ、英語なんて。奴らの英語があるかねぇかの頃に、俺達もう小説書いてたっすよ、『万葉集』とか。それだけの熟成されきった言語をもってる民族っすよ、自分達は。

 こう俺が右翼的だとか、そういうの関係無しにして、自分が日本人であるって事を意識するならば、日本語をもっと…だって、日本語で歌えば誰だって分るっすよ。でも、それがパトワ語や英語になったら、その時点でレゲエが自由だって事に対するハードルを作ってると思うんですよね。パトワ語を理解できなければ、レゲエを理解できないとか。ジャマイカに行ってなければ、レゲエの楽しさ分らないとか言うんじゃなくて。

確かにそんな時代があっても良いと思うんすよ。それこそ、ランキン・タクシーが始めた頃とか。皆、やり始めた時の時代があるから。でも、今はもう違うし。今は日本人が日本人としてのレゲエを作るべきだと思うんすよね。奴らが自分の日本語を、“何を言ってるんだ?こいつは”って。“お前ら皆凄い凄いって言うけど、何を言ってるんだ?”って思わすDJになりたいんすよ、俺は。そうしてジャマイカと対等にやっていけたら、もっと良い曲も生まれるだろうし。向こうの人間も本気になるっすよ」


"Soul Rebel"
Silver-Buck
[B.P.2011 / BPCD-010]