毎秋恒例、ニューヨークで開催されるサウンド・クラッシュの世界頂上決戦「ワールド・クラッシュ」。今年、6年目を迎えたこのビッグ・イヴェントに日本代表としてマイティ・クラウンが再び参戦! 果たしてその結果は!?
 うーん……沁みるなあ。
 うん、そうだ、沁みるって言葉が一番ピッタリ来ると思う。
 全ての音が、言葉が、ヴァイブレーションが、何の抵抗もなく自然にスウッとオレの身体に入り込み、隅々までジンワリとあたたかく熱く沁み渡って行く。
 細胞のひとつひとつがゆっくりノビをしながらやんわりと、だがしっかりと目覚め、本来の力を取り戻して行く。
 この感覚は……そうそう、たとえば、愛情込めて大切に育てられた有機野菜とかを食べた時に感じるあの感覚に似てるかもしれないな。不健康極まりないオレが言うのもナンだけどさ。手間暇かけられ、太陽と大地に育まれた野菜が持つ本来のパワー。それは優しいがとてつもなく力強く、濃い。そういった自然のパワーに出会った時、オレの身体が示す反応と、このアルバムを聴いた時にオレの身体が示した反応は実に良く似てる気がするのだ。
 自信を持って断言しよう。
 ソウル・スクリームのハブ・アイ・スクリームによるソロ・デビュー・アルバム『The Circle』は、本当に素晴らしい、感動的な作品だ。

 このアルバムは、彼自身が設立したインディーズ・レーベル、AAA Organization(トリプルAオーガナイゼイション)からの初リリース作品であり、プロデュースも彼自身が手掛けている。
 既に話題になってるように、サウンド面での最大の特徴は、全面的にバンド演奏による生音が使用されていることだろう。
 ソウル・スクリームが前作『Future Is Now』発表後、浪速のド・ファンク・バンド=オーサカ・モノレールとタッグを組み、共にツアーを回ったのは御存知の通り(その模様はライヴ盤及びヴィデオ/DVDでも存分に堪能出来る)。が、『The Circle』は必ずしもその延長線上にのみあるワケではない。もちろん、そのコラボレーションが今作に繋がる大きなキッカケになったのは確かだろうが、少なくともオレが聴く限り、ハブ・アイ・スクリームが第一に考えたのは、生演奏とのコラボレイトうんぬんより何より、彼自身の色を最大限に出すこと……彼自身の持つオーガニックなヴァイブスを最大限に表現することだったんじゃないだろうか。
 あらゆる束縛から解放され、自由に笑い、歌うこと。おそらく、彼がソロ・アルバムを作るにあたってまず念頭に置いたのはそのことだったに違いない。
 最高のミュージシャン達による最高の演奏と、それを基にした綿密極まりないプロデュース・ワ−クによって、ため息が出るほどに美しく、力強く仕上げられた音の結晶の中を、生き生きと自由に舞うハブ・アイ・スクリーム。これまでになく強力かつ奔放なヴァイブスを発するその姿を見て、オレはそれを痛感している。
 『The Circle』でのハブ・アイ・スクリームは、明らかに解放されている。自由を満喫している。
 そして、オレは思う。ヒップホップってそういうモンだよな、と。

 『The Circle』。
 是非ともみんなに聴いてもらいたいアルバムだ。こんなにも沁みる素晴らしい音楽なんて、そうはないぜ。

"The Circle"
Hab I Scream
[AAA Organization / TPA-0001]