ジャマイカのダンスホール・レゲエ界の“今年の顔”と言えば、やはりエレファント・マンだろう。その象男が、ここへ来て待ちに待ったアルバム『Good 2 Go』を12/17(アメリカは12/2)、遂にリリース。多忙を極める象男に早速、電話インタビュー。

 何しろ、やってくれちゃってるのだ、エレファント・マンは。あちこちで、色々と。ヒット・チューンどころか、ヒット・リディムとヒット・ダンスの発信源、ジャマイカ島のスーパー・ヒーローにして、ミッシー・エリオットからワイクリフ・ジョン、リル・ジョン、マライア・キャリー(!)から声がかかるアメリカのニュー・カマー。『Good 2 Go』は通算4枚目にして初のメジャー・アルバム。ショーン・ポールに続け!と周りが色めき立っているのをよそに、120%ダンスホールの作品をポン、と投げて来た。やってくれるねぇ、カッコいいわ。で、相変わらずのマイ・ペース。「おおぅ調子はどうだい? 俺は準備OKだ、インタヴューを始めろよ」って電話口で張り切ってるのが木曜日の夜9時。準備OKどころか2カ月も待たされて、月曜の朝イチで入れないと原稿がオチるタイミングなんだな、こっちは。
 
●昨年『Higher Level』を出した時、「クロスオーヴァーしたらクールだけど、そうならなくても気にしない」と答えてましたね。アメリカで「Pon Di River, Pon Di Bank」が大当たりして期待が高まっていますが、それにどう反応してますか?
Elephant Man(以下E):今年は新しいファンを獲得して、俺が次にどういう動きをするかすごく注目されている実感がある。自ら真剣に取り組んで来たのが報われたって気分だね。『Higher Level』を作った時、凄いのを作っちまった、次はどうしよう?とか思ったんだけど、『Good 2 Go』はもっともっと凄い。クレイジーな出来で、すごく満足している。

●「Pon Di River〜」はヴィデオの反響も大きかったですよね。撮影の時から盛り上がってはいましたが、これほどの成功は予想してました?
E:ジャマイカのダンスを全部見せたタイトな内容で、全く新しいモノを作っている自覚があったから、いい線は行くだろうとは思っていたけど、正直、ここまで成功するとは思ってなかったよ。

●ここ最近、ジャマイカでお揃いのダンスが流行っているのは、どういうワケでしょう?
E:新しいダンスを考案すること自体が流行っているんだ。個性的な新しいダンスを考えて広めるのに躍起になっている連中がいて、みんなもそれを楽しみにしている。

●“20セント”や“クーリーダンス”といったヒット・リディムを使った曲を多く収録してますが、
これは大事なポイント?
E:もちろん。俺はダンスホール・レゲエのカルチャーを代表しているわけだから、そういったホットなリディムを紹介するのも、アメリカのアーティストと共演するのと同じくらい大事だ。クレイジーなビートに乗ってどうやって踊るのか知らせないと。

●リル・ジョンが唯一ヒップホップ系のプロデューサーで参加してますが、どうやってフックアップしたのでしょう?
E:彼の「Get Low」のリミックスに参加したのがきっかけ。ボーン・クラッシャーもその流れで知り合いになった。彼以外は全員ジャマイカのプロデューサーを起用したのは、レゲエらしい作品にするのが大事だったからだ。

●R&Bのジミー・コーズィエーも彼がジャマイカ系だから起用したの?
E:その通り。彼はアメリカで活躍しているジャマイカ人で、素晴らしいシンガーだよ。

●せっかくだからアメリカの女性アーティストと
組みたい、とは思わなかったのですか?
E:それは次回だね。ミッシー、イヴ、トリーナ、リル・キムの女性チームと俺やリュダクリスなんかの男性チームが掛け合う曲を作りたいね。

●ステージ上でのあなたのエネルギーとテンションの高さは凄いですよね。いいパフォーマーである秘訣を教えて下さい。
E:心の底から本気で自分をさらけ出すこと。俺はシャイじゃないからね。DJが上手いだけじゃなくて、踊れて場を盛り上げられるトータル・パッケージとして見せているんだ。

●セリーヌ・ディオンやロックのサヴァイヴァーの曲を使う絶妙のアイディアはどこから持ってくるのでしょう?
E:自分の気持ちの奥底に引っかかった音楽を俺は使う。「Fan Dem Off」のトラックを聴いた時、「Eye Of The Tiger」のメロディーが浮かんできた。セリーヌ・ディオンの曲は、特に有名な曲ではないけど、俺は大好きですぐにリリックが浮かんできた。

●あの「Signal Di Plane」はダンスのことのほかにもう一つ話が絡んでいるように聞こえるのですが。
E:あのダンスはみんなが空港で飛行機を見送る時に手を振る様子から出てきたんだ。アメリカに移民していく人達に別れを告げるのはジャマイカの生活の一部だからね。その光景をダンスやリリックにすることで、端的に状況を説明しているわけだ。

●なるほど。ジャマイカのダンスホール・カルチャーには、島の外の人が楽しめないトピックも存在してますが…。
E:どのトピックの話をしているんだ?

●…「Chiney Ting」は日本人として全然楽しくなかったです。
E:俺はあの曲で誰かを侮辱するつもりなんてなかった。みんな過剰反応してるよ! あれはルード・ボーイのラヴ・ソングで、日本の女性に対する愛情を示しただけだ。日本の女の子ともっと仲良くしたいっていう…エレファント・マンは世界中の女性が好きで、アメリカ人でもブラジル人でもみーんなと仲良くしたいと思っている。

●でも、サイズの話も出てましたし……。
E:そういう話じゃないんだって。みんな絶対に騒ぎ過ぎだよ!!

●…分かりました(苦笑)。今日はありがとうございました。


"Good 2 Go"
Elephant Man
[Warner / WPCR-11763]