Black Kat

Sami-T

Bounty Killer


 毎秋恒例、ニューヨークで開催されるサウンド・クラッシュの世界頂上決戦「ワールド・クラッシュ」。今年、6年目を迎えたこのビッグ・イヴェントに日本代表としてマイティ・クラウンが再び参戦! 果たしてその結果は!?

 まず今年の大会、確認事項を先に。日時は10月11日、会場はクイーンズのクラブ・アマズウラ。参加サウンドは、開始前のクジ引きで決まったプレイ順に、ポイズン・ダート(アメリカ)→マイティ・クラウン(日本)→ワン・ラヴ(イタリア)→マキシミニア(トリニダット)→ブラック・キャット(ジャマイカ)→トリは昨年優勝のレベル・トーン(カナダ)の6サウンド。進行方法は、第1ラウンド(各15分)→第2ラウンド(各10分)を終了した時点で1サウンドが脱落→第3ラウンド(各10分)を終了した時点で2サウンドが脱落→第4ラウンド(市販レコードのみ使用/各5分)を終了した時点でさらに1サウンドが脱落→残った2サウンドで最後は「チューン・フィ・チューン」で決着、という流れ。そして、ルールは昨年までとは異なり、「各ラウンドごとの勝者を決めていき、最終的に最も数多くラウンドを取ったサウンドが優勝」というスタイル。ホストはバウンティ・キラー、共に予定されていたエレファント・マンは現れず。
 で、結果から。第1ラウンドはマイティ・クラウンの勝利。第2ラウンドはブラック・キャット。ここでレベル・トーンが脱落。第3ラウンドはブラック・キャット。ポイズン・ダートとマキシミニアがここで共に脱落。そして、第4ラウンドもブラック・キャットで、この時点でブラック・キャットが過半数のラウンドを制したこととなり、その初優勝が決定、オメデトウ! と、結果だけを書けばこうなる。「結果」だけを言えば。
 しかし、実際の「内容」はと言えば、色々ある。賢明な読者なら、「ホストがバウンティ」の時点であの2年前の暴挙を思い出すだろうが、今年もそう、またやらかしてくれました。登場時には「前は色々とあったから、今年はグチャグチャ言わんよ」と反省めいた発言も有。しかし、始まると、特に戦前の大方の予想通りにマイティが第1ラウンドを圧勝し、第2ラウンドでも完全にボスした直後から、いきなり直接「対マイティ」というのではなく、日本人をターゲットにした誉め殺しやら、ディスとも取れる発言を開始、会場内の空気を恒例の“ジャマイカ最高!”へと徐々に巧みに誘導。レベル・トーン、ポイズン・ダート、マキシミニアが散々だったこともあるが(ワン・ラヴは楽しかった!)、完全にマイティを標的にした言動で、“ジャマイカ代表”のブラック・キャットに肩入れ。で、当然ブラック・キャットもこれに乗って、ジャマイカ国旗を身に纏ったりして、観客の大多数を占めるジャマイカ系の人々にアピールした展開に持ち込み、逃げ切った。確かに盛り上げたし、第3ラウンドは彼等のもの。しかし、全体として「他を潰した」と言うほどの強烈な印象を残すほどでは無かった。
 と言うわけで、またまたマイティにとっては「後味が悪い」(マスタ・サイモン談)結末となったが、第1&2ラウンドは勿論、サミーが「俺達日本人はレゲエを(ジャマイカ人から)奪おうとしているんじゃない。(ジャマイカ人と同様にレゲエを愛する者の)一部なんだ!」とアピールして突入した第4ラウンドでのその怒濤のプレイと、煙を吹かしたアクション、ぶっち切れたテンションはこの晩の最大のハイライト。「負けた」のではなく、「勝てなかった」という感じだが、この晩の“主役”として、その場に居た者に見せつけたその存在感と実力、センスは相変わらず強烈。ジャマイカが産んだハードコアなエンターテイメントの中心に立ち、その一部であることを存分に示してみせた。
 「世界一」を謳いながらも、実際は「国対抗」の様相を呈していたこのイヴェント。最後に勝つのはやはり「ダンスホール=ジャマイカ」というジャマイカ人の威信か。同じ島国根性を持つ身として分からんでもないけど。