MIX CD
2. Bobo James / Mellow Jazz Funk(P-Vine)
サブタイトルはその名も“知られざるグルーヴ・マーチャントの遺産”。レア・グルーヴ、ジャズ・ファンク・マニアから「見かけたらマスト!」と言われて久しい70年代の(正に!)レーベル、グルーヴ・マーチャントといえば、Qティップやピート・ロックを始めとするヒップホップ・クリエーターがこぞって“使った”ことでも有名だろう。その中の一人であるデヴラージことDJボボ・ジェイムスが自ら「長年温めてきた思い入れの深い企画」と語るこのミックスCDはヤラレっぱなし!のマーチャントなグルーヴがドクドクと脈打つ至極の一枚、と相成った。これまでの数々の“ミックス仕事でもそのグルーヴ・マスター”ぶりを発揮してきた彼だけに間違いない、のだがなかでもコレはスペシャルな域にある偉業、と言えるだろう。


ALBUMS
2.Ja Rule / Blood In My Eye (Def Jam)
『Source』の最終ページ“Last Word”でお馴染のアンドレによるイラストのジャケにまず目を奪われる…。マーダーインクのキーマン=ジャの通算5作目は危険な匂いで充満。対立する50セントのGユニットのリリースに当てていることからも分る通り「言われっ放しでいられるか!」というマーダー・リリックが…(また血の雨が降らなければ良いが)。スコット・ストーチによるジャにしては久々のフロア・バンガー(?)「Clap Back」や、シズラ「Solid As A Rock」をサンプリングした「Crown」、そして隠し玉である故2パックの腹心=フェイタル参加曲等、どこを斬っても“男クサい”アルバム。ジャのマス・イメージもこれで変わる?
3. Ludacris / Chicken-N-Beer (Def Jam)

ディスタービング・ザ・ピースの新鋭チンギーのブレイク、という最高のタイミングでの真打ち登場。この3rdもリュダクリスならではのキャラの立った痛快娯楽作。今回もあの声でフロウで、ノセて笑わせてナンボの世界。プロデューサー陣はカニエ・ウェスト、ヒプノタイズ・マインズ(スリー6マフィア)のDJポール&ジューシーJ、エリック・サーモンにDJナスティ&LVM他で、ゲストにはスヌープ、リル・フリップ、8ボール&MJG、カール・トーマスから“身内”のチンギー、ショウナ迄。前2作とは意識的なテイストの違いも感じる。思わず「役者やのお〜う!」と言いたくなるPVも話題のサザン・ヒップホップ最前線盤。
4. Fabolous / More Street Dreams Pt2:The Mixtape(Warner)

「So Into You」がロングヒット中のファボラスの早くも届いたニュー・アルバム。と言いたいところだが、これは所謂“ミックステープ・アルバム”。そう、レディメイドのビートの上でフリースタイル的感覚でRECしたブランニューを寄せ集めたモノ。とは言え、侮れない代物であることには変わりない。聴いてお楽しみのあのオケ、このオケ(マジック、ジェイZ、LOX、リル・キム等かなり渋いところを突いてる感じ!?)を次から次へとジャックしつつ、仲間のジョー・バドゥンの「Fire (Remix)」なんかもちゃっかり収録。ボスがDJクルーのデザートストームだけに、こんな展開もアリ!?
5. Nelly / Da Derrty Versions (Universal)
ネリーの新作もかなり変則的な内容。ディズニー映画『ホーンテッド・マンション』の劇中歌「Iz U」や、ネプチューンズのアルバムで聴けた「If」、又2ndアルバム未収録の「Kings Highway」といった楽曲の他、ジェイ・Eやネプチューンズ、ジャーメイン・デュプリ、デヴィッド・バナー、スコット・ストーチらが新たにリミックスを施した代表曲の数々…。マーフィ・リーのアルバムが大好評の中、ネリー・ファンがこれにトビつかない訳がない? 同じセントルイスの新星チンギーにいい顔はさせんとばかりに(?)ガツンとカマすダーティな贈り物。Nikeの例のキックスも出ますよ!
6. MLyrics Born / Later That Day...(Lexington)

DJシャドウと共にクワナムを盛り立てる実質上のリーダーの待ちに待った初のソロ・アルバム。一度聴いたら忘れられないあのドクトクな芯の強い声と、ソウルフルなフロウが全編に渡って楽しめるばかりでなく、トミー・ゲレロからポエッツ・オブ・リズム、ラティーフ、ギフト・オブ・ギャブ(ブラッカリシャス)、カット・ケミスト等のリリックス・ボーン・コネクションが発揮されつつも、少しの無理もない作品となっているのは、彼がそれだけ優れたプロデューサーでもある事の証明になろう。ファンクの消化具合もオリジナルな西海岸アングラ云々を超越する大傑作! 
7. Pete Rock / Hip Hop Underground Soul Classics(Hostess)

“ビート・ジェネレーション”シリーズでB-Boy心をくすぐってくれたBBEがスタートさせたシリーズ“ロスト&ファウンド”の第一弾。ピート・ロックの名義となっているがその内訳 はINI、ディーダ各々のロスト・アルバム。つまりは、ピート・ロックがかつて“エレクトラ”の傘下に興こした今となっては幻のレーベル、ソウル・ブラザー・レコーズからリリースされる予定だったブツ2枚(2CD)が初めて陽の目を見る、ということ。セラシエのジャケでお馴染みのINI「Fakin' Jax」も勿論収録、でQティップ、ラージ・プロフェッサー絡みのあの曲も。対するディーダの方もピート・ロックの90年代中盤の幅のあるプロダクション全開で聴き逃せない。ピート・ロックはやっぱりピート・ロック。最高!
8. V.A. / R&B/Hip Hop Party 2003 Best(Avex)

世界最大のトラック・レーベル“AV8”の音源をライセンスする「R&B / Hip Hop Party」シリーズの2003年総決算べスト・ミックス。何故にベストなのか、はレーベルを超えたあのオケ、あの歌がテンコ盛りのパーティー・トラックスだからこそ。エミネムもネプチューンズもミッシーも、クラブバンガーはここぞとばかり殆ど入っているという好内容。何気にパンジャビ・ヒット・スクワッドが目立ちます! また、スノウやティンバランド&マグー、そして故アリーヤのオリジナル音源も自然にミックスされ、一枚通しての“流れ”でも飽きさせない。選曲及びミックスはDJ Shuzo & Dask。
9. The Ramm:Ell:Zee / This Is What You Made Me(Tri- Eight)

ジャン・ミシェル・バスキアのジャケもフレッシュだった「Beat Bop」やゲットーベッツ等の音源、そしていくつかのゲスト参加曲はあったもののレコーディング・アーティストとしてのラメルズィーは、伝説と促えられるくらい寡作だった。しかし。しかし、である。その彼の思想や表現にあらゆる角度から触れることが可能な(ファースト)フル・アルバムが遂に完成してしまった…。これは事件だ!? サウンド・プロデュースは全曲インドープサイキックスとして知られたD.O.I.とDJケンセイの2人が担当し、ラメルの思想を対峙し共鳴する音塊を作り上げている。とにかく圧倒されることしきりのその音楽。独立ブックレット『Gothic Futurism』で見る、読むラメルにも期待して頂きたい。
10. Diverse / One A.M.(P-Vine)

シカゴ在住のチョコレート・インダストリーズ一族のMCダイヴァースのデビュー・アルバム。プレフューズ73、RJD2、マッドリブといったタイプの全く異なるクリエーター達と共に作り上げたそのダイヴァースの独創的な世界は、その“多彩さ ”を意味するMCネーム同様の幅広さと奥深さを持っている。リリックス・ボーンがハードに絡むシングル曲「Explosive」やプレフューズ路線の「Jus Biz」は元より、ジェフ・パーカー(トータス)制作曲や、ヴァスト・エアー、ジーン・クレイらとの共演もポイントになっている。“リリシスト”として名高い彼のその堅いラップこそ最大の聴き物。


SINGLE

11. Sphere Of Influence / Atlantis(Def Jam)
デフ・ジャム・ジャパンのYoungsta=スフィアの2ndアルバム。DJユタカ・プロデュースの「Walk This Way」、BLプロデュースの「Cruisin」、T-クラ・プロデュースの「Hip Hop☆Star」といったシングル曲を中心に展開されるのは“失われた楽園”を自らの解釈で再現させた、とでも言うべき思いっきりファンで時にシリアスなヒップホップ・ワンダーランド。ダボ、トコナXとのマイク交歓曲「Ya Head!? Pt.2」や、L-ヴォーカル、メガ-G、ケムマキ、D.O.というフレッシュな面子がリレーする「Fabulous 5」(D-オリジヌー制作)や、ヒロシマ・プロデュースの「Nothin' Change」等、前作にはなかったアプローチが目立つ、進化したその姿を見せつける会心作。
12. OJ & ST / One Life(Future Shock)
“U.B.G.のダブル・トラブル”ことOJ & STの名刺替わりのメジャーからのミニ・アルバムが到着。“ミニ”と言ってもジブラのイントロデュースによるド頭のトラックを除く9曲は“フル”なので、ヴォリューム、中身的にもアルバムらしい重みのあるものとなっている。直情型のパワー・ファイターのタッグ屋だけに単にヴァースを分けるだけじゃなく、細かなタッチワークやツープラトン口撃も冴え渡っている。ハードなマイク物からフロア・チューン、そしてレゲエ・シンガー、CJをfeat.した「Papa Mama」の様な故郷の親へ宛てた手紙的リリックスや、真木蔵人監督によるPVも見物のタイトル曲「One Life」等のストリート・ドリーム物もグッとくる。ウヂ、ケムマキ、アクション、そしてD-オリジヌー(全曲!)のサポートも効いたシャイニングなデビュー作。