De La Soul
Nitty Gritty & Dennis Brown
Run DMC
Jazzy Jeff & Fresh Prince
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 あなたの写真集『The Black Chord』を見せて貰いましたが、どれも生き生きした表情をとらえた素晴らしい写真ばかりですね。タイトル通り、ヒップホップ、レゲエ、ファンク、R&B、ソウル、ブルース、ジャズ、アフリカン・アーティスト…といった黒人のミュージシャンばかりを長きに渡り撮り続けたのですか?

David Corio(以下DC):これらの音楽は普段よく聴くいてるし、自分で撮影した殆どのアーティストのレコードを持っているんだ。勿論、他にも色々なアーティストを撮影してきたけど、個人的にはやっぱりレゲエ、ファンク、ヒップ・ホップ、ジャズが好きだね。自分が賞賛するアーティスト達と仕事で会えるのはとて嬉しい事だよ。


その中でもレゲエやヒップホップのアーティストに魅了された理由は?

DC僕はレゲエを中心に25年間もレコードを集めているから、彼らみたいな境遇=ゲットーからレゲエやヒップ・ホップといった音楽で成功するのが如何に難しいことか、っていうのがよく分っているつもりなんだ。彼らはとても個性的だし、確固とした主張を持っているから、彼らの音楽はとても力強いんだよ。


撮影した際に特に印象に残っているアーティストは誰ですか?

DC沢山いるんだけど…個人的にはデニス・ブラウンだね。彼は良き友人でもあり、多分20回は撮ったと思うよ。あと、カーティス・メイフィールド、ボブ・マーリー、フェラ・クティ、サン・ラも強烈な印象が残っているよ。


撮影に際して何かエピソードがあったら教えて下さい。
DCサウス・ロンドンのクリスタル・パレスでボブ・マーリーを撮った写真があるんだけど、そこにはステージの前に湖があってね、その写真を撮るためにわざわざ胸の深さまで水の中に入って撮影したんだ(笑)。

 デニス・ブラウンは、とても温かみがあって美しい人だったね。彼はいつも笑顔で、シンガーとしても作詞家としても素晴らしい人だった。最後に彼をニューヨークで撮影した時は、彼が亡くなるほんのちょっと前だったんだ。その時、彼はアコースティック・ギターを持って来ていたんで、「何か好きな歌を歌ってくれないか」と頼むと、彼はナット・キング・コールやザ・ドリフターズ、そしてサム・クックの歌を歌ってくれたんだ。その後も古いStudio Oneのチューンを幾つか歌ってくれたんだよ。それはとても貴重なひと時だと肌身に感じながら、私のスタジオで彼と2〜3時間過ごしたんだ。

もしその時、録音していれば凄い音源が残ったと思うけど、とても自然な流れでこうなったんで、音としては残ってないけどね。でも、今はそれで良かったと思ってるよ。この時撮影した写真はVP RecordsとHeartbeat Recordsからリリースされたアルバム『Let Me Be The One』に使われているから覚えている人も多いかもね。

 ジェイムス・ブラウンは一日の撮影で4度も髪の毛のセットをするから、たった60秒間撮影するのに12時間も待たなくてはならなかったんだよ。初めて彼に会った時、彼の髪には赤のカーラーが巻かれてたんだけど、「もし今、君がカメラを取り出していたら、俺は窓から君のことを投げ出していただろう」と言っていました(笑)。

 初めてカーティス・メイフィールドに会った時、彼はとてもあたたかな抱擁をしてくれました。彼はデニス・ブラウンにも通じる、温かさと愛を放っていましたね。勿論、彼も僕にとってのヒーローなんだ。本当に天才だと思うよ。こういう人達に出会い、共に仕事が出来た事は、とても運が良かったと思うんだ。


数々のライヴ撮影もされてますが、今迄観た中で一番衝撃的だったコンサートは何ですか?

DC1980年代中頃、ロンドンのハックニー・エンパイアでのアビシニアンズ。1980年代初期、ロンドンのトッテナム・タウン・ホールでのホレス・アンディ。1979年、ロンドンのザ・マーキーで行われたジェイコブ・ミラー。1980年初期、「レゲエ・サンスプラッシュ」に出演した時のデニス・ブラウン。そして1980年代初期、ジャー・シャカのサウンド・システム…。


今後、一番撮りたいアーティストは誰ですか?

DC誰って言われてもね…とにかくもっと沢山のアーティストを撮り続けていきたいんだ。今はイギリスの先史時代遺跡の写真集『Megaliths』を作ったんだけど、このプロモーションをしているところだよ。ま、この本は『The Black Chord』みたいな音楽の本とは全く違った雰囲気なんだけど、同様にパワフルで、ハマって貰えると思うんだけどね。是非ホームページ(www.davidcorio.com)でチェックしてみてよ。あと、最後に言わせてよ。日本に来て作品を紹介する機会を与えてくれたFive Star、Riddim、Jason Debeckに感謝しています。

DAVID CORIO

 
1960年、イングランドのロンドン生ま
れ。18才よりプロのフォトグラファー
としての活動を始め、「New Musical
Express」「The Face」「Times Out」
「Black Echos」等に様々なジャンルの
ミュージシャン達を撮る。その後フリー
となり「The Times」「The Daily
Telegraph」「Q」「Theatre Royal」
「Stratford」「New York Times」
「Times」「Mojo」等の新聞
や雑誌の他、Greensleeves、VP、
Heartbeat、Islandに写真を提供。92
年、ニューヨークに移住。
 99年、ブラック・アーティストを被
写体にした写真集「The Black Chord」
を出版。年内には英国に散在す
る先史時代の石造遺跡を14年かけて撮
った写真集「Megaliths」を発行予定。


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