トロンボーンやペットの先がお客の中に突っ込んでいる。ステージは無い。外には入りきれない客がごった返しているが、ドアは開きっぱなしなので誰もが音だけは楽しめる。客とミュージシャンが一体なんてもんじゃなくて、楽器やマイクを持ってるのが出演者だと判別できるだけというスゴイ状況でのライヴ。一昨年の寒い12月だった。今はクローズしてしまった7〜80人でパンパンのラブリッシュでの『SKA忘年会』。出演はレッド・レッド・モヒカンズというパンク、Jazz、Skaフィーリングのバンドに加え、新宿リキッドルーム、心斎橋クアトロをソールド・アウトにしたばかりのデタミのシークレット(と言ってもバレバレだったが)と、このマイスティースの出演。デタミは言うに及ばず、他の2つのグループもものすごくいい。関西はすげえなぁ!と、食らわされて朝7時のひかりで帰って来たっけ。

 あれから、あっという間に東京でも評判になりつつあるマイスティースに渋谷クアトロで行われたコンピ『Big Shot』レコ発ライヴ前に久々に会った。あっ、ベースの和田君にはちょっと前のデタミ&バスターのリキッドで声をかけられたっけ。今日は取りあえずヴォーカルの次松君、リーダーでドラムの金澤君、そしてベースの和田君に。

いつ頃から、どんなメンバーで集まったの?
金澤:キーボード以外はみんな大学の友達ですね。
和田:何で繋がったか分からないくらいバラバラなんですけどね。

マイスティースって「ネズミの歯」って意味?
金澤:いやあ、ノリでというか、言葉の響きで。長いバンド名ってパッと省略されたりするじゃないですか。そうされた時にどう転んでもダサくならないようにしようと。ま、「マイ・ティー」ってのもどうだかなあとは思うんですけど(笑)。だから意味は特に無いです。

オリジナルはいつから作り始めたの?
金澤:一回ライヴやって、その次位からオリジナルはやってたかなあ。カヴァーはむちゃくちゃやってたなあ。

どんなのやってたの?
金澤:ホレス・アンディの『Your My Angel』ってアルバムがあるんですけど、あの辺のやつとか、スカ・フレイムスとか、デタミとか(笑)。

デタミの話は聞いたことある(笑)。
和田:前に『Riddim』に載ったことあるじゃないですか(笑)。

あっ、そうだそうだ(笑)。あれは確か『Full Of Determination』を作ってるスタジオでね。デタミの誰かから、茂君か大ちゃんあたりだっけかな?聞いたんだ。で、オレが2〜3行書いたっけ。
金澤:「俺らより上手かったら訴えてやる」って書いてありました(笑)。今でもその『Riddim』持ってますもん。
金澤:あの時ね、多分これ俺らのことだって、メンバーみんなで店からゴッソリと一人10部くらい『Riddim』持って来て、蛍光ペンでアンダーライン引いてな(笑)、嬉しかったなあ(笑)。
和田:今でこそ色々ライヴに誘って貰っているんですけど、当時は全然ツテもなくてストリートでライヴしてたんですよ。梅田のヘップファイヴってとこの前なんですけど。たまたまトロンボーンの晋さんの知り合いの人が通って、その人が晋さんに「デタミのカヴァーやってるバンドがストリートにおる」って電話して、それがデタミとの最初の接点だったんですよ。

マイスティースのオリジナル曲っていいんだよね。等身大の良さ。ここんとこ急に注目されてきてるよね。たぶん、作ってない良さとか、完成されてない良さ、メロディとヴォーカルの詩の良さ。
金澤:基本的に無理って出来ないじゃないですか。この11人が集まったら、無茶苦茶スカがほんまに好きな人ばっかが集まった訳じゃないからね、ただ音をまとめていく際にスカというジャンルのフォーマットだったり、アレンジだったり、「いっせいのー」で一回やって、あかんとこだけ詰めてってアレンジ変えたり、リズムだけ変えたり。そんで勝手に出てきたもんがあれっていうかね。

もう次の作品とか用意してるの?
金澤:「いくつかの春の光」っていう『Constant Music』に入ってた曲のシングルを出すんです。ムッチャクチャ趣味の部分を反映したというか、こんなんシングル切る人おらんやろっていう8曲入りのシングルなんです。よくレゲエと言ったら12"で同じ曲のヴァージョン違いで片面4曲ずつくらい色んなヴァージョンが入ってるじゃないですか。そんな感じのノリにしたくてね。最初は4曲入りにしようと思ってたんですけどね、最初ハカセさんに曲をお願いして、それを聞いたらメンバーが「ちょっとこのままだと負けてまうで」とか言って(笑)、そこから一気に8曲になったんですよ。最初から決まってたのがハカセさんとデタミの高津さんと道下さんっていう大阪のトランペット吹く人なんですけど。あとはマイスティースのメンバーでリードしてる楽器がそれぞれ違うっていう、とにかく盛りだくさんですよ。

で、高津君のは歌詞は同じなの?
和田:それが違うんですよ。

ナルホドネ。
和田:昔、Dee-Jayを高津さんがやってたって噂を聞いたんで、それをやってもらおうって相談しに行ったんですよ。そしたら高津さんが無茶苦茶考えてくれて、結局「俺は替え歌がおもろいと思うねん」って提案してくれて。それで気迫に押されて「そんじゃ、それで」って(笑)。
金澤:高津さんとレコーディングする前にね、緊張するから昼過ぎから酒呑むじゃないですか。で、めっちゃいい話とか聞かせてもらってる間ね、高津さんが言ってたのはね、日本人が発するデタラメの英語を外国人が聞いたらギャップが出てくるじゃないですか。その誤差みたいなのが面白いって。どっちの国の人が聞いても面白い解釈をしてくれるかなって内容の詞なんですよ。

それって全くのオリジナルの歌詞なの?
金澤:使ってるのって「春の光」という言葉だけです。
和田:高津さんが次松のオリジナルの詞を何回も読んで、そっから高津さんのフィルターを通して書いた詞なんで、めちゃ面白いですよ。

オリジナルの歌詞はどんなところから出てきてるの?
次松:あれは曲を最初貰って、曲の感じで“春の感じ”…ってベタなんですけど(笑)、甘いだけじゃ終わらないっていうか…。それでオリジナルの「春の光」って「幻の光」ってことなんです。報われないっていうか…。でも高津さんの歌詞の方はサビがめちゃ泣けるね。

 こっちの都合で時間がなくなり、久々に会ってほんとに話し足りない、聞き足りないけど、シングルをしっかり聞くからゴメン!
遠山:あぁ、結構海外…ハワイとかスペインとかで流れてるらしいですよ。