あの『'Til Shiloh』を越えたか?と噂されるブジュ会心の新作が、この『Friends For Life』だ。国内盤ライナーノーツでは小松淳子氏が「これからまた新しいブジュのムーブメントが起りそうな予感がする」と記されているが、まったくもって同感、である。理想的なキャリアを示しながらも、若々しさを失わない雄々しきライオンの姿がここにある。そのオーラの強さは人一倍どころか百倍なのに、“親しみやすさ”も抜きん出たものがあるブジュ。そんな彼がその最新作について語ってくれた


アルバムの制作に取り掛かったのはいつ頃ですか?
Buju Banton(以下B):前作を出してすぐなんだけど、その直後にマイアミのビーチで酷い足のケガをしてしまってね…。病院には4ヶ月いて結局、半年以上、活動が出来なかったんだ。だから、本格的に作り始めたのは、前作から一年後、ということになるね。

制作は集中して行う方ですか?
B:いやいや、じっくりとだね。しっかりと考えて、プランを立てて、時間をかけてやるようにしている。このアルバムも一年以上、時間を掛けたしね。


前作と比較しても、アルバムとしてかなり“幅がある”というか、ひょっとしたら最高傑作なんじゃないか!と思うくらいで…。
B:間違いなくこれまでで一番良いアルバムだよ。ダンスホール、ルーツ・ロック、スカ、ヒップホップ、R&Bと全ての要素があり、全てが自分らしいものになったと自負している。オールドスクールなDJスタイルもやってるしね。最初からこうした様々なタイプの音楽が入った、色んな種類の自分を表現した作品にしようと決めて取り掛かったんだ。トータル感がある作品になっただろ?

ええ。その間に、アメリカの9.11やネガティヴな事件も起りましたよね。それはあなたの作品にも影響を及ぼしてますよね。
B:自分を取り巻く出来事全てから影響は受けているよ。国際的なことは勿論、身近なことまでね。そうしたことから楽曲のトピックの幅は増えていくし、それによってより多くの人、つまり世界中の人々に聴かれる楽曲が出来るんだ。

アルバムを制作する上でやはり“世界市場”はかなり意識されますか?
B:勿論。でも世界といっても国や地域によって求められるスタイルは違ってくるから、そうした様々な違いに対応出来るように、より幅広いレンジを持った色んなタイプの楽曲を一枚のアルバムに収める必要があると思う。今回みたいにね。

既発シングル曲は「Tra Tra Tra」と「Mr. Nine」の2曲くらいですよね?
B:3年振りのアルバムで、過去の曲を沢山入れる必要はないと思ったんだ。新しいブジュ、今のブジュこそを提示すべきだ、ってね。あの2曲を入れた理由は、グレイトな曲だからだよ。

ピーター・トッシュの「Mama Africa」のカヴァーを演ってますが…。
B:ピーター・トッシュはレゲエのアイコン。もっと語り継がれていくべきアーティストだからね。俺にとってのヒーローだし。あとマーカス・ガーヴェイのスピーチをインタールードで使っているんだけど、世界中の人々に彼の教えをもっと広めたい、という気持ちで入れたんだ。

コンビネーション物も充実してますね。
B:参加したゲストは全て俺自身が選んだ。バウンティ・キラー、ウェイン・ワンダー、ベレス・ハモンド…みんな友人であり、優れたアーティスト。特にそれ以上の意味はないよ。ファット・ジョーとも4年来の付き合いさ。マイアミのイヴェントで知り合って、彼のアルバムにも参加したし…とてもいい関係だよ。

最後に日本のファンにメッセージを。
B:日本、本当に恋しいよ! みんなのその美しき心、美しき国を忘れたことはないし、それを誇りにし続けて欲しい。日常の中では色々な予期出来ないネガティヴなことが起こるけど、それを乗り越えていくのは、一人ひとりの愛の力でしかない。思いやり、慈しむ心、それが全てを救済するということを忘れないで欲しい。今回のアルバムには俺の内に秘めた愛を様々なカタチで表現している。それを受け止めて、不安や不満、ネガティヴなことを乗り越えていく力にしてもらえたら、こんなに嬉しいことはないね! また会おう!

で、次の予定はもう決まってるのですか?
B:ツアーをして、またすぐアルバム作りだよ。次は全部スカのリディムでやろうと思っているんだ。ライヴでもやってるし、家でもスカはよく聴くからね。

"Friends For Life" [Victor / VICP-62247]