「SL-1200が無かったら…確実に今の自分は無いでしょう」と臆面無く語る“ターンテーブル・ジャンキーズ”がその30周年を祝った一大イヴェント(実に6時間半の長丁場)が、その生みの親であるテクニクス主催、そしてオーバーヒートの企画制作により、実現の運びとなった。その日(2002年11月17日)、川崎クラブチッタには全国のダイレクト・ドライヴ中毒者が集まり、ステージに用意されたセットには実に9組の“ターンテーブル演奏者”が就き、各々が趣向を凝らしたオリジナル・セットを披露。その指先でこの“音楽の歴史を変えた名機”=SL-1200に改めてPeaceを贈ったのだ。

 マスターズ・オブ・セレモニーは、夜な夜なブラック・ミュージック・ファンを驚喜させているJ-Waveのホットなラジオ番組「ソウル・トレイン」でもお馴染みのRyu。まず登場したトップバッターは、オリジナルなジャグリングで知られるターンテーブリスト=DJノザワ。海外でのDJバトルの経験もあり、シンゴ02との活動でも知られる彼の“世界観”の滲み出たセットに続いては、最近では瘋癲のリミックスも手掛けている西のドープ鮫ことDJシャークが登場。あのバンバータをも唸らせ彼のウェブ・サイトでも紹介されたシャークの姿にはビート・ジャンキーズの面々も思わず“見入って”いた。そして、東洋人としては初の“DMC世界大会3位入賞('93)”を果たした事で世界的に有名なGMヨシが、ボディ・トリックを交えた魂心のルーティンを披露し会場を大いに盛り上げる。

続いての登場はDJムロ。ヒップホップ〜ファンクのセットで、“キング・オブ・ディギンならではのテクニック”の数々を見せつけた後には、カシ・ダ・ハンサムやK.O.D.P.のMC達のライヴ・セットに。その熱気は次のマイティ・クラウンに引き継がれた。Nas「God Self Your Gun」のダブから、モンスター・リディム "Diwali" でのウェイン・ワンダー「No Letting Go」まで沸かせる要素でいっぱいのレゲエの楽しさをコンパクトに、しかもダイナミックに伝えたプレイに続き、スクリーンに映し出されたのは映画『スクラッチ』の予告編(劇場公開されてます)。

そして日本のヒップホップDJの草分け的存在で、日本とUSシーンの掛け橋的役割も担ってきたDJユタカは、「俺達がヒップホップを続けていけるように」と故ジャム・マスター・ジェイへのオマージュを込めたランDMCメガ・ミックスで会場にいる全ての人間にメッセージを送り、また“ターンテーブル・アーティスト”として世界を繋げる真のヒップホッパー=DJクラッシュは、自分にとってのヒップホップを寡黙に語って聴かせた。

 ここで暫しのブレイクが入り、クール・ハーク、グランドウィザード・セオドロといったオリジネイターやQティップら海外のヒップホップ・グレイツからの祝福映像が振る舞われ、オオトリのUSゲスト=ダイレイテッド・ピープルズ(初来日!)のステージへ。最強のライヴDJ=バブーをバックに手ヌキ一切ナシの迫真のステージで会場の温度をアゲまくる2MC=ラッカ&エヴィデンス…。

そして、当初は告知されていなかったスペシャル・ゲスト=ビート・ジャンキーズ(レトマティック、J-ロック、メロ-D、そしてバブー。4人揃っての来日は初めて!)がターンテーブル・バンドで更にクラブチッタをヒート・アップさせる。何しろ、このコラボ=“ダイレイテッド・ジャンキーズ”が生で再現されたのは世界でもまだ二回目、とのこと。ダイレイテッドはその後もキッチリとトリの大仕事を務め上げ、イヴェント終了後も会場に残るファン達のサイン攻めに笑顔で応じていた。その“光景”にもこのイヴェントがどれだけ意義深かったか、というコタエが出ていたように感じられて仕方がなかった。