なんと共和党の中間選挙での圧勝で、益々、軍事国家としてイジメを続ける米国ですが、北朝鮮のミサイルに怯える前に、イジメ・エキスパートをテキサスの石油屋をはじめとする、この共和党の党首達含めて、カウンセリングを行うことを要請したい。その暴力と権力の縮図が、残念ながらヒップホップ界に打撃を与えた。

ヒップホップ・コミュニティ以外でも、我々の多くに影響を与えたランDMCの担ぎ頭、ジャム・マスター・ジェイが、10月30日、凶弾に倒れたニュースは、もう届いているだろうが、この事件が、呼んだ波紋は大きく広がり、ヒップホップを含めた我々の生活を脅かす。

この事件について、本国では、ガセネタ紛いな憶測と、噂話が、平気でタブロイドはおろか、マトモとされていた各メディアで流れている。再び、これをネタにヒップホップをネガティヴなものに仕立て上げようとしている。確か、NWAがギャングスタ・ラップをアメリカの中流階級に紹介されたのもブッシュ政権だった…。

●今月の引退劇
 面白おかしく書ける事じゃないのですが、ランDMCが引退を表明した。11/6のジャム・マスター・ジェイのメモリアル・サーヴィスでの会見で、その胸中を伝えたランのコメントによると、現時点でジェイなしでの活動は考えられないし、彼無しのランDMCはありえないとの事で、最初のショックから醒めていないのは隠せない感であった。

メモリアル・サーヴィスには、ジェイの遺族、ランDMC、ノーティ・バイ・ネイチャー、スピンデレラ、ラッセル・シモンズ、デフ・ジャムのリオー・コーエン、アド・ロックなどのヒップホップ・コミュニティからの代表格から、ジェイを個人的に知る地元クイーンズが参列。生前の彼の人柄が偲ばれた…。

●今月の訃報
 今でも彼等のルーティーンを、ジュラシック5やモス・デフなどが受け継がれている、コールド・クラッシュ・ブラザースのマニー・レイが10/4、ひっそりと他界していた。喪主の彼の奥方のコメントによると、長らくガンを患っており、38歳だったそうだ。多くのメディアでは取り上げられなかったが、丁度11月7日から開催されたズールー・ネイションのイヴェントでは、彼を偲ぶ発言やゼスチャーが見られた。ご冥福を祈る…。

●今月のバトル
 11/4日のFM局、パワー105のイージプトのショウに出演した、ビッグ・パンの未亡人、リサ・リオスが、ファット・ジョーが未払いのロイヤリティを着服していると糾弾。放送を聞いていたジョーからスタジオに電話が入り、ライヴでののしりあうというラジオ版のジェリー・スプリンガとなった。この番組も議論が熱くなり過ぎ、生放送を中止するという落ちまでついた。

未亡人は最近、ビッグ・パンの生前の映像を中心としたドキュメンタリーをリリースしたばかりで、パンが彼女に暴行を加えているフッテージなどが含まれており、批判を受けていた事に対しての回答という形で出演した模様。ラジオの生放送では、細かい金額の話や、パンが暴力的で決して良い夫ではなかったという内容だったが、ジョーが反論に出たが、未払いについては事実らしく、自分が責任を持って支払い、その小切手も一般に公開すると約束していた?

●今月の新企画
 既に、レスリング、いや、実際はもうタイ・アップ済みのボクシングだが、ラップ・コンサートとバトル・ロイヤル形式のへヴィー・ウェイトのボクシングが合体したイヴェントが実現する事になった。

ボクサーは、イタリーのパウロ・ヴィドス以外は全部アメリカ人で、ティム・ウィザースプーン、ジェラルド・ノブルス、モリース・ハリス、デリック・ジェファーソン、ジェレミー・ウィリアムス、レイ・オースティン、アンソニー・トンプソンの8人で、決して世界チャンプとは言えないメンツだが、ラッパー勢は、ジャム・マスター・ジェイ殺しの渦中の人、50センツ、イーヴ、イグジビット、クラム・スナッチャーと見事なメンツである。

ボクシングの合間にラップするという企画らしいが、個人的にはラッパー同士のボクシングが見たい。前にも書いたが、エヴァーラストとエミネム(ウェイト・クラスが違うけど、エヴァーラストは、ハンデで、片手でも勝てると思う)、50センツとジャー・ルールとかさ、それなら金払ってみたいと思うけど、どう?

●今月のブロードウェイ
 教育問題から経済界への進出など、世の中で一番忙しい男、ラッセル・シモンズのヴェンチャーの一つ、デフ・ポエット・ジャムという、新旧の詩人、ラッパーなどをフィーチャーするTV番組があるのだが、そのブロードウェイ版が、本当にNYのブロードウェイ街に登場する事になった。

TV番組では、モス・デフ、ラキム、キース・マリー、エリカ・バドゥ、ラスト・ポエッツのフィリップ・フェルシアーノ、ソニア・サンチェスなどが出演済みだが、内容が無くなったラップを嘲笑うかの様なハイ・ブローな内容だ。ブロードウェイ・ヴァージョンは、DJが合間にまわし、東洋人や白人を含むミックスのキャストになる模様。ロングエイカー・シアターで、11/14から月末まで続く模様。英語に自信があれば、見ることをお薦めしたい?

●今月の写真
コールド・クラッシュ・ブラザース


沼田 充司
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DJ/プロデューサー。
レーベル<ブダフェスト>主宰。
雑誌『ブラスト』でも執筆中。
ニューヨーク在住。
(Photo by Tiger)