日本のダンスホール・レゲエのオリジネイターにして今なお現場ではかかすことの出来ない顔、ランキン・タクシー。久々のアルバム『エイ ヨー ヤロオ』のリリースを目前に控えた彼にインタヴュー。本文とは関係ないけどケガ早く治して下さい。


●久々のフル・アルバムですね。
Rankin Taxi(以下R):今回の話は、最初にテレビの番組からソカの曲(本作収録、8曲目の「タワワ・ギャル・ソカ」)が出ましたよね。そこからつながってきているアルバム制作なんで。
 まず今回は、オレがまだ天才である事を示そうと(笑)。枯れてない事をまず示すんだぞと。最近はもう、MCばっかりやらされて…歌っても良いMCみたいなのばっかりなんで。アーティストとして、そして皆さんの中の好みが最近とみに片寄りがあるのではないかと、レゲエが持っている自由度の中でね。で、俺の方が自由だぞ、そういう考え方も出したいな、作品としてね。

そう思った訳です。若い人達と同じ事を演って張り合う気は無いし…いや、実はあるんだけどね。ケイプルトン、シズラ位の迫力を出したいと。なんですが、あの迫力で歌いたい事が無いな、今は。うーん、それにオレの声のキャラも怒りとか、激情を歌うキャラじゃないし(笑)。それじゃあてんで、今持っている自分のキャラで素直にやったら変化球になった、そんなアルバムです。素直にまっすぐに投げたら、ストンと沈んだという様な球を投げようと。そうして出てきたアルバムだね。抽象的に言えば。

●そうは言っても、デビュー以降、ずっとそのスタイルですよね。
R:そうだね。ずっとクセ球をほおっている。でもそれがいいんじゃねえか。|

●全体を聞いてみての印象なんですが、昔から変わらないスタンスですよね。それと歌いたい事がこれだけ一杯あるのはズゴイですね。
R:オレは真面目だからね。歌いたい事一杯あるし、枯れてないね。歌いたいテーマを考えているうちに、あと20曲分位のアイデアが出てきちゃってね。それは、次にとってあるけど。醸造して、醗酵させてます、今ね。

●宗教モノと、性差別モノ以外は大体全てこのアルバムに色々なトピックが入ってますね。
R:前に宗教モノは沢山出ているしね。「オイコラ、神様」とかね。最初のアルバム出してもう11年位経ってるから、また同じテーマで歌い直してるっていうのも出来るしね。ジャマイカでリズムを使い回すように歌詞も使い回せるんじゃないかと。時間が経過している分、色々発展してるしね。ただ、声だけは50歳に近いってのに渋くならないけど。これは課題ですね。

●でも9曲目、「金融パニック」は渋いじゃないですか。
R:あぁ、あれは沈んで歌ったからね。「子供は飢え死、親父は首吊り」の部分はカットされたんだけど。女は出稼ぎ、外国人は帰って行く、そんな歌に本当はしたかったんだけど。でも、そしたらお笑いでしょ。プロデューサーがシリアスなのにしたいって言うから。そんなのオレのキャラじゃないんだけどね。でもチャレンジする意味はあるけど、新境地にはね。

●社会ネタは相変わらず、鋭いですね。質、量、共に。
R:でもね、これから社会ネタは考えちゃうね。現場で使えないからね。だから現場で使える社会ネタは限られてくるし。エンターテイメントとエデュケーションてあるレベルでの融合はあるんだけどね。どうしてもヒクヒクしちゃうというか。笑いは毒を持ったものだから。どうしても誰かを傷つけちゃうものだからね。そういうのと論理をつきつめたエ
デュケーションとはどうしても一緒になれない。どっかで諦められないと。

●それでも全15曲、色々なタイプの曲が揃っているのは素晴らしいですね。
R:ヴァリエーションと、ストーリー、そしてテーマを色々考えて。だから全体に聞きやすいっていうかな。

●現場仕様のものばっかりじゃしょうがないってこともありますしね。録音物を新しく作るという意味で。演りたい事が一杯ある人には、ですよ。
R:多様性は大事だからね。パフォーマンスに対応した曲作りはしなきゃとは思っているけど。現場でのね。理想論を言うとキリがないけど。

●ゲストのダニー・ドレッドや制作サイドに久々の顔が何人かいるのも嬉しいですね。
R:だってオレのアルバムが出るのが久し振りなんだから、当り前じゃん。

 この後もインタヴューは続いたのだけど、もう字数が…。もっと面白い話もあったのに…。でも、本作の方がもっと面白いので、ぜひ聞くいてみて下さい。







10月の自転車事故後の姿。左の写真とは打って変わって痛々しいが、驚異的な回復力でもって今はかなり元気。さすがタフなランキン。