今までフューチャリスティックなスタイルを追及してきたミッシー・エリオットだが、最新アルバム『Under Construction』では意外にもオールドスクールに回帰した音作りになっていた! この謎を解くために、「The Mix Show Power Summit」というコンベンションの為にプエルトリコに来ていたミッシー・エリオットに直撃インタビュー! PVや作品中での強烈なインパクトとは裏腹に、実は大人しく落ち着いていて、謙虚な姿勢のミッシー・エリオットの言動を最後まで読破し、HIP HOP文化を開拓した人々に対する敬愛の念を再燃して欲しい。

随分やせましたよね! 先行シングル「WORK IT」のジャケッ
トも“かわいくなった”って評判ですよ。
Missy「ダイエット中なの。でも、しょっちゅうズルしてるわよ。ほら、こうしてピーナッツ味のM&Mがやめられないし(とちょっと自分に呆れながら机のM&Mを指差す)」

じゃあ、“スタジオにM&Mとジンジャーエールがないと怒って帰っちゃう”っていう噂は本当なんですね?
Missy「そう。絶対不可欠よ(笑)」

では、早速ですが今回のアルバムの内容について質問開始します。先ほど聞かせていたアルバムはオールドスクールに回帰した
感じで、本当に感動しましたよ。今までフューチャリスティック
なスタイルを追求していたのに、どうして原点に帰ろうと思ったのですか?

Missy「私にとって、今のヒップホップってテンス(張りつめている)と思うわけ。昔のラップ・バトルはどっちかと言うと、“俺の方がお前よりライム・スキルが上だ”とか、“俺の方がもっとドープだ”とかいうものが多かったけど、今は気に入らないと“お前の家に行ってガキを撃ち殺してやる”とか過激になってるでしょ。

これではまるで今までヒップホップを築き上げてきたパイオニアの人たちに感謝するどころか、反対にディスしているように思うの。これまでヒップホップ・ミュージックがコミュニティを活性化させてきたし一体感を生み出して楽しくやってきたわけでしょ。ストリートでお互いライムでバトルとかしても問題とかはなかった、そういう昔のヒップホップに戻れたらいいなと思って」

ミッシーにとってオールドスクールのスーパースターって誰?
Missy「ラキーム、ビッグ・ダディ・ケイン、ソルトン・ペパ、MCライト、MCシャン、その他にもたくさんいるけど、昔のオールド.スクールのアーティストみんなよ」

今回サンプリングやカバーをしているオールドスクール・ネタの選考基準は?
Missy「ヒップホップ・コミュニティでよく知られているレコードということが一番大切ね。その音を聞いたら誰でもわかるっていうのが基準」

声の出し方も今までに無い感じのものに挑戦していますよね。「Gossip Folks」は特によく分かる。
Missy「そうなの。新しいことに挑戦してみたの。いつもクリエィティヴであるためには、リスクが大きいとしても新しいことをしようっていう主義なの。曲の頭のところで3人が喋ってるシーンとか、声は全部私がやってるのよ」

えっ! いろいろ声が出るんですね! まるで音楽界のエディ・マーフィーですね(笑)。
Missy「あはは、Let me get some Eddie Murphy money !!(エディ・マーフィー級のギャラ頂戴よ!!!)」

同曲は好き勝手にゴシップを作り上げ言う人を攻撃する曲ですが、実際に好き放題言われた経験は?
Missy「人ってとんでもないこと言うわよ。最後のほうに入ってるけど、“I Ain't Even Think Of Her Be Pregnant By Michael Jackson No More(ミッシーがマイケル・ジャクソンの子供を生むといった噂のこと)”とか信じられないようなこと言われてるの。私とジャネットとはすごく親しいけど、マイケルとは一度も面識はないのよ。人って何を言うか、本当にわからないわ」

「Pussy」は衝撃的なリリックでしたね! 聞き取れた部分だけでも、「彼にとって私のPussyは最高だから、他の女に行くわけが無い」なんて言っているし。
Missy「衝撃的でしょ(笑)。アルバム中、必ず一曲はこういった生々しいものをやるようにしてるの。女性ならみんな思い当たると思うわ。でも私は必ずしも男と女はセックスだけで結びついているわけではないと思っているから、これが正しい方法ではないかもしれないけど、人間も動物だからそうした現実ってあると思うの。そういう意味でリアルな内容だと思うわ」

あと気になった曲は「Can You Hear Me」。これはTLCと一緒に、アリーヤなどに対する追悼曲でもありますよね…。この曲について話してもらえますか?

Missy「(気丈に真っ直ぐと向きながら)私たちのファミリーがアリーヤを失った時、チリとティオン(T-ボズのこと)が“何かわたしたちにできることがあったらいつでも言ってね”って暖かい言葉をかけてくれたわけ。そうしたら偶然にも彼女たちと私たちは同じ立場になってしまったでしょ。それで、この曲をやるときに、大切な人を失った彼女たちにしか、私の気持ちはわからないと思ったの。それで、この曲に参加してもらうことになったの。

リサに対する追悼の気持ちももちろんあるけど、私は彼女のことはそれほどよく知らないの。それでチリとティオンに彼女たちの気持ちを表現してもらうことにしたのよ。アリーヤとは本当に家族みたいにつきあってから何でもよく知ってるわ。

これは、曲というよりはアリーヤに語りかけてるの。“Hey, Aaliyah I've Been Checking On Your Mom & Dad.....(アリーヤ、お母さんとお父さんに言いたいことがあったら伝えてあげるわよ)”。そして、私が彼女のお母さんに向かって、“いつかまた彼女に会ってあの美しい笑顔を見ることができるわよ”って言ってるの。だから、チリとティオンにやってもらうのが相応しいと思ったの」

ところでアルバム・タイトル『Under Construction』(直訳で工事中の意味)ってどういう意味でつけたの?
Missy「自分を立て直すという意味で付けたの。自分の体、ソウルをもう一度新しくする、っていう意味なの。アリーヤが亡くなって、すぐそのあと911(同時多発テロ)があったし、人生はパーティーばかりじゃないってことに気が付いたの。生まれ変わる必要があると感じたの。別に顔のシワとりの整形をするとか、そういう変化じゃなくて、もっと内面から変わる必要があるでしょ。まさにヒップホップ・シーンに必要なことね」

なるほどね。ところで来日予定は無いのでしょうか?
Missy「まだ日本には行ったことないんだけど、アリーヤが凄く日本のこと好きだったのよ。黒のレザーのパンツとかも日本で買ってきた、とか言って嬉しそうに見せてくれたの。彼女が“絶対、日本に行くべき”とか言ってたの思い出すわ。私は飛行機が嫌いだけど、言ってみたいって気になったもの。こうなったら是非、行くようにがんばらないとね」
(インタビュー&テキスト/柾虎)