間違いなく今年の日本のレゲエ界、いや音楽界の中で客演大賞受賞予定(?)のCorn Headが、ついにファースト・フルアルバム『Da Corn Head』をリリース。長年現場で培ってきたそのスキルを見事に出しきった熱血アルバムだ。早速インタビュー。

 「今回のフルアルバム『Da Corn Head』の存在は、俺にとっては“中間点”だと思うんですよ。中間点って言っても、人生の半分っていう意味じゃないですよ。ひょっとしたら半分以下かもしれないし、ひょっとしたら半分を超えちゃってるかもしれない(笑)。ある意味、このアルバムは今までやってきたことの“ベスト”、っていう感じなんですよ。今まで俺がガキだった分、昔の曲は書き直したい部分もあるんですけど、やってきたことに後悔をしたくない。だから、次のアルバムで、もっと今の俺になっていると思う」

 Corn Headが満を持してリリースしたファースト・フルアルバム『Da Corn Head』についてインタビューしようとしたところ、セキを切ったようにこう熱く語りだした。普通、アルバムのプロモーションではアルバムについてのトークに専念するものだが、どうも彼の人生で何かが変わりだしている節目にあるようで、早くもすでに次の制作意欲に火がついているようだ。一体何が彼の身で起きたのか、聞いてみた。

 「最近付き合っている彼女に、“なんで俺、あんまシングルのセールスが伸びないだろう…”って言ったら、“意味を直球に伝えようとし過ぎている”って言われたんですよ。さらに、“N.G. Headとかだったら、逆に秘めたものがあって良い”って。それですごく考えるきっかけを与えてくれた。最高の彼女だよ。そうやって指摘してくれる人に囲まれて、毎日色んな人に怒鳴られたりもするけど、どうにか考えて結果を報告するようにしているから。それで考えたのが、俺は今までストレート過ぎたけど、俺自身だけの言葉で突っ走るのは嫌だ。俺の言葉に対してお客さんから反応が返ってきて、ようやくひとつになるものをこれからは提示していきたい」

 ここまで書くと、本人が最新アルバムに対して不満があるように聞こえてしまうかもしれないが、そういうわけではない。彼がどうも不満に思っているのは、現在のレゲエ・シーンにあるようだ。実はインタビューの大半がシーンに対する辛辣な言葉だったのだが、そこの部分は掲載すると大変なことになりそうなので割愛しながら、一番彼が言いたかったことをまとめてみた。

 「今、オモテでやっている奴らが嘘ばっかで、リスナーサイドがわけ分からなくなっちゃっていると思うんだよね。レゲエをやる人間は常にリアルでいて欲しい。けど、そんな不満を言っていてもしょうがないから、俺たちが頑張って名前を上げていくしかない。そうすれば、そんな変なやつらが出てくる隙が無くなると思うんですよね。リスナーの人たちはチャラチャラしたやつらを見て、“かっこいい。真似したい”と思ってしまっているのだから、目を覚まして欲しい。

‘Wake Up’っていう曲は、Moominとやっているんだけど、そういった“目を覚まして欲しい”っていうメッセージが入っているから、聞いて欲しいな」

 この「Wake Up」のビデオはモノクロで仕立て上げられており、一見クールな映像なのだが、ところどころでリリックとは全く関係ない、爆笑を誘う驚く仕掛けが用意されているので必見である。驚きはそこだけではとどまらず、重要無形文化財総合認定保持者、要するに人間国宝である大倉正之助氏がイントロと「Young Generation 2002 Ver. (feat.Rude Boy Face)」に参加しているのである!

 「大倉正之助さんは狂言の世界で人間国宝になっている人で、狂言の世界には和泉流(和泉元彌で注目された派閥)と大倉流しかないんだけど、この人はもちろん大倉流の偉い人で、たまたま俺のマンションの上の階に大倉正之助のマネージャーさんが住んでて、知り合ったんだよね。俺のCDを聞いてもらったら、すんなりオーケイが出て、オープニングから和太鼓を演奏してもらった。とにかくオーラみたいなのがスゲェって感じでしたよ。声が凄い迫力で、スタジオで同じ空間にいたんだけど、俺には絶対に真似できないものを感じた。何が凄いかって、具体的に言い表せないけどね。しかもバイカーらしくて、革パンと先の尖ったブーツを履いてきて、その格好にも飛ばされた(笑)」

 彼の代わりに、レゲエ界の“重要無形文化財指定”に選出されること間違いなしのアルバム全体に関して解説を加えておくと、Ryo the Skywalkerとの「Guerrilla Monster」、Bamiudaとの「Music Lover」、Boxer Kidとの「Jenny」(“銭”の意味)などはHome Grownによって装いも新たになっており、実に新鮮だ。また、本人が一押しなのはシングル「Tequila 〜みんなDay〜」に収録されていた「Dance Hall Night(feat. Zebraman & Kose)」で、どれもCorn Headのライフスタイルが純度100%で濃縮された一枚となっている。

 「Mighty Jam Rockのアルバムに入っていて局地的な広がりを見せていた曲とかもあって、地方によって盛り上がる曲が全然違うのも面白かったけど、このアルバムで知らなかった俺も面も知って欲しいと思う」

 そんな彼に関して、絶対に見逃して欲しくない動きがもうひとつある。それは、自分の周辺にいる仲間たちの作品をリリースするために立ち上げた自身のレーベル、Mad Dragonの経営者としての顔だ。

 「前にMad Dragonのアルバム『Mad Dragon Ver.1』を出したんですよ。それのHip Hopリミックスが、俺のアルバムと同じくらいの時期にリリースされるんですよ。リミックスしたのは2PacのエンジニアとかやっていたロサンジェルスのDJアリバドっていう人なんですけど、Eminemのスタジオを使わせてもらってやりました。

俺がどうしてこういったレーベルの運営をやっているかというと、俺だけが上がっても意味がないから。俺一人で生きていればそんなことしなくても良いけど、絶対にそんなことはありえないし、辛いときも協力し合ってきた仲間から。俺も運営するために自分をマネージメントしてくれている事務所、No Brandから借金してレーベル運営していて、マジで大変だけど、俺はひとりで生きているわけじゃないからさ」

 こう言い放った彼の顔は、ステージで見せる笑顔と同じぐらい輝いていた。これからまだまだアーティストとしても人間としても伸びていくだろうCorn Headが、自ら“中間点”と言い切るアルバム『Da Corn Head』を聴けば、心中の何かが動き始めるはずだ。