と言うわけで、今年も行ってきましたサウンド・クラッシュの秋の祭典「ワールド・クラッシュ」(10月12日/ニューヨーク・クイーンズ/クラブ・アマズウラ)! 5周年を迎えた今年のテーマは“The Search for New Blood”、そう、新しいサウンドを発掘するということで、日本のレッド・スパイダーをはじめ4つも初参加のサウンドが登場するフレッシュな大会。で、その結果は如何に…。

 まずは今年の参加サウンドとルールを確認しておこう。くじ引きで決まった登場順に紹介すると、説明不要のトニー・マタロン→トリニダット代表のマキシミニア→カナダ代表のレベル・トーン→キラマンジャロ脱退後初参加となる御大リッキー・チューパ→レペゼン・ニューヨークのキング・アゴニー→日本代表レッド・スパイダー→トリは昨年度優勝のベース・オデッセイの計7サウンド。ルールは第1ラウンド(10分)→第2ラウンド(8分)を終了した時点の判定で3サウンドが脱落。罵声、悪口禁止の第3ラウンド(5分)終了時点で再び判定で1サウンドが脱落。

そして残ったサウンドで、ダブ禁止、レコードのみの第4ラウンド(5分)→10曲対決のチューン・フィ・チューンの第5ラウンドを終了したところで最終判定、優勝サウンド決定という流れ。そして、今年は5周年という事を記念して色々なアワードの表彰も行われたが(マイティ・クラウンも2部門で受賞)、その中で“ベストDJ”に選ばれたエレファント・マンが今年の司会進行役。

 各々のサウンドがプレイした曲目等に関しては字数も無いので、詳しくは出回るであろうカセット/ビデオ等でチェックしてもらう事にして、まずは第1ラウンドだが、例年通りに固く厳しい客を前に各サウンドとも大苦戦。先陣を切ったマタロンも今ひとつな立ち上がりで、初参加組はどれも何も出来ない状況に陥り、「この夜は俺のためにある」と豪語したチューパにいたっては、なんとプレイバック/2度掛けという大ミスを犯し大ブーイング。そのブーイングに対して「先に誰かプレイしたって? 俺は聴いてない」と開き直って、さらに大ブーイングのドツボ。オデッセイだけが客を掴んでかたちで終了。

 続く第2ラウンドは、依然として波に乗り切れないマタロン、苦戦のスパイダー、前ラウンドを引きずったチューパに対し、巻き返しに出たマキシミニア、レベル・トーン、アゴニー、そして王者の貫禄を見せつけるオデッセイという感じで終え、初判定へ。スパイダー、チューパの脱落が決定し、多少揉めたがマタロンもここで脱落。戦前の予想では本命候補であったチューパ、マタロンが早々と姿を消すという意外な展開に。

 第3ラウンドは、1回目の判定を勝ち抜いた事で重圧から解放されたか、初参加組も健闘を見せるが、オデッセイも踏んばり、結局判定でマキシミニアが脱落。さらに罵声等禁止のルールを守らなかったとしてアゴニーも脱落させられる。

 結局、レベル・トーンとオデッセイの一騎討ちという事になったが、このレベル・トーンはなんと使用するのは全部CD、一人でCDJを駆使してプレイするニュー・スタイル。「色々言う奴もいるが、このテクノロジーを使わない訳はねぇだろ」と言い、また「始めた時にはチューパに憧れたのになぁ」と笑い飛ばし、“New Blood”=若さを前面に打ち出し、対オデッセイと言うよりも「新世代対ヴェテラン」の図式を巧みに利用して最後まで流れを掴んで行く。ただ、一発逆転のチャンスが大いにあったオデッセイがチューン対決の後半には戦いを放棄した様な態度を見せたのも幸いしただろう。結局、圧倒的と呼べる程の強さを見せるには至らなかったが、会場の空気を味方につけたレベル・トーンが優勝をかっさらう結果となった。

 個人的な感想としては、これまで通りにエンタテイメントとしては最高に面白かったが、やはり時間的にも7サウンドというのは、各々の個性をしっかりと判定するにはやや多かったかと。あとエレファントは司会には向かないという事。また、スパイダーに関しては、ジュニアの「難しかった」との感想の通り、直面した課題もあるだろうが、オショーの「いい経験になりました」の言葉の様に、この貴重な経験、財産を今後の活動にどう表していくのかに大いに期待したい。