メガ・ヒットとなった「It Wasn't Me」、「Angel」を収録し、全世界で1,100万枚を超える驚異的な売り上げを記録した『Hot Shot』から約2年、今や押しも押されぬポップ・スターに上り詰めたシャギーが待望の新作『Lucky Day』をリリースした。前作と比べ、よりレゲエが強調されたこの新作について、来日した本人に話を聞きに行った。なお、インタヴューには、本作にもフィーチャリング・アーティスト、コーラスとして全面参加したブライアン&トニー・ゴールドも同席してくれた。


●前作があれだけ売れた後だけに、新作へのプレッシャーはありませんでしたか?
シャギー(以下S):いや、プレッシャーという意味では前作の方が全然強かったよ。だって、あの時は生きるか死ぬか、売れなきゃ飯が喰えなくなるって感じだったからネ。今回はそうしたプレッシャーとかはなく、もっとリラックスして取り掛かれたよ。

●前作よりもレゲエ度が強まったように思うのですが、どうでしょう?
S:確かに戻ったよ。よりオーセンティックでハードコアなスタイルのレゲエが強調されたものになっている、勿論シャギーらしいポップなヒネリもしっかりとあるんだけど。これはさ、これまではメイン・ストリームのラジオ局とかで曲を流してもらうには、そうしたハードなタイプのレゲエでは流してもらえないから、有名な曲のカヴァーとかサンプリングを入れたものを作って、例えば「Angel」ならスティーヴ・ミラー・バンド(の「The Joker」)みたいに、それで何とか曲を流してもらうようにしなきゃいけなかったわけよ、でも、まぁ1,000万枚以上も売れると、多少は状況も変わるだろうし、そうしたものでなくても自分の曲なら流してくれるだろうし、やってもいいだろうってネ。前作の成功で少しは自由に自分の音楽を作れる状況を獲得出来たということさ。だから、新作のテーマもカヴァーとか、サンプリングとかを使わなくても、俺達がいかにクリエイティヴであるかということを証明するということだったんだよ。

●「俺達」というのは、ご自身が運営されているレーベル〈Big Yard〉ですよネ?
S:そう、俺とロバート・リヴィングストンでやっているものだ。ロバートはプロデューサーでもあり、マネージャーでもある。あと〈Sting Intl'〉のスティング、クリストファー・バーチ、デイヴ・ケリー、アーティストではレイヴォン、リックロック、そしてここに居るブライアン&トニー・ゴールドとか。みんな個々の活動もしているけど、俺の仕事の時はこうした面子でもう10年以上一緒にやっているよ。まぁ、俺がフロント・マンかもしれないけど、いつも支えてもらっている仲間だし、他の奴がフロントに立つ時は俺が支える側に回るって感じでいつも一緒さ。レイヴォンも新作を出したし、ブライアン&トニー・ゴールドのアルバムももうすぐだ。

トニー・ゴールド(以下T):もう8割ぐらいは出来ているよ。ジャマイカで出している7インチをまとめたものではなくて、全部新しく作っているものだ。プロデューサーから渡されたトラックに合わせて作るというよりも、トラックも含めてみんなで一緒に曲を作っていくという作業だネ。うん、楽しいよ。

●ニューヨークとジャマイカの合同チームですけど、そこに違いってあります?
S:いや、全然。どっちも変わらないよ。俺自身ニューヨークのアーティストだけど、ジャマイカ・シーンのアーティストでもあるわけだし。みんな行ったり来たりで、どちらも優れているということで変わりはないよ。

●じゃあ、今作もこの面子で?
S:うん、これまで通りネ。ニューヨークの〈Big Yard〉のスタジオと、俺の自宅地下のスタジオで、4週間で仕上げたよ。そう、たった4週間(笑)、ホント「4週間のアクシデント」、奇跡さ!(笑)
ブライアン(以下B):僕らがスタジオに入った時にはもう殆ど出来上がっていたんだ。ホント、一気に出来ちゃった感じだネ。

●ゲストでバーリントン・リーヴィも1曲(「Full Control」)参加してますネ?
S:自分の頭にあったフレーズをレイヴォンとか他の人にも歌ってもらったんたけど、なんかしっくりこなかったら、デイヴ・ケリーが「バーリントンならピッタリだ」って言って、ジャマイカから来てもらったんだ。まぁ、レゲエの世界は狭いから、みんな仲間みたいなもんさ。おかけで良い仕上がりになったネ。

●これまで通り、女の子やセックスをテーマとした曲が多いですけど…。
S:そりゃ、俺はそれでここまで来たんだぜ。でも、ホント、女ってのは素晴らしいんだから。女ってのはねぇ…(以下、女性賛美を延々と…省略)。

●えー、時間も無いようなのですが…。
S:とにかく今回の作品は全曲気に入ってもらえると思うんだ。誰もがボブ・マーリーのアルバムに好きの度合いは違うにしろ、嫌いな曲が一曲も無いのと同じように、全部気に入ってもらえると思っている。あと、これまでのカヴァーとかサンプリングのイメージをこの作品でそれを打ち破るというか、アーティストとしての成長を感じてもらいたいと思うよ。あとツアーもヨロシクって感じかな。

B:そうだね、そうした成長を感じてもらいたいネ。
T:ところでさぁ、ブライアン&トニー・ゴールドは日本でも人気あるのかな?

 インタヴュー・ルームにブライアン&トニー・ゴールドとは全く対照的にフワフワした髪型と洗練されたファッションで登場したシャギー。リラックスしつつも、その様子はポップ・スターとしての自覚と自信に溢れていた。しかし、同時に、パトワ混じりに「俺はニューヨーク・シーンのパイオニアの一人」、「今でもサウンド用のダブも録っているさ、俺はずっとそうしたシーンの一部なんだ」とハードなレゲエDJとしての気構えも覗かせる。

新作『Lucky Day』にはそうした二つの居場所を持つ現在のシャギーがそのままに表れた内容と言えそうだが、何よりも、レゲエDJとしての、また自らの〈Big Yard〉としてのオリジナリティを追求することでメイン・ストリームに挑戦していこうとするシャギーのその心意気に惹かれる。そう、シャギーはそんなに“遠く”には行ってはいない。