10月中旬、デタミネーションズのヴォーカルであり、ムードメーカー、いや、宴会座長の高津直由が東京にやってきた。何度かデタミのライヴを見ているが、「良かったねえ!」というライヴは高津の調子に負うところが大きいように思う。デタミのコンサートはすごく宴会に近いと思うのは俺だけか。オープニングで「まいど!」みたいな挨拶があることが多い。これでいきなりその夜の宴会参加者は「ヨッシャ、楽しませてもらうで!」となる。他人に人一倍気を使ううえに、シャイでサービス精神が旺盛な男だからデキ不出来が結構はっきりする。だが、俺が今いちだったと思うライヴでも、そんじょそこらのライヴとは格というか存在が違うんだから個人の趣味の問題かもな。

 人の多い午後の原宿。コンドーム屋近くの喫茶店で待ち合わせると、意外にもニコニコしながら高津がジュースなんぞを飲んでいる。まあ、居酒屋にはちょっと早い時間だったし、ビールのある所で待ち合わせでもしたら、「石井さん、Skaってなんなんスカ?」といつものように逆にくらわされてしまいかねない。こいつの質問はいつも深い。だから、へたな答えができない。こんな奴にうちの編集長オーバからインタヴューをやっつけてこいという指令だったから、「おう軽いぜ」と言って出ては来たけど、オーバの渡したテレコにはテープが入ってねえ。よーするに覚えてこいってことなんだなと仕事は後回しにして、今日がオープニングの「こだまの木」というこだま和文をモチーフにした仁礼博カメラマンの写真展会場であるBeams Tギャラリーに二人で行ってみた。

 そういえば昨年の桜満開の頃、高津君が俺の家に泊まりに来た。なんと偶然に、その日も同じ仁礼君がスカパラの写真展をやっていたビルの2階だった。その時、高津君を仁礼君に紹介したのだが、それが今では仁礼君はレコード会社から頼まれて大阪までデタミを撮りに行ってるというから不思議な縁だ。

 開場にはまだ早すぎて写真を展示中だったが、取りあえずビールなんぞをゲットしつつ、既に到着していたこだま君としばし談笑。気がついたら、リトテンのビッグバード、トキ、ロッキング・タイムの鉄人、ヤビーこと薮下君、エゴ・ラッピンのよっちゃん、スカパラの川上君、ドラヘビ一派、ホーム・グロウンのタンコ、カメラマンの石田昌隆さん…あ〜覚えてねぇな…というくらいたくさん来ていた。

 で、インタヴューである。取りあえず我が家に引っ張り込んでテープのスイッチは入れたぞ、オーバ。だが、新宿のレコ屋街で買ってきたというスリーファンキーズの「でさのよツイスト」を聞き始めてしまった。俺の青春時代の曲だから歌えるぞ。そんなこたぁ、どうでもいいが、なんなのだ「でさのよ」ってのは?? そうなりゃ、俺がバーミンガムの地下室でゲットした『クリフ・リチャード・イン・スペイン』なんかも出てきちゃったりして、ついには純米酒に手が伸びはじめた。
 インタヴューだろ?オーバ。まだちゃんと覚えてるって。この時点では。しかし、このあと予想だにしない事件が。テープは廻っていた。が、レコードの爆音の合間にかすかにインタヴューの声が……。アァ。

●今度のアルバムのコンセプトは?
高津:ないんとちがう(笑)。
●前はほら、“全開の結束=Full Of Determination”とか言ってたけど? タイトルの『Chat Chat Determination』はどっから?
高津:あれは茂ですよ。アーネスト・ラングリンの『A Mod A Mod Ranglin』みたいなのをつけたかったんやね。
●ジャケットのアイディアは高津君?
高津:あれは本屋でたまたま見つけたんですよ、江戸時代の千代紙のカラーの本を。
●なかなかいいよね。曲も全員で書いてて好きな曲がいろいろあるんだけど、一番シブイのを1曲だけ選べって言われたら仁君の「Mango Rock (Shock Steady)」だね。2分30秒。今、世界中であんな曲かいてるのはあいつだけでしょ。チェット・アトキンスとリン・テイトを足して2で割ったみたいな雰囲気。アホでしょ。シングルのB面とかに絶対入れて欲しいねえ。あれは、ライヴよりレコードお願いしたいね(笑)。ヨッシーの「Capricious」なんかある意味、一番今までのデタミらしいのを書いてたりしてて面白いね。あれも好き。
高津:長いんや、あれ6分もある(笑)。(※実際は7分あるが全く長さを感じさせない)
●ところでマニアの高津くんが一番好きなシンガーって誰なのよ?
高津:やっぱりプリンス・バスターですね。あの、うまからず、へたからずですかね。最高ですね。

 翌朝、8時30分起床。
MTVをつけたら、なんと!デタミのヴィデオ「Bayon」をやっている!