イルマリアッチのDJ、トラック・メイカーとして、またツイギーやスイケンを始め多くの作品をプロデュースするなど、多忙を極める刃頭が2年ぶりにソロ・アルバム『The NEWBORN』をリリース。早速、地元名古屋の盟友であり、間もなく刃頭と新ユニット“司Tsukasa”を始動するガイディング・スターのトリガーにインタビューを試みてもらった。


●まず軽くプロフィールを。
刃頭(以下H):16歳位でDJを始めて、同じ頃にTwigyと一緒のクラスになってBeat Kicksを組んで。「さんぴんキャンプ」の時にIllmariachiを組んで…。
●長くなりそうなんで止めよ(笑)。じゃあ、音を作り出したのは?
H:DJを始めた時から4トラックのテープ・レコーダーでトラックは作ってたんですよ。最初に世に出た作品はMicrophone Pagerのアルバムで、その中のTwigyのソロで「夜中の番長と君」をプロデュースしました。95年だったかな?
●レゲエ関係との仕事も多いよね。そっちでも色々と素晴らしいミックスを聴かせてくれてるけど、レゲエの魅力ってどう?
H:基本的には両方とも何ら変わりはないと思うんですよね。成り立ちとか色んな点で似たものととらえてるし。で、日本人のアーティストに関していうと、彼らって凄く勢いがあったりやる気満々のスタンスなんで、見てて面白いし。間違いなくヒップホップをやってる人間から見ても魅力のある畑だと思いますね。
●今でもケムリ・プロダクションのメンバーでもあるんだよね? ケムリがシーンに与えたものは何だと思う?
H:ケムリのメンバーとしての動きは最近そんなにないんだけど、第三者的に見て言うんだったら、やっぱりターンテーブルでの遊び方の一つの提案が出来たんじゃないかな。大人数で…ケムリだったら5人で2台ずつターンテーブルを並べて何をやるか、どういう事ができるかっていう、その中の一つが提示できたと。
●そう言えば、Illmariachiの方はどうなってるの?
H:Tokona-XもM.O.S.A.D.とか色々頑張ってるし、お互い本当にまたやろっかて感じでタイミングがあった時にいつでも出すよ位の…。
●さて、今出てるソロ・アルバム『The NEWBORN』だけど、前の『最狂音術大全集』との違いは?
H:前のは本当に100%ソロっていう感じで。インストがメインで凄い和物を意識したんですけど、今回のは全く違う部分を表現出来たらなって。自分が今迄やって来た、通って来たものをまとめるとどんな音楽になって行くんだろうっていう。Illmariachiの1stの時のサンプリングしかしてない自分と、Krushさんの『覚醒』で参加した以降の打ち込みにのめり込んでいった自分っていうのをバランス良く融合したらどういう風になるんだろうとか、あと80年代後半から90年代頭にかけての世代の音作りっていうのを自分のフィルターを通して出来たらとかあったんですけどね。でも作ってく途中で一曲ずつそん時の感覚で面白いものが出来ればっていう凄い単純な設定に切り替わって。最終的にはこうしようとかは全く消えて…。
●トラック・メイカーの作品って事でやっぱりインストも多いけど、今回は前作以上にゲスト・ラッパーが多いね。どんな感じで選んだの?
H:これはもう単純にリスナーとしてとかトラック・メイカーとして、この人間と一緒にやったら絶対面白い事が出来るだろうっていう凄い魅力を感じる人間をピックアップしたって感じで。
●じゃあ、もうトラックを作る時にその人のイメージでやっぱり作るわけ?
H:もうズバリその通りです。誰がラップするかってのを考えてトラックを作って、それを前以て渡しておいてリリックが出来上がったらその時点でスタジオに入るって段取りで。
●そっからまたトラックをいじったりっていう作業もあるの?
H:それはもう現場で一回声を入れてみて、その上でいじるって感じですね。
●じゃあラッパーの人からこうしようみたいなのもあるっしょ?
H:勿論それもアリで。その最たるのがDeliとMikrisとやった曲で、この曲は自分の中では凄い洒落た感じで作ったトラックだったんですよ。でもいちいち説明しなくても音が語ると思ってるんで何も言わずに渡したら、出来たのが戦場のリポートとかって凄いハードなリリックで。それで急遽それ風の音とか入れたりして。
●でも、そういうのも全然OKなわけでしょ?
H:それがまた凄い面白かったですね。自分がこうと思って作った曲が、他の人間が聴くと別の答えもあるっていう。だから今回は交わる事によって知り得た領域っていうのがありましたね。
●次は俺との司Tsukasaだね。どうしよっか?
H:作品聴いて映像的なものを想像させれる様なものが作れると理想ですね。もう目をつむって聴くと、何かドラマティックなシーンが浮かんでくるとか。
●そうだな、音だけで視覚にまで刺激を与えれるようなのを作りたいね。それ以前に聴ける音楽ってのを前提にね。
H:おぉ、いいですね、それいきましょ。