昔々あるところにスキャが好きで好きでたまらない男がおりました。男は自分の少ない小遣いからせっせっとシングル盤を買い続けましたがそれでも飽き足らず、友人の家のレコード棚、挙げ句にはジャマイカのサウンドマン達のビッグ・ボックスをこじあけ毎日スキャのエキスをすすっておりました。ある日いつものようにミナミ界隈のレコ屋を徘徊している時、不思議な光を放つ7インチをを見つけました。そのレコードは一見普通なのによく見ると片面にしか溝が無く、B面はまるで鏡のような一曲だけのシングル盤でした。タイトルは「Work Song Ska」。これが最初のデタミネーションズであった。

 それから10年。遂にデタミの4枚目のアルバムが9月27日に発売される。各メンバーがそれぞれに作曲したこのアルバムは、それだけにかなりワイドな仕上がりとなっているようで、トロンボーンの足立晋一曰く、「軽く出来たよ」との報告あり。数曲の難儀は合ったものの結局5日間で録音は終了した模様。スケジュールの都合で連日、スタジオに入れなかったため、毎回セッティングに相当時間をとられたらしいので、実際には2〜3日で録ってしまったのであろう(確か『This Is Determinations』は2日で出来たと話してたような?)。ちょこっとだけ聴かせて貰ったが、個人的にはヴォーカルの高津氏の作詞・作曲による「Disteny」に痺れてしまった。いつもながらの演奏力、作曲力の高さに驚かされるのだが、この曲にいたっては歌詞だけでも特筆モノであると思う。氏の内面が良く出た傑作であり、日本語の更なる可能性を垣間見た。なぜか初めてBaobabで見つけた冒頭のシングル曲を聞いた時の衝撃を思い出してしまった。そういえば、既発売のシングル「Bayon / 恋の汽車ポッポ」ではトランペットのイッチーの妹、マキちゃんが歌ったあの曲もやっぱり日本語。ジャマイカの生まれならジャッキー・オペルやプリンス・バスターもこんな風に聞こえるんやろなと思う。どうしても英詞に走りがちなオーセンティック・スカを愛するバンドたちに一石(流石)。

 そんな彼等、遂にフジロックにも出演、午前11:30と彼等にすれば早朝に近いライヴ、満場のオーディエンスと奇跡的な瞬間、ジャパスプばりのサウンド・システムで放たれる彼等のステージは圧巻だった。今や誰もが思うであろう日本一のスキャバンドだ(因みに、スカタライツのベーシスト、ロイド・ブリヴェットが来日出来ないとの事で、松井茂がシゲタライツになる可能性があったのだけど急遽、ギタリストがベースを弾くという珍事でその夢は実現しなかった。でも、そんな状況にもかかわらずスカタライツは大敢闘。ロイド・ニブスの動き出したら止められないブルドーザーのような圧倒的なドラムと、トランペットのジョニー・ムーアの勇姿が印象的であった)。
 さてさて、デタミネーションズのニュー・アルバム、スタジオにメンバー各自がアイデアを持ち寄って来て、それをたったの5日間で録音、リハーサル無しでもあの演奏…もうほんと恐ろしいくらいである。これだから、今も昔もスキャは止められないのである。

闇に深く暗い霧が降る
時間をとめる静寂に迷い込む
呟きの様な微風が吹く
呪文の響きと甘い蜜の香り

湖に落ちる満月の雫
金色の泡と消える運命

「Destiny 」… From The Determinations 4th Album『Chat Chat Determinations』