1999年12月号

Mix Tape


1. DJ George/ Immortal (Street Image) Feat. Mab & TMG (Dorberman INC.)
(D-St.Ent.)

ファースト・アルバムのパーフェクト・エディションも好評な "O-Town Finest" ことドーベルマン・インクと活動を共にするトラック・チーム=チーター・トラックスより、DJジョージがブランニュー・ミックスをお届け。ドーベルマン関係のDJの中でも唯一“サグな選曲”で知られる彼だが、テープ版ではR&Bから生系まで幅広いセレクション(イカツめの曲も勿論アリ)で、またドーベルマン・インクよりマブのフリースタイル、と盛り沢山の内容。続いて出るDJマサキS Jr.の『R&B Mix』も、ミックスが最高!



Album


2. V.A. / Irv Gotti Presents The Inc
(Def Jam)

ジャ・ルール、アシャンティといったスター・アーティストを排出し、あのチャーリー・バルティモアも獲得、更にはQBファイネストのある男までにも手を差し出したという影の実力者(といってもPVに出まくり!)、アーヴ・ゴッティが自身のレーベル=マーダー・インクの総力を結集して作り上げた最新作がコレ。ジャが3人の♀アーティストに囲まれる「Down 4 U」から、J-Loのお馴染み「Ain't It Funny」、そしてチャーリーとアシャンティが絡む「No One Does It Better」、そして新加入のチンク・サンタナがGな歌を聞かせるトラックまで、“入り乱れ”の16曲は文句ナシの濃さ。ヤバい連中、である。
3. Swizz Beatz / Swizz Beatz Presents G.H.E.T.T.O. Stories
(Universal)

DMX、イヴらを擁するラフ・ライダーズの“頭脳”であるスウィズ・ビーツの1stソロ・アルバム。ジェイダキッスやスタイルズにイヴ、といった“身内”の参加もホドホドに、“共演歴”のあるバスタやLL、N.O.R.E、ナズからロン・アイブレー、バウンティ・キラー、ジャ・ルール、そしてメタリカ(!)とゲスト陣も豪華なのは言うまでもない。あのスウィズらしいビートと声ネタの嵐…なのも言うまでもない。新機軸を求める向きにはアレだが、ここに彼だけの世界がある事は間違いない。
4. V.A./ Soundbombing III
(Universal)

“ロウカス”の定番サンプラー/ミックス・アルバム第3弾が登場。前半、後半をサイファ・サウンズとミスター・チョックが各々担当し、例えばクール・GラップFeat.CNNの「My Life」やジョネルfeat. メソッドマン、G・ラップ、ファロア・モンチ「Round & Round(Remix)」等の既によく知られたヒット・トラックでは2枚使いもよい印象的に各々の曲頭にラフなドロップが入るところも“らしい”感じで、メジャーな面子がガンガン顔出し賛否両論だった前作を経て突き抜けた感じも。「The Life」等、単純に“いい曲”が多いコンピ。これが今の“ロウカス”なのだから。
5. DJ Jazzy Jeff / The Magnificent
(BBE)

フィラデルフィア・シーンの立役者(というか縁の下の力持ち)、ア・タッチ・オブ・ジャズ(以下ATOJ)のボス=DJジャジー・ジェフのソロ名義としては初のアルバムは、あのBBEの好企画“ビート・ジェネレーション”の最新盤。ATOJのプロデューサー、ミュージシャン、ラッパー、シンガーを集め、自ら総指揮を執るスタイルは正にATOJ流であり、今のフィリー・サウンドといった趣き。ショーン・ストックマン(ボーイズIIメン)から、フレディ・フォックス、J-ライブ、ジル・スコット、クエストラヴ、マスターズ・アット・ワークらもイイ味出してます。サンプリングと生の絶妙なグルーヴをお楽しみあれ!
6. Daz Dillinger / This Is The Life I Lead
(Victor)

ドッグ・パウンドの相方=コラプトが古巣=デス・ロウにカムバック…という信じられない事態の中、マイペース男=ダズ・デリンジャーは自分の城=DPGより新作ソロをリリース。これがまたひたすら“ダズらしいファンク・アルバム”に仕上っている。巷で話題の『Keep It Gangsta』から、トゥーショートを迎えた「Bitch Bitch Bitch Make Me Rich」、そしてロックっぽいエッジのある「Redrum Galour !」等、様々なファンクを聴かせつつ、“俺流/俺節”を忘れないとこも流石。ラッパー、プロデューサーとしてアブラが乗ってる今だからこそ、の“傑作”。カーステのヘビロはこれで決まり。
7. Peanut Butter Wolf / Fusion Beats
(Cutting Edge)

ご存知リヴィン・レジェンズのMC/トラックメイカー=イーライのソロ名義によるインスト・アルバム第2弾。3MG他数々のユニットで暗躍する彼は、レジェンズ名義曲(“ロウカス”からも出てました)からコラボ系(ワード・スウィンガーズともやってましたね)まで、自分の色を出しつつもラッパーを引き立てるのが上手い印象すらあった。しかし、このインスト・シリーズでは自分自身を解放し、インストゥルメンタルという聴き手のイマジネーションを広げる、という作業でヒップホップの可能性を追求している。前作同様“間違いない”内容。
8. V.A./ Fat Beats Volume 2
(Fat Beats)

前作は“イン・ザ・ペイント”からのリリースだった、お馴染みのレコード・ショップ/ディストリビューター/レーベル、“ファット・ビーツ”企画のコンピ第2弾。今回はよりレーベルとしてのファット・ビーツ色豊かな内容で、アーソニスツ「The Session」、イーストフラット・ブジュ・プロジェクト「Trieed By 12」といった忘れじのクラシックから、ジャスト・アイス+BDK「Just Rhymin With Kane」、フィル・ダ・アゴニー+ダイレイテッド・ピープルズ「Analyze The Operation」、マス・インフルエンズ「All Out」等の話題曲まで幅広いエリア、アーティストの楽曲をしっかり網羅。12インチを普段チェックしない人にもオススメの好企画。
9. Gagle / 3 Men Mix On Wax
(File)

EP「Bust The Facts」リリース時から待ち焦がれた仙台のドクトク3人組=ガグル初のフル・アルバム。ダボやS.P.C.との絡みでもその強烈なオリジナリティを打ち出していたスーパードゥーパMC=ハンガーとDJミツ、DJミュウラーの描き出すガグル流のバランス感覚はこのフル・アルバムで更に明らかになった。リリック、フロウの圧倒的な面白さ、そしてトラック担当(ラップも味がある!)DJミツの空気感を重視したような秀逸ビーツ、そしてミュウラーのラップとカラむコスリ…。ダボ、ポチョムキン、DJケンタロウらとのコネクションの強さを感じる共演曲も全て“成功”。2002年屈指の1枚。深い!
10. Loop Junktion / Ties
(Sony)

ボストンの名門校=バークリー音楽院でセッションを通じ絆を強くした楽器隊(4ピース)と、マイクを握る詩人=山仁の5人からなるヒップホップ・バンドのデビュー・アルバム。一つ一つの音の粒立ちの良さ、そして何よりも光るグルーヴ、リリカルなVo表現…そのオーガニックな結び付きは確かに今まで日本にはなかったタイプ。“友人”であるDJベース、有坂ミカを各々Feat.したトラック以外は全てこの5人だけで作り上げた「100%ライヴで再現可能な音」のみ。素直に自分たちが感動できる曲のみを収めた意義深いセッション集。固定観念を捨てて聴くべき。


Singles


11. 刃頭/ Sword Heads
(P-Vine)

『最狂音術』シリーズ、イルマリアッチEPに続く、刃頭のソロ・プロジェクト。タイトル・トラックは、ジェルー・ダマジャとニップス、という日米の最強にイルなマイクロフォン・マスターとのタグアップで、ミドル・スクール的な上ネタの立ち加減とビートの疾走感が生きた仕上がり。『最狂〜』シリーズとはまた少し違った路線ではあるが、これもまた紛れもない刃頭ワールド(プレイする姿が目に浮かぶ…)。また、孤高のソウル・シンガー=オリトをfeat.した「Y-U-M-E」(愛娘に捧げた曲)の世界観も引きずり込まれるものがある…。次ぎに控えたフル・アルバムへの期待も膨らむ密度の高さ…。

12. DS455 / Ride Wit Tha D.S.C. 〜Just Like Me〜
(Universal)

横浜シーンの中核的存在=DS455。ヴェテラン・グループの彼らのメジャー・デビューEPとなる本作は、彼らが何故にそれ程までに日本語ラップ・ファンからウェッサイ・フリーク、オーライダーまでアツに支持(プロップス)を集めているのかがよく判る、プライドの詰まったパッケージとなっている。表題曲はレイ・パーカーJrの「Woman Needs Love」を弾き直したスケールの大きなトラックで、ケイザブロウのフロウもまた違った角度から光が当った感じでこの夏のヘビロに決定。そして併録の「Survive」は“オレ節”で知られる女性MC=マイラをFeat。共にDJPMX魂心のトラック。DSはやっぱりDSだけ!