1999年12月号

J-BOOGIE AND A POLLO / 2-Styles-Fu

"ターン・テーブリズム" をヒップホップ・フィールド以外にも広めた問題作『Tektonics』に共に参加していたビート・ジャンキーズのDJ J-ロックとDJアポロ(元ISP)による4ターンテーブル・ライヴ。前者が繋ぎ、後者が擦りという役割分担で、A面をヒップホップ、B面をドラムンベースというスタイルで聴かせる。録音された98年暮といえばDMCでクレイズがD'N'Bをカットした後で、コンゴ・ナッティのようなジャングルからギャング・リレイテッドと通好みの選曲だが、コスリを含め完全にブレイカー仕様になっている。

COMMON / Like Water For Chocolate(ユニバーサル)

MCA移籍第一弾。ルーツのクエスト・ラヴに、ディアンジェロ、そしてジェイ・ディーという鉄壁のバッキングを得て、コモンのソウルはより活き活きと輝きだした。ジェイ・ディー作の「Doo In It」、正規リリースされたプレミア作の「The 6th Sense」というフロア受けするトラックもあるが、この作品で彼は、ヒップホップ界では稀な "アルバム・アーティスト" である事を強烈に印象付ける事に成功している。フェミ・クティ(ルーツのリミックスは聴いた?)、モス・デフらゲストの配置も例によって見事な大傑作。黒い。

GHOST FACE KILLAH / Supreme Clientele (エピック)

WUいちソウルフルな男=GFK、満を持しての第二作。後頭部を直撃するようなハイ・トーン声でファスト・フロウをガンガン撃ち込む様は相変わらず、と言うより確実に説得力を増している。話題の先行曲「Apollp Kids」を始め、思わずハッと息を飲むほどにドラマティックなサンプル(70'sソウルが大半)が散りばめられ、疾走感のあるタフなビートと共に“主役”を盛り立てる。RZA主導のトラックは減少(何とジュジュも参加!)したが、全体的に統一感がありウーバンガー以外の人も楽しめる。WU関係の2ndではピカイチの内容。

A.G. / The Dirty Version (Silva Dom)

D.I.T.C.のアルバムに続いて今度は "Get Dirty" ことA.G.の初ソロが登場。制作陣にはフィネス、ダイアモンド、ショウ、バックワイルドらD.I.T.C.の面々にプレミア、アーメッドらが尽力している他、A.G.自身も遂に単独でビートを披露(大ネタ!?「迷信」のカヴァー・ラップだったりする)。先行曲「Rude Awakening」やショウ&A.G.名義の名曲「Drop It Heavy」の他、意外とヴァーサタイルMCイングで魅せる点がソロ作たる所以。O.C.、ファット・ジョー、ビッグ・パン(R.I.P.)らの声も。A.G.はやっぱ格好イイ。

V.A. / Def Jam 2000-Hip Hop's Biggest Fan(マーキュリー)

自他共に認める最強レーベル“デフ・ジャム”の第三黄金期を示す'98〜'99の重要トラックを集めた日本企画コンピ。監修しておいて自分で言うのもナンだが、これはかなり痛快な一枚。ジェイ・Z、DMX、メス/レッドやモンテル等のフロアを荒らしまくったあの曲この曲がズラリ、なんだから(本国でもこんな豪華内容のコンピは出ていない位!)。あと聴きものはラストに収録のDJミッシー(BT-X)によるコスリまくりの5曲8分一本勝負。カッチョエエ〜。買って下さい(損させまヘン)。

V.A. / Hip Hop 101 (トイズ・ファクトリー)

ジグマスタズ他“濃ゆい12吋盤”を連発し、ウルサ型のヘッズからも絶大な信頼を得たトミー・ボーイ傘下のアングラ・アーティスト専科="ブラック・レーベル" 初のショウケース・アルバム。監修を担当したのが、レーベルのVIP=デ・ラ・ソウルだけに既発曲から新録まで堅い仕上り。MCアルバムも控えてるトニー・タッチ+クウェリの他、デ・ラ待望の新曲にメイスのソロ、メディナ・グリーン、ジグマスタズに大物マスタ・エースとJラヴの再タッグ物等、シングル単位でチェックしない人も嬉しい曲が目白押し!

ミリ / Knowledge Of Self(P-ヴァイン)

個別活動が活発なネイキッド・アーツ(DJトンクのアルバムも最高!)から、R.D.R.との共演でも知られるミリもソロを発射。トラックは全て、彼自身も参加する京都ベースのヒップホップ・ユニット=瘋癲バンドの面々=B・バンジー、DJアキラ、マック・フジタニに、DJシャーク、ヒサらによるもので、ドクトクのドープな質感が嬉しい。ネイキッドでのソロ曲の時よりも、ライミングに拘りながらもフロウを際立たせたマイク・テクニシャンぶりに注目。山田マンのリミックス入りで全8曲、ガッチリ聴かせてくれる。秀作。

V.A. / Rap Warz Donpachi (東雲レコーズ)

全国8都道府県をレペゼンする9組が集結した意義深い、前例無きコンピ。DMCでお馴染み沖縄の凄腕DJ=ヒンガ・ヒガのカット物で幕を開け、熊本出身のライム・フェチ=餓鬼レンジャー(そこのポチョムキンは本作のA&Rでもある)、福岡の暴れん坊集団トージン・バトル・ロイヤル、京都代表ジンタイと女性Vo=ジョイナーのJ&J、大阪は元デスペラードの茂千代、名古屋はトコナXとM.O.S.の仲間、走馬灯の核弾頭バックギャモン、仙台はN.O.B.のご存じカズ・シックに北海道のブルー・ハーブと列島縦断の構成。各々に強烈な“色”があり、“質”も高い。聴くベキ!

ジブラ / Mr. Dynamite(フューチャー・ショック/ポリスター)

客演仕事を含め業界随一のハード・ワーキンぶりでジェイ-Zに等しいポジションを独走中のジブラ、久々の単独名義曲。トラックはプロデューサー/リミキサーとしても引く手数多な当の本人が担当し、MCのヴァイブス、その勢いを最大限に引き出すド派手なフューチャー・ファンクで勝負。これぞイケイケ!最高だ。Hiedaのリミックスは「Party Checka」並のクールな線であと例のナイキTVCF曲「Player's Delight」(オケもジブラ)が収録されているのも見逃せない正にスペシャルなEP。アルバムは6月予定とか。

G.K.マーヤン / 続・大災害(えん突つレコーディング)

本誌99年度の“ベスト・ミックステープ”作『G.K.Funk Maryan Soul』から人気の高かった「大災害」のパート2が遂にカット。DJヤス(ケムリ・プロダクション)の手による異様な緊張感のあるスピーディーなトラックにぶちまけられるG.K.節は“痛快”の一言。「証言」のパンチ・ラインを擦っているのはライヴDJも務めるDJミッシー。対する「This Like That 〜Top Island」は魂の波動の発信者としての志をうたったもので、こちらもヤスのプロデュース。益々目が離せない2人、である。

DJヤス / Across The Globe(えん突つレコーディング)

『シンクロニシティ』でマット・フィンガズ、ウィル・パック、クレイグGを見事にハメてみせたヤスのソロ名義では初となるシングル。表題曲では日本のシーンにリスペクトを示しているエル・ダ・センセイと、リノがマイクを握り、英詩/日本語詩のぶつかり合いもスリリングなハード・トラックに。裏曲の「Tokyo Dream」はその絵流田氏と共に昨年夏来襲し、共にヤスと共演したリヴィング・レジェンズ・クルーのイーソップを全面フィーチュアした曲で、摩訶不思議なグルーヴを生むループ・オケで流石のフロウ巧者ぶりを見せつけている。アルバムが待ち遠しい!

デリ / Burnin'(リアリティ)

続々と飛びだすニトロ組から、千葉はホット・コネクションのデリも初シングルをドロップ。表題曲は「Ruff Riders Anthem」でお馴染のあの重厚なメロディを個性的な高音ヴォイスが切り裂くハード・コア・スタイルが貫かれている。対照的なダミ声で渡り合うは盟友ゴア・テックス。裏曲「出口はあっち」はパーカッシヴな南国調オケながらも主役の不良性はしっかりデリヴァリーされている。制作はデリ+ヤッコ=アクエリアスにDJトミケンが参加。新味に富む好曲だ。