1999年12月号

DJ KIYO / Fresh Mode[Royality]

毎回粋なテープでマニアを喜ばせてくれるKIYOの最新作。今回の "選曲" はウエスト・コーストのアンダーグラウンド・スマッシュを中心とした正に "旬" な感じ。と言ってもそこは彼のこと、二回転半ヒネリのセレクションと構成でその手を敬遠しがちな "食わず嫌い" 者をも見事にハメてしまう痛快な内容となっている(○ュ○シック5にしたって「Unfied Rebelution」だもんなあ…)。独特のキレのあるスクラッチ、そして可愛いパッケージを含めて "満点"。

OL'DIRTY BASTARD / N★★★A Please[East west]

インスペクター・デック、メス/レッドに続いて、WU一族きっての "問題児" =ODBの実に4年半ぶりとなる第2ソロ作が到着。リック・ジェームスではありません、念の為(彼のカヴァーは演ってるが)。持ち前の破天荒な馬鹿キャラが今回も全開になっているのは言うまでもない。ネプチューンズ、アーヴ・ゴティという "旬" なトラック・メイカーとの合体曲やRZA制作曲が並んでいるが、どこを斬ってもODB。芸人根性丸出しの話芸や唄は単純に聴いてて楽しい。

AKEEM / 1974221[Polystar]

数多くの客演仕事でも知られるUBGの最終兵器ことAkeemの満を持しての初マキシ。まずZeebra制作の表題曲(この数列はAkeemのID)のタイトさにビビッて貰おう。そして彼のライヴDJでもあるDJ Daiによるドープ、シット "音楽/★★★"、Inovaderのイルなパーティ・トラック「UBG Express」そして『シンクロ』収録の初ソロ曲「病んだ視点」のDJ Celoryのリミックスと全てがAkeemのイルマナグな持ち味とUBGスタンスを浮き彫りにしている事実におののいて貰おう。Akeem節、爆発の快心作だ。

HANDSOME BOY MODELING SCHOOL
/ So...How's Your Girl?
[トイズファクトリー]

プリンス・ポール、ダン・ジ・オートメイター(元DR・オクタゴン)という2クセも3クセもある2人の新ユニットの初アルバムは、"ハンサム養成校に行ってモテ男になろう" という壮大なコンセプトに基づいたモノ。そもそも実はイケてない男がこの音楽でモテるという発想自体がヒップホップ(と思うのは僕だけではあるまい)。マイクD、エルP、デル、センセイショナル、トゥルゴイ、プーバ&サダト、DJシャドウ他多彩なゲスト陣が一人残らず活きてる点だけでも凄い。2人の "校長" の創造力の逞しさにRespect。

イーライ / 流煙夢[キャラバン]

強者集団リヴィング・レジェンズきっての詩人と称されるMC=イーライの4作目、にして初の日本盤。全17章からなる "夢を煙のように逃してしまう人々" に向けて放せられたライムの鋭さもさる事ながら、その "ビート化学者" ぶりも素晴らしく、ハッとさせられるフレッシュなトラックが目白押しだ(それは決して "チープ" という一言で片づけられないモノだ)。CMA、マース、ミスティック・ジャーニーメンと今年もレジェンズ関係は豊作だが本作も期待にたがわぬイルで格好いい一枚。間違いない。

GROUP HOME / A Tear For The Ghetto Vol.1[Replay Records]

アンダーグラウンド・シーン、で精力的な活動を続けているギャング・スター・ファウンデーションのラップ・デュオ=グループ・ホームの久々のアルバム。制作陣にはアルケミストやチャーリー・マロッタ、アガラーらが登用され、リル・ダップも全編で見事な立ち振る舞いを見せている。テーマがテーマなだけに陰鬱な雰囲気が漂っている(特にA面)が、これこそが彼らの真の姿なのだろう。所属する "グールー・エンターテイメント" の親分=グールー参加の最終曲なんて殆どGファンク。Vol.2も出た。

V.A. / Duck Down Presents[Priority]

ブラック・ムーン以下、ココ・ブラヴァス、ヘルター・スケルター、OGCらブートキャンプ一派揃い踏みのショウ・ケース。ビートマイナーズ魂心の「Jump」("UFO" 使いのアレ)、や人気の高かった「World Wind(Remix)」そしてココの「Holocaust」を含め、全15曲シンプルかつダイナミズム溢れるトラックが殆どで今の同クルーの充実ぶりがとくと伺える。あとこれは同時に出たOGCのアルバムにも言える事だが、若手オケ班の方もマイク班同様進境著しい。この後続々リリースされる関連作品にも期待したい。

ED OG / Let's Be Realistic[Groove Attack]

最近ではダ・ブルドッグスやクリエイターズ、カクタス・ジャックとの共演盤や、ソロ名義の "Just Because" で渋〜いフロウを披露していたエドOGだが、このスピナ作の表題曲は本シリーズのコンピ第一集にも収められていたもの。対するAA面曲はこれが初出となるヴァイナル・リアニメーターズ(!!)によるトラックで、ハデ目のループとショーン・Cのスクラッチのフックも見事に決まっている。この味わいはやはりエドOGならでは。

TAME ONE / Trife Type Times[Fat Beats]

エル・ダ・センセイに続いてテイム・ワンもソロ作をドロップ(アーティファクツはどうやら解散した様だ)。だが相も変わらずクセの強い濃いフロウで一安心。Trkは全てジオが担当しており "Nautilus" 使いの「Torture Chamber」を始め、テイム好みのシャキッと立ったブレイクで盛り立てている。中でも取り分けマッドなのは、ピュンピュンの音がウルサい "Raw Dick Shit" 。全曲カットはDJカオス(この夏エルと一緒に来日した元アーティファクツのDJ)◎。

TWIGY / もういいかい2000[えん突つ]

まずジャケが素晴らしい! Twigyファン待望のNew "もういいかい2000" は、決して止まる事なくライミング技術と精度をアゲている彼の最新型。テーマはタイトル、ジャケからも判る通りのフューチャリスティックなモノで、自身で手掛けたトラックも含め、とにかく "新しい" の一言に尽きる。また例の「七日間」はV.I.P.BandのKei Horiguchi(メチャメチャ売れっ子デス)による新時代ファンキー・リミックスで、これがマタいい感じ。Twigyには本当に毎回ビックリさせられる。

ブッダ・ブランド / Don't Test Da Master[Cutting Edge]

99年最期の日に遂に解禁されるブッダのフル・アルバム『病める無限のブッダの世界−Best Of The Best(金字塔)』に先駆けて放たれるEP。制作は全て例によってデヴ・ラージで表題曲はご存知Nippsと "エルドラド" クルーのLunch Time Speaxを迎えての超強力シット(特に飛葉飛火の名調子!)。静かにタギる "男" な名曲。あとアルバム未収となる2曲もヤバい。ラウドネスの高崎晃のギター(何とその他のパートも)が唸る、間違いなく過去最高のロック・ジョイント曲に、G.K. Maryan参加の「ILL 夢 Maker」の神秘的なリミックスにもヤラれる。全て文句ナシ。

NITRO MICROPHONE UNDERGROUND / Nitro Works[Reality]

自他共に認める新世代代表マイクロフォン・ソロイスト他ヒップホップ・アーティスト集団=NMU(MCではGore−Tex、S−Word、Macka−Chin、Dabo、Suiken、Deli、XBSらが参加)のNew。7吋盤で先行リリースされた "Bambu" はMr.Itagaki作のスリリングなトラックで前出の頭4人がトンチの効いたマイク・リレーでノセてくれ(コスリはDJ Vibram!)。そしてMackaとGore−Texのタッグで制作も担当した表題曲では、これまでの日本語ラップにはなかった御伽噺的世界を構築。写真のCDには更に新曲1Trkとあの「Requiem」も収録。この勢いは誰にも止められない。