1999年11月号 

1. FAKTS ONE / Heavy Hitters
(Brick Records)

本コーナーでも時々ココ発のドープ・ワックスを紹介しているのでご存知の人も多いだろうボストンの "ブリック・レコーズ" からのアングラ物ミックス・テープ。ド頭がヴァディム「Friction」でその他、アル・タリーク、Mrリフ、プラネット・エイジア、ラスト・エンペラー、エル・ダ・センセイ、そしてカジュアル、とここ数ヶ月の間に出たシブいトラック満載で、ファクツ・ワン( "The 7 Yearitch" のヒト)のシャープな2枚使いでアッという間の90分。


2. MOBB DEEP / Mobb Muzik
(ソニー)

クイーンズ・ファイネストが帰って来た! ハヴォックの手による、あのモノクロ映像を想わせる簡素なサウンド・プロダクション(特にあのハイ・ハット!)はそのままに、尊敬してやまないクール・G・ラップや、仲間のビッグ・ノイド、NAS(その "It's Mine" が2ndカット)、レイクオンと、矢鱈と絡み物が多いが、当の2人は相変わらずハードコア。リル・キム参加の「Quiet Storm(Remix)」はかなりナゾだが、手ごたえ十分の4作目、である。


3. THE BEATNUTS / A Musical Massacre
(ソニー)

"レフティヴィティ"の事実上の消滅により "ラウド" へ移籍した "ビートき○がい" の5作目。今作でも他を圧倒するネタ師ぶりは随所で披露されており、ラストまで新鮮なトラックの連続、の痛快娯楽作となっている。ゲスト陣もキューバン・リンクやコモン、トニー・タッチ、ビズ・マーキ−にサイコ・レスが過去に制作も手掛けたウィリー・スタブス等、実ににぎやかで主役2人のラテンの血が濃い "パーティ精神" を汲んだものとなっている。また日本独自企画のベスト盤も同時にリリースされるので、ビギナーは是非。


4. DJ VADEM / Life From The Other Side
(トイズファクトリー)

先日も "ニンジャチューン・ナイト" で来日したばかりの在英インターナショナルDJの新作は、今までにない展開で話題沸騰中。Co-フロウやクール・キース、ダイレイテッド・ピープルやRSC、ドクター・オクタゴン、スクラッチ・パーバーツといった多彩なゲストを交え、ラップ度UP、しかも独自の音響美路線も更に追及した、というそのトラック群は彼の才能がUKシーンだけにとどまるものでは無い事を如実に証明している。スクラッチ・テクニシャンとしての立居振舞も見事、の一言。


5. ARSONISTS / As The World Burns
(Matador)

かつて "サーチライト" や "フォンドル・エム" からアンダーグラウンド・スマッシュを出していた5人のマイクの猛者達が、ウン年越しの初アルバムを完成させた。そのユニークなリレー、掛け合いスタイルはいい意味で不変であり、アルバムの約半数を占めている過去5年に渡りリリースされた既発曲と最新曲が違和感なく繋がっている事実にも驚かされる。アングラ(本人達はこの物言いが嫌いだそうだが)がダメな人もトライする価値アリ。ある意味 "変態ポップ" だから。


6.V.A. / Wide Angles
(P-ヴァイン)

限りなくUSシーンとの距離を感じさせるUKアングラ銘柄 "ブラインド・サイド" の初コンピ。今号でも紹介しているアンスポークン・ハードの曲も手掛けたグラップ・ルーヴァや "ロウカス" からアルバムを控えているファラオ・モンチにナチュラル・エレメンツのL-スウィフト、エル・ダ先生、モス・デフ&クウェリ、MR.コンプレックスにビッグ・クワンと、US、UK、を股にかけた好人選で送る捨て曲ナシの密度の高さは、スピナの名につられて何となく「Verbalise」を買った人を震撼させる筈。トゥルース・イノーラFeatデラソウルの曲は12" も出たゾ!


7. DJ Masterkey / デフジャム2000
(マーキュリー)

さる8月13日Harlem "Daddy's House" でライヴ収録されたDJマスター・キーのMix Show CD。タイトル通り、"デフ・ジャム" のイマを支えるアーティスト達=メス、レッドマン、DMX、ジェイZ、フォクシー・ブラウンらのベスト・トラックのマスターならではの一曲一曲に "気合い" がこもった聴かせドコロを弁えたミックスで、当日のあの異様な盛り上がりが甦る、"熱気充満" の一枚。オーラスに収録のジャ・ルール「Holla Holla」のオリジナル・リミックスの秀逸。アナログ・サイズの限定仕様も出る。急げ!!


8. PHIFE DAWG / Bend Ova
(Groove Attack)

すっかりお馴染みとなった "Superrappin" シリーズのNewは何と元ATCQのファイフのソロ・チューン。制作は同企画にJ-88の名で参加していたジェイ・ディーで、例によってドクトクの軽味あるドラムに、ギター・カッティングのループが光る好トラックを提供。ファイフとの相性も悪いワケがなく、レイドバックした雰囲気が楽しい裏曲「Thought U Wuz Nice」と共にイイ仕事っぷり。ファイフの新たなる門出に相応しい一枚となった。


9. 7HEADS & THE UNSPOKEN HEARD / Jamboree
(7Heads)

オールド・スクール・フレイヴァ溢れるジャケ写もイイ感じのワシントンDC出身、アンスポークン・ハードのニュー・プロジェクト。タイトル曲は生っぽいホーンとハンド・クラップ、ガヤが活きてる面白い曲だし、あの "Longevity" のJ-ライヴをフィーチュアしたライヴ・トラック "Trackrunners" の軽妙酒脱な味わいも捨て難い。アシェルーのライムと、グラップ・ルーヴァらのトラックのライヴ感が何よりも心地いいオススメに。尚、本作はマミア・アブージャマール解放運動関連作、でもありマス。


10. スイケン / Double Trouble
(エルドラド)

Bird「Realize」等、共演仕事でも忙しいスイケンの久々のソロ。タイトル曲はブラジリアン・ギターのループが気持ちいいKZA&DJケントによるトラックで、100%エンタテイメントスイケン・スタイルが縦横無尽。「四街道レンジャー」への参加で名をアゲたAKMMがまたもや大暴れしているのも嬉しい。対する裏曲「Sui Slang」は本人曰く "ヒップホップと思ってもらわなくて結構" と言い切る位、アブストラクトな挑み系チューン。アポジモーターズはかなりヤバい。スイケンまたもや新境地。


11. DJ オアシス / 地下から
(アトミックボム)

Kダブシャイン、TAKザ・ライーム、Qとの「Another Side」に続き、オアシスのソロ初シングルがようやく到着。キング・ギドラ結成以前からの付き合いとなる盟友ジブラをフィーチュアしたタイトル曲は話題のバトル・ライム・チェーン。裏面曲「ILL リーガル・ドラッグ」はラッパガリアをフィーチュアした文字通りの合法ドラッグ(=ハイなトラックとライム)でオアシスとの合作に花咲く、といった感じ。魂心のワン・ループに言葉がリアルに伝わるフロウ…。オアシスはトラック・メイカーそしてMCとして更なる進化を遂げた。


12. AKINYELE / Take A Lick
(JIVE)

そのXレイテットなリリックで常に議論の的となっている変態ライム・テクニシャン=アキネリの新たな契約先が "ジャイヴ" に落ち着いたコトはもうご存知だろう。で、プロモ段階で話題になっていたこの曲はあの「Put In Your Mouth」とタメを張る、その名の通りの赤面チューン。アキネリはマタもやあの濃スギる声と顔でせまっている。裏曲は、スムース&バウンシーなトラックで "楽しいセックス" について説いた曲で、ライム散りばめられた人名の数も凄い。アルバムはどうなることやら?