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GEORGE PHANG / POWER HOUSE
 
Text by Takanori Ishikawa / Photo by Bess Lesser
 

VP Recordsのリイシュー・レーベル、17 North Paradeから1980年代のコンピュータライズド・ビート前夜のダンスホール・シーンを熱く彩ったレーベル、Power House(プロデューサーはGeorge Phang)の音源をたっぷり詰め込んだ“Power House Selector's Choice”シリーズがリリース(2枚組CD×4枚)。Power House=George Phangが当時果たした役割や影響などを語りながら本シリーズの魅力を追った。
 
80年代のジャマイカン・ミュージックを語る上で絶対に外すことができないビッグ・レーベル、Power House。キングストンの顔役、George Phangがプロデュースした数々のダンスホール・ヒットを計160曲(!)収録したCD4セット(各CD2枚組)が発売された。このプロダクションを素通りする訳にはいかないでしょ、レゲエ・ファンなら。
 
Badな二人、George PhangとRobbie Shakespeareのコネクションから誕生したと言われている当レーベル。当然、起用されたミュージシャンはSly & Robbieの最強コンビに加えて、Steely & CleevieのSteely、Clevie、Robbie Lynn、Willie Lindo。ホーン隊にNambo、Dean Fraiser等、一流のミュージシャンを起用。Jammy'sがコンピュータライズド革命を起こし、シーンが打ち込み一色にシフトする以前、つまり生演奏のバック・トラックが主流であった時代の最後を華々しく飾った素晴らしいサウンドは彼ら、才能溢れるヴェテラン・ミュージシャンなくしては誕生し得なかった(正確に言えば、急激にコンピュータライズド化が進むダンスホールの世界でも奮闘。87〜88年ぐらいまでヒット曲を多数リリースした)。
 
そのサウンドはSlyのパンチ力抜群のドラムを軸に、Robbie他の自由でヘヴィなベースがグイグイと全体をグルーヴさせる痛快極まりないダンサブルなもの。当時最新型であった“シモンズ・ドラム”も多用されている。各音楽ジャンルでも80年代サウンド・リヴァイヴァルの傾向があるけど、レゲエに関しても時代が一回りした感がありますね。このレーベルの特徴でもあった“シモンズ・ドラム”の音がことの外フレッシュに響きます。Sly & Robbieが同じくバックをつけたBlack Uhuruの諸作品と比較するとPower Houseの方が良い意味でポップだしね。ターゲットはジャマイカ国内であった訳だけれど。
 
ところで、このPower Houseが台頭してきた頃に全盛期を迎えていたのがHenry“Junjo”LawesがプロデュースしていたVolcano等のレーベル。Style ScottのWickedなドラムを中心としたスローで超ヘヴィ級な "One Drop" サウンドでダンスを沸かせていたこのプロダクションの中に割って入ってきたかたちになったのがPower Houseだ。思えば、70年代にChannel Oneがトップ・ランクのレーベルだった頃にバッキングを任されていたのは当初Sly & Robbie。“ロッカーズ・リズム”でジャマイカ中を熱狂させたのだけれど、その後にChanne Oneのバッキングを任されたのが前述のStyle Scottを中心とした後のRoots Radicsだった。Roots Radicsは80年代に入ってから強烈なオリジナル・サウンド "One Drop" でトップ・バンドに上り詰めていたが、Power Houseが台頭して来たことによってSly & Robbieの逆襲が始まった。
 
あくまでスローな "One Drop" サウンドに対して、Power HouseのSly & Robbieはよりアップ・テンポ(と言ってもスゲー速くはないですよ。今のダンスホールに比べるとね)のビートで対抗。Slyらしい躍動感たっぷりで正確無比(これがポイントね)なドラムはダンスホール全体のピッチを70年代のレゲエがキープしていたテンポ位まで戻したのだった。当初はVolcanoが優勢だったと思われる両者の立場も後に逆転。快活で弾けるPower Houseのサウンドの方がシーンの主流となる。スカ誕生からジャマイカで繰り返されてきた(コンピュータライズド化してからは、ちと話が違ってくるが)ピッチのスロー・ダウン、そして、その後のテンポ・アップというトレンドの移り変わりがここでも実証されたということも言えるでしょう。
 
という訳で、このレーベルはヒット、今で言う“ダンスホール・クラッシック”の豊庫。一番有名な当レーベルの大ヒット曲はHalf Pint「Greetings」だろうけれど、それだけではなく物凄い数の名曲があります。このシリーズは何しろ計160曲も収録されているから、それら全てもれなくチェックできるのが嬉しいし、有り難い。当時の大ヒット曲、Little John「True Confession」(Tresure IsleからのSilvertones名曲カヴァー)や、同トラック使用のCharlie Chaplin「Que Dem」、Freddieの「Don't Hurt My Feelings」、Sugar「Buy Off The Bar」、FP「Tidal Wave」、Al Campbell「Talk About Love」他、ダンスホール・ファンなら知らなきゃモグリの名曲が山盛り。渋めな曲ほど、今聞くとカッコイイですよ。
 
Studio One他の定番名リズムを80年代型にアップデートした見事なサウンド・メイクも合わせてチェックしてみて下さい。新しい発見があると思います。そして、当時の空気やファッションを伝える貴重なアーティストの写真(デビュー当時、若き日のPinchersの姿も)を数多く使ってデザインされたジャケット他も最高。ぜひ、CDを購入して手に取って楽しんで下さい。
 

"Power House Selector's Choice George Phang Vol 1"
V.A.
[17 North Parade / VP / VP4135]



"Power House Selector's Choice George Phang Vol 2"
V.A.
[17 North Parade / VP / VP4135]



"Power House Selector's Choice George Phang Vol 3"
V.A.
[17 North Parade / VP / VP4135]



"Power House Selector's Choice George Phang Vol 4"
V.A.
[17 North Parade / VP / VP4135]

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