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Review by TAKASHI FUTATSUGI
 
 
ALBUM
 
1. Q-Tip / The Renaissance (Universal)
お蔵入りになったアブストラクト名義作を挟んでのソロ2作目。ヒップホップの文化的復興を唱え、期待通り“セルフ・プロデュース”で魅せてくれる本作は、例の未発表生音ベース作の要素も引き継ぎつつ、それ以前、つまりATCQ時代を想わせるフシもある彼にしか作れないタイプのアルバム。ゲスト・ラッパーは皆無で、ラファエル・サディーク、ディアンジェロ、ノラ・ジョーンズ、アマンダ・ディーヴァら、それぞれとの絡みを含め、Qティップ節が堪能出来る。かつてのパートナー=故ジェイ・ディラのトラック、バラク・オバマの“声”も聴ける。
 
MIX CD 
 
T.I. / Paper Trail (Warner)
銃器不法所持での実刑確定か?と伝えられた“キング・オブ・サウス”ことT.I.の通算6作目。そんな精神的にもヘヴィな状況下で、いつものフリースタイル・フォームではなく「ライムを紙に書く」という基本から始めたという本作は、コンセプチュアルな前作とは打って変わって、現在=置かれた立場とその真実を切り取ったモノとなった。だが、そこはT.I.のこと、シリアスなムードこそあれ陰鬱になることはない。ドラマ・ボーイ、DJトゥーンプ、カニエ・ウェスト、ジャスト・ブレイズ、スウィズ・ビーツ、ジム・ジョンシンらの最新ビーツに、新機軸のフロウまで飛び出す流石のバラエティ!
 
3. Young Jeezy / The Recession (Universal)
そのT.I.の新作も見事“全米No.1ヒット”となったが、このA-タウンのトラップ・スター=ジージィの3rdもその“頂点”に。ブラック・プレジデントの誕生に期待を寄せるラインが幾つもある本作は、その大真面目なタイトルからも察せられるように、ポリティカルな要素と多大なる影響力を持つMCとしての自覚のある内容だ。それは、ゲスト参加しているNasの新作とも地続きな部分もあり、あの癖の強い声でグイグイと聴かせるラップを展開。相性のいいトゥーンプを始めとする制作陣も鉄壁で、ソウルフルな趣も。リル・ウェインの新作並の完成度!?
 
4. Dem Franchize Boyz / Our World, Our Way (Victor)
前作でスナップスを広めたアトランタを代表する4人組=DFBが、ジャーメイン・デュプリ、そして“ヴァージン”と決別し放った3作目。昨年暮発表のシングル「Talkin' Out Da Side Of Ya Neck」だけでは伝わりにくかったが、ここで彼らがこだわったのは“ラップ”の強度。これまでの家内製ビーツ中心プロダクションではなく、新参加の制作陣=ニティ、ションドレー、マーヴェラス・J、マニー・フレッシュ、T.I.&マーズら外部に大半のトラックを任せたせいか、絡み、フックもイキイキしてるような…。ロイドら、シンガーを配した曲のクオリティも高く、トータルで楽しませてくれる。
 
5. Termanology / Politics as Usual (Nature Sounds)
“ネクスト・ビッグ・パン”の呼び声も高きNYのプエルトリカン・ラッパー(マサチューセッツ出身)が、遂に正規デビュー。DJプレミア制作の「Watch How It Go Down」から早2年となる本作には、プリモ以下、ピート・ロック、ラージ・プロフェッサー、イージー・モー・ビー、バックワイルド、アルケミスト、ハヴォック、ハイテック、ノッツがビートを提供し、バン・ B、プロディジー、リル・フェイム、シーク・ルーチにフリーウェイら強者ゲストも華を添えた万全の内容に。そのスキルフルな速射砲ラップの嵐は、NYシーンが彼に寄せる期待の高ささえも飲み込むものだ。大注目!
 
6. Madlib The Beat Konducta / Wlib Am: King Of The Wigflip (BBE)
世界中のビートメイカーに勇気を与えた“ザ・ビート・ジェネレーション”の“最終章”は、この男しかいない!という感じで“LAの異端のビート指揮者”が担当する事に。テーマは「完全なる(作り手の)自由」である事で知られるこのシリーズらしく、様々なオルターエゴを持つマッドリブは、やりたい放題。だが、しっかり己の美学もアピールしている。デファーライやプリンス・ポー、マース、ギルティ・シンプソン、フランケン・ダンク、MED、弟のオー・ノーからジョージア・アン・マルドローまでの声ゲストとインスト小曲を散りばめた、彼らしいヒップホップ作なのは言わずもがな。振り幅は広いのにすこぶるドープ。アンカーに相応しい労作!
 
7. The Foreign Exchange / Leave It All Behind (Hardboiled)
何とも素敵な歌物アルバムも記憶に新しい和蘭のビートメイカー=ニコライと、80sカヴァーの冴えてた鬘デュオ=Zo!&&ティガロでのアルバムも好評だったフォンテ(リトル・ブラザー)のユニットが、4年ぶりに復活。ヒップホップ・クリエイターの作るソウル・ミュージックとして、前作のかなりハイクオリティな内容だったが、今作はより緻密により流麗に進化したものとなっている。先のミラクル鍵盤奏者=Zo!や4ヒーローのマーク・マックらも参加した練りに練られたサウンド・スケープ、フォンテ以下、ダリエン・ブロッキントンらシンガー勢のパフォーマンスは共に素晴らしく、画が見えるよう。日本盤にはボーナス盤も付く。
 
8. Mabanua / Done Already (Origami Productions)
Ovallのドラマーであり、またサンプラーを駆使するビートメイカーでもある才気煥発な日本人アーティスト=mabanuaの初アルバム。MySpaceにアップした音源に食いついてきた海外アーティストは、ジュラシック5のアキルやアレステッド・ディヴェロップメントのイーシー、ケヴ・ブラウン、タマラ等で、ここではそんな“音楽だけで繋がった”有機的なコラボレーションを軸に、ひたすら聴き心地の良い“ゆらぎリズム”を基調としたドクトクの音世界が堪能出来る。キーボードからギター、ベース、ドラムまでをセルフでプレイし、サンプラーに取り込みアレンジしたという極上の音波シャワーを是非!
 
9. Isaka Yuich / Human Fly (Headphone Jack)
フロム茨城つくばの重要グループKaijin出身の Isaka Yuichiのソロが到着。溢れ出す感情そのままに、時に言葉を詰め込み、時にフロウする彼のラップ・スタイルは実に力強く、視点含め他にはないタイプと言える。心の葛藤を包み隠すことがない、その武骨さを超越した“人間力”が物を言う喜怒哀楽リリックスが爆発した本作には、同じバトルフィールドに立つ同士として瘋癲のMiliも参加。Kaijinの仲間D-stylesらによる漆黒のブレイクビーツの援護射撃も利いた、何とも濃ゆい1枚。
 
10. 山仁 / Cookieman (Libra)
Loop Junktion以降も独自の活動を続け、何気に“多作のひと”山仁の最新作が“Libra”から登場。新たなオルターエゴ(?)となるクッキーマンがキーとなる(?)本作は、Cro-magnon、Copa Salvo、犬式、Soil & "Pimp" Sessions、鼓響、Coffee & Cigarettes Bandといったバンドのメンバーたちや、DJ Baku、Libroら多彩なサウンド・プロダクションを見事に束ねた山仁だからこそ、の独創性に富んだ1枚に。そのリリシストぶりは、ILL-BOSSTINOらとの絡みでも冴え渡ってILL。Loop Junktion編成での新曲もアツい!!
 
11. 鬼一家 / 赤落 (赤落Production / Ultra-Vybe)
『Concrete Green』シリーズや、ScarsのSacのアルバム、そして「見えない子供見てない大人」でも知られる福島はレペゼンいわきの鬼が中心となる鬼一家の初アルバム。その鬼の歯に衣着せぬ物言いがポリティックに響くスタイルは、このアルバムでも当然ながら楽しめるのだが、I-DeAが手掛けた冒頭曲「小名浜」にまずヤラレる人も多いことだろう。思わず視線が遠くなるようなリリシズムと歌心溢れるその曲からアルバム全編、まったくもって気が抜けない。Bes、Norikiyo、Goukiらの好演も。適度なユーモアも心に響く傑作。
   
12. 茂千代 / Niwaka (S.T.A. / Ultra-Vybe)
『Concrete Green』シリーズや、ScarsのSacのアルバム、そして「見えない子供見てない大人」でも知られる福島はレペゼンいわきの鬼が中心と
大阪クラシック「Owl Nite」参加からDesperado〜Absolute〜Wonder 3〜Bonsaiとマイペースな活動を続けてきた“天才MC”の待ちに待った1stソロ。その天性の男前声に強い意思を感じさせるストイックなリリック、身体能力の高いしなやかなフロウは関西シーンの宝と呼べる位に“華のある”ものだが、その特性を最大限に引き出したのがDJ Kensawという事実に膝を叩く(TopBillin'で)ヘッズも続出だろう。その止揚のガチンコ勝負をお楽しみあれ。盟友Baka de Guessも参戦!

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