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307    ANACHY    ARTISTS

ANARCHY
My Words, My Life
 
Text by Takashi Futatsugi / Photo by Masataka Ishida
 

京都・向島で生まれ育った奇跡のラッパー、Anarchyの新作『Dream & Drama』が前作以上に凄いことになっている。エッジの効いたサウンドはもちろん、ラッパーAnarchyとして現在言うべきことは全て真摯に語られている作品と言えるだろう。
 
 「ラッパーがボスだと、ともすれば下が伸び悩んだりするけど、R-Ratedはそれがない。これは凄いこと」これは、『Riddim Awards 2007』のヒップホップ部門の対談での共通した見解だった。そのボスとは言わずもがな、京都シーンの立役者であるRyuzoなのだが、彼は“その話”を聞いてこう笑った。「要は誰をモデルにしてるか、ってことですよね。俺はジェイ・Zじゃなく立ち位置的にはRZAなんですよ」。なるほど。それにしても、彼のクルーへの入れ込み方は半端じゃない。それは感動的ですらある。今だと、このAnarchyの2ndのプロモーションにその熱量が現れている。
 
「あいつは、色んな壁を乗り越えて、壊してきたじゃないですか。俺らは俺らで出来るだけのサポートするのは当たり前で、胸張って“これがヒップホップや”と言えることをやってることが全てに繋がってくるんかな、って。やっぱり、ラッパーは最終的に“何を言ってるか”が問題ですしね」。ヒップホップは何よりも“ファイト・ミュージック”だ、という共通したマインドを持つ“彼ら”だけあって、“日本屈指のエモーショナルなラッパー”Anarchyが自叙伝となる『痛みの作文』を上梓した際も筆者は何ら(ヒップホップとしての)違和感を覚えなかった。むしろ数々の伝説を持つ“前代未聞の男” Anarchyらしい!と膝を打ち、実際に読んでみて、その語りかけるような筆致にヤラレ直したくらいだ。しかしながら、当の本人は当初そのオファーを不思議に思っていたらしく…。
 
 「初めに話をもらった時は、俺の本って?って感じで理解できなかった。でも、よくよく考えてみたら、本でしか伝えられないこともある、本を作ることで俺の音楽がもっと理解してもらえるやろ、と思って。俺らのヒップホップを、本を通しても伝えたかったし。あの本がなかったら、このアルバムは全然違うもんになってたと思います」
 
 暴走族の総長から“逆境を蹴っ飛ばすタフなラッパー”Anarchyになった彼が、自身のグループであるRuff Neckと地元京都でR-Ratedに合流したのは、極めて自然な流れだったのだろう。そして、関西、いや全国のシーンの期待を背負って放った1st『Rob The World』('06)は高い評価を得ることに(本誌でもベスト・アルバムに選出されている)。
  
 「『Rob〜』を出して、いい風に変わってきた部分もあるけど、自分的には“マダマダやな”って思ってたんです。で、“次はどうしよ?”って考えてた時に、「Drama King」のトラックに出会って、閃いてきた。夢を追ってるけど、まだ叶うところまではいってない、夢を追いかけてる人みんなが持ってる気持ちを歌ってみたんです。それがこんな内容のアルバムを作るキッカケになりました」
 
 『Dream & Drama』というタイトル通り“夢と現実”が交差する本作は、例の自叙伝で“過去を回想”することによって呼び起こされた記憶(=ドラマ)と“自ら更新しなければならない”未来の記録(=ドリーム)が、複雑に絡み合うコンセプト・アルバムとなっている。その“ひとつかみの夢”の中心にあるのは、Money、Power & Respectという、このゲームにおける重大要素なのだが、彼の言葉、リリックは決してヒップホップにドップリ、というヘッズにしか届かないものではない。それは、どこまでもポジティヴなものだ。しかも理想論としてのそれじゃなく、現実社会で苦渋を味わってきた人間らしい“生身の言霊”なのだ。
  
 「今回、理想としたのは“どれだけストレートに言葉を届けられるか”ということ。それは、曲調をポップにしてどうとかいうレベルじゃなく、シンプルに伝えたいことを自分の言葉で自分らしくうたう、ってことで。自分で出来ること以外は人の手を借りようと思わなかったんです。さすがに俺がシンガーみたいに歌うわけにはいかんから、TinaさんとHirom Jr.には、入ってもらって。今回に関しては、入れたい曲はこれが全部やったし、俺の中ではこれ以上あと1曲もいらんかった。 あと、(シングルで先に出ていた)「My Words」を最後の曲にするつもりもなかったんで。(トラックメイカーがB-マネー、ブラスト・オフ・プロダクション、セブという海外3組と、1曲で盟友バグジーなのも)意識してそうなったわけじゃなくて、いいな!と思ったのがたまたまそうやっただけなんですよ。流行りとか一切意識せんと、ホンマに自分がカッコ良いと思う好きな音で、好きなラップでやろうと思ってたから」
  
 その“結果”がどうなのかは、自分の耳で確かめられたし! いや、音源だけじゃなく“ライヴ”も観るべきだ。「きれいなこと、きたないことのすべてを歌うのがラッパーだ。オレはそう思う」。彼は先の『痛みの作文』の序文でそう綴っているが、それがどういうことなのか、しっかりと解るはずだから。素直な気持ちで接すれば、Anarchyという名の闘うラッパーの姿が、おのずと見えてくるはずだから。かのメソッドマンは、かつて「“C.R.E.A.M.”を聴いて“感動した!”というファンと話してて気づいたことがある。それは、自分たちが何を表現したいのか、ということと同じくらい“リスナーがどう受け取るか”ということを考えることだ」と語ってくれたが、Anarchyはそれが自然と出来ている。だからこそ、常に最新作が最高傑作となるに違いないのだ…。


"Dream & Drama"
Anachy
[R-Rated / RRR-1008]

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