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Etana / The Positive Strength
 
Text by Minako Ikeshiro / Photo by William Richards
 

ジャマイカのレゲエ・シーンにおいて、ここ2年で大きく飛躍したラスタ・シンガーは、実は女性である。エターナ。「リッチー・スパイスの妹分」としてキャリアをスタートし、現実的かつポジティヴなメッセージ・ソングを次々とヒットさせているソングトレスに話を聞いた。
 
クィーンズにあるVPレコーズのオフィスで、デビュー・アルバム『The Strong One』について、「やっと形になった」とエターナは笑顔でコメントした。初めて会ったのは、2005年だったと思う。リッチー・スパイスが本格的なツアーに向けて組んだメンバーの中に、彼女がいた。歌唱力はもちろん、容姿、存在感で最初から光っていた。飛ぶ鳥を落とす勢いだったフィフス・エレメント・レコーズが、本格的に力を入れるようになるまでそれほど時間がかからなかった。ゲットー出身を理由に就職を断られ続けた女性が、偽りのアップタウンの住所を書いたらあっさり決まった、というオチの「Wrong Address」が06年にヒット。 「Roots」、「I'm Not Afraid」が続けてヒットしているのは、パフォーマーとしてだけでなく、作詞家として類いまれな才能を持つからだろう。「詩を書くのは昔からクセみたいなものだったの。

フロリダで看護学校に行っている時も、心理学や化学の授業中に詩を書いてる始末(笑)」と話す。「元々はシンガー志望ではなかった」と意外な話も。友達の策略で、フロリダ時代に流れでR&Bとロックを混ぜた音楽性のガールズ・グループのリード・シンガーに収まったものの、「全く私らしくない」と悩んだすえ、一時的にジャマイカに戻った際に出会ったのがフィフス・エレメントだった。リッチーの一人勝ちでアンソニー・クルーズやチャック・フェンダが脱退する中、エターナはひたすら精進を続ける。「リッチーのツアーでステージで歌う楽しさに開眼した」と話し、「学校みたいなものだったから、楽しかった」と振り返るが、次のレヴェルを目指してマネージメントを変えたのが吉と出たのも事実。
 
“強者”とのニックネームを持つエターナは、女性の尊厳について常に考えてるような人でもある。レディ・ソウやマッカ・ダイアモンドがジャマイカのダンスホール・ディーヴァを体現しているのならば、エターナはより大多数の慎ましいジャマイカ女性の代表だろう。そう伝えたら、「私なりに、いい代表になれるように努力しているわ」と笑いながら、「それより、ジャマイカの一般的なイメージがセックスとハッパ、というのに昔はよく怒っていた。ジャマイカの女性はたくさんの役割を果たして、それ以上の存在のはず。私たちにはほかの役割も力も知識もあるし、ずっと影で支える存在として力を持って来たのに」と義憤を表した。「ラヴ・ソングでも、“Nothing But Love”みたいな普遍的な愛の方が私らしい」と話す。実際にストレートなラヴ・ソングに限って、ほかの人がペンを取っている。だが、その一方で「私は人にポジティヴなものを与えるのが好き。人のことを気にかけたり、栄養を与えたりといったことが出来るのが本物の女性だと思うから…心を愛情で満たして、それを分け与えるのは私達の役目なのよ」とも。この女性らしいしなやかさが、男性から反発を喰らうことなく、順調に大物への道を歩んでいる理由かもしれない。
 
今年のサンフェスでは、インターナショナル・ナイトのいい時間帯に登場し、万単位のオーディエンスをロックした。「楽器の音色にこだわった音楽が好き。ディーン・フレーザーやグレン・ブラウニーといった本物のミュージシャンと仕事ができて良かった」ときっぱり。今年は2、3ヶ月おきに彼女のステージを観ており、毎回着実に上手くなるのを不思議に思っていたら、ロード・マネージャーが「NYに1週間いた時、ヴォイス・トレーナーを自分でつけて毎日トレーニングしたほどの練習好き」と教えてくれた。本人は熱心なラスタファリアンだが、「ラスタ同士しか分かり合えないというのはおかしいと思う」と話し、実際に『The Strong One』に“ジャー讃歌”は「Jah Chariot」の1曲しか収録されていない。本作がいい意味で聴きやすいのは、フロリダで10代を過ごした彼女がムリなくR&Bの要素が入ったトラックを乗りこなしているからであるし、エターナは様々な要素をバランスよく持っているアーティストなのである。
 
何だか、正しすぎて優等生一辺倒みたいになってしまったが、最後の最後にエターナから問題発言が飛び出した。Air Jamaicaの機内誌で行きつけのレストランにフロリダの和食スポットを選んでいた彼女に、日本につ
いて知っていることを尋ねたところ、「歴史的な女性の扱われ方が気になる」と言った後に、「友達が日本人の男性と結婚して子供を産んだら、その子がすっごく可愛くてね……私も日本人とデートしようかと思うのよ」
 
我こそは、と思う日本男児は、ぜひ。


"Strong One"
Etana
[Vivtor / VP / VICP-64383]

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