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THE MAZE

HASE-T
GETTING TO THE NEXT LEVEL
　
Text by Hajime Oishi / Photo by Naoto Ikeda
　

　質・量ともに日本のトップ・ダンスホール・プロデューサー／トラックメイカーとして勢力的な活動を続けるHASE-T。彼の最新の仕事は、新録曲集および過去音源のミックスCDで構成される２枚組だ。本人の発言とともにその内容を見ていこう。
　
　全45曲のうち、3曲のリミックスを除く42曲のプロデュースはすべてHase-Tが手掛けたもの。「だから、この2枚組に入ってる音のほとんどはオレが作ってることになりますね」と話す『Reggae Gold Mine Vol.2／Boombox Vol.2』は、“Reggae Gold Mine”が新録曲、“Boombox”がHase-Tプロデュースの過去曲をMA$AMATIXXX（Racy Bullet）がミックス。つまり、たっぷりHase-Tの手腕を堪能できる仕掛けとなっているのがこの2枚組ということになる。
　
　とにかくハードワーカー。プロデューサー／トラックメイカー／リミキサーとしての仕事量といったら、ちょっと想像を絶するものがある。だが、それ以上に賞賛すべきは、確かなクォリティを誇る音をコンスタントに作り続けてきたこと。
　
　「ここ3年ぐらいかな、ある程度ジャマイカ人と同じレヴェルのものを作る自信を持てるようになったんですよ。（ジャマイカ人には）負けないなって思ってます。前はジャマイカに近づこうと頑張ってたけど、今は自分のカラーを出すことのほうに力を注いでる感じですね」
　
　現在のジャマイカのトラックメイカーたちについて「めちゃくちゃ格好いいですよね。昔から格好良かったけど、今の十代のジャマイカ人が作るレゲエも凄い」と認めながらも、そこには憧れの視線は感じられない。追随するのではなく、それに拮抗できる音を作ること。Hase-Tのプロデュースワークには、そんな意志が窺えるようにも思える。『Boombox Vol.2』サイドに収録された過去のプロデュース曲を聴けば、その自信にも根拠があることが分かるだろう。そして、Ent Deal LeagueやTakafin、Rudebwoy FaceやRueedらが収められた『Reggae Gold Mine Vol.2』。こちらのほうは、プロデューサーHase-Tのオリジナル・アルバムとしての色が強く打ち出されている。
　
　「そう捉えてもらってもかまわないですね。海外だとティンバランドが自分の名前でアルバムを出してるじゃないですか。それに近いとは思います。だから、本当は『Hase-T's〜』っていうタイトルにしてもいいんですよ。例えば“Hase-T feat. Ent Deal League”っていう表記にしてもいいぐらい」
　
　あえて説明するまでもないだろうが、Hase-TはもともとDJである。彼が魅力的なDJであることも示している2001年の『Over & Over』という作品では、すでにほとんどの楽曲のトラックを自身で制作。今回の取材にあたってこのアルバムを聞き返してみたのだが、現在でも十分格好いいトラックばかりで驚かされた。それから7年。音作りに全精力を傾けてきたHase-Tには、“名裏方”という謳い文句が似合わなくなってきた。“Hase-T”という確固たるブランドを背負う名プロデューサーであり、ドン・コーレオンやスティーヴン・マクレガーと同じように信頼できる“アーティスト”。この2枚組を聴けば、そんな僕の確信にもみんな共感してくれるんじゃないかと思う。
　

"Reggae Gold Mine Vol.2"
"Best Of Hase-T Produce & Works Boom Box Vol.2"
V.A.
[Columbia / COCP-34839~40]