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KIPRICH
DRAMA KING
 
Interview by Natsuki Toi / Photo by Naoto Ikeda (D-Cord)
 

 
“Keep Rich(豊かな)In Talent(才能)”、略してKiprich。Cappachino(現Chino)と組んだデビュー・シングル「Leggo Di Bwoy」でブレイク、その後、世界進出したElephant Manのイケイケな弟分的存在としての認知度を一気にあげたと思いきや、女グセの悪いダメ男の悲哀をコミカルに歌った「Telephone Thing」で大ボス。そして通算2作目となる『Drama King』をドロップしたキッポ君に新作について聞いた。
 
まずこの業界に入るまでのバック・グラウンドを教えて。
 「生まれはキングストンのウォーター・ハウス。近くにKing Jammy's Studioがあって、小さい頃からよく出入りしてたよ。ハイ・スクール卒業後も音楽へのパッションが捨てきれず、その時のミッション(法学)を諦めてスタジオ通いをしていて、ある日ビッグ・シップでダブ録りをしていた(Tony)Matterhornに“オレにも歌わせてくれ”ってDJしてみせたんだ。そしたら“お前才能あるよ”って言われてね。それが結局デビューにつながった事になるかな」
 
 05年「Telephone Thing」の大ヒット以降、「ようやくソロ(一人前)としてのキャリアが始まった」というくらい、それまでElephant Manの“弟分”的印象が強かった彼だが、そもそも最初は二人ともLexxusのツアーに同行する取り巻きの一人だったとか。狭いジャマイカのレゲエ・シーンでは、下克上は当たり前、凄いスピードでその力関係が塗り替えられていく。そうした状況の中、若手を積極的に育てるアーティストがいる一方で、「We Nuh Inna Dem」でも歌っているように、新人の脚をひっぱる過去の成功者もいると? 「そう、この業界にさえ、そんなバッド・マインドなヤツがいるなんて信じがたいよね。何の進歩にもならない、世界を狭めるような事は本当にバーニンしなきゃだめだ。オレは常に新しい才能と新しい事を試したいと思ってる。それによって、自分も刷新されるだろう?」。彼は常にポジティヴなサークル(輪)の中に自分を置くように努力しているようだ。
 
 今作『Drama King』というタイトルは、「常に何かしらハプニングが起こってるんだ」という彼自身を指している。それはどんなドラマかというと…「Joe Grind(ジャマイカン・スラングで「浮気相手」の意)」「Bun Fi Bun(浮気には浮気を)」等の曲名を見れば一目瞭然、そう、彼は常に多重恋愛中。その恋愛観は日本人とはあまりにもかけ離れているけれど、当のご本人はあくまで大真面目で、それでいてアッケラカンと楽しんでいる様子。その「(良い意味で)こだわらない」「物事はうつろい変わるもの」という達観したような、ズバリ「諸行無常」そのものの感覚をもって、日常のドラマを傍観し、喜劇役者よろしく自身の音楽の中でおどけてみせる。そんな彼のミディアム・チューンは何故かとても大らかな説得力があって、じつは誰でも日常のドラマを生きているんだという事に気づかされるのだ。ということは、「40&Over」でも歌っている通り年上の女性が好きなの?「いや、確かにジャマイカの男の中にはすごい年上好きがたまにいて。いや、けっこういるかな(笑)。これはJuni Platinum(大ヴェテランa.k.a Lady Junie)の誘いで録ったんだけど、個人的には同年代が好きだな」
 
 恋愛ドラマ以外にも、珍しく(!)社会ネタ・チューンもある中、最強の変り種がこちら、「Zebra & Tiger」。そう、往年の名DJ、Tigerとそのフォロワー、Zebraの物まねを、彼とLeftsideが繰り広げる。「Tiger、お前オレみたいに刑務所入りたい?」「Zebra、お前オレみたいにバイクで事故りたい?」など実は笑えないネタでの駆け引きが延々と続く、漫才のようなコンビネーション。「この曲が去年のサンフェスでのTigerの復活パフォーマンスに繋がったんだよ。彼のモチヴェーションになったなら凄く嬉しいよね。獄中のZebraの感想は、まだ聞いてないんだけど…」
 Deejayとしてのキッポも全開の今作だが、ついに正統派ラヴ・ソングも披露。「初めて(Singjayではなくて)歌っちゃったよ(笑)」と照れくさそうに教えてくれたのがFirst Nameレーベルの抜群に気持ち良い “All Stars” trkを使った「On My Mind」。
 
 その飄々とした彼の佇まいに惑わされていると、実はDJとしてもシンガーとしても完成度の高いアーティストだということをつい忘れてしまう。威圧感の無い、優しく控えめな声で質問にも答えてくれた彼だけど、熱を込めて語ってくれた言葉で締めよう。
 
 「現在のジャマイカ・シーン? そうだね、今は確かにギャングスタ・ミュージックを聴きたがる傾向にあるけど、それは“いつも”でも、“永遠”にでもない。その時のフィーリングだから、またいずれ変わるだろうね。もちろん、キップリッチはいつでも自分を信じているし、どんな流行があっても、自分のスタイルをそれに合わせるような事は絶対にしないよ。それに、音楽はジャマイカ国内だけのものじゃなくて、もっと広いものだ、そうだろう? まだキップリッチを知らない世界中の人達が、どんどん受け入れてくれるだろうし、だからキップリッチは皆を楽しませるこのスタイルで世界中の人と繋がれるって信じているんだ。だから皆も、自分のやっている事を何よりも信じて、胸を張って前を向いて欲しい。それが全てだよね」
 

"Drama King"
Kiprich
[Pony Canyon / PCCY-01867]

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