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THE MAZE

(U KNOW)What the deal is
　
今の住まいに越してから十年以上が経つ。その付近の変貌も目を見張るものがあるが、改めて見るとあやしいラインアップでもある。
　
教会が２軒、葬儀屋がひとつ、魔女が経営すると言われているロウソク屋が同じブロックのサイドに建ち並んでいる。冠婚葬祭が一挙に行える便利な場所と一言で片付けてしまえるが、やはりそれらの建物には、独特の雰囲気、いや不気味なものがある。
　
元々は、我が家の階下は、クラック・コケインの取引の舞台で、早朝から中毒者が並んでいた。更に今は美容室に変わっている数軒の地上店はジャメイカ系の偽装店だった。こう書くととんでもない場所に住んでいたものだが、当時のこの辺は当たり前だった。古くはキース・リチャーズから、最近ではスマッシング・パンプキンズのドラマーなどロック・スターがヘロインを入手する為に来ていたエリアである。
　
その時代と比べれば、すっかりクリーンな印象だが、まだまだNYにはこういった不思議な一角が生き残っている。観光コースでブロードウェイや、５番街の馬鹿騒ぎを通っているだけでは感じられない何かがある？

● 今月の復活
巷ではレッド・ツェッペリンの再結成が新聞に載ったりしている今月だが、なんとスライ・ストーンが静かに復活していた。12／7にミッドタウンはBBキングのブルース・クラブでファミリー・ストーンのほぼオリジナル・メンバーとともにライヴを行った。一時期はドラッグ問題などで再起不能と言われていたが、去年のルイジアナの災害への義援のライヴで顔を出すなど、僅かながら元気な姿を見せていた。近年は、R＆Bシンガーへの楽曲の提供などもやっていたらしいが、とにかく嬉しいニュースである？
　
● 今月のアート・ショウ
「リターン・オヴ・ブルックリン・キングス」なるトリビュートを兼ねたアート・ショウがブルックリンはスキー・バーで11／30に行われた。メア、タブー79、イーゾ、インク76、クライム79、スナッチ、レベル、ヴェノムなど、往年のブルックリン勢が集った。高齢化が目立つ70、80年代のライター達だが、その態度やアートへの姿勢は昔と少しも変わっていなかった。古き良きNYを感じさせた一夜だ？
　
● 今月のブラック・フィルム
ビギー・スモールの幼なじみであり、アンターテイメントというレーベルからキャム、チャーリー・ボルティモアなどを世に送り出したランス・リヴェラが２本目の映画『パーフェクト・クリスマス』を監督した。現在もリル・キムをマネージメントしているというリヴェラだが、ジェイZの取り巻きに、未発表曲のリークの原因として刺されたり、キムの不祥事などで一時はシーンから身を引いていたそうだが、実は04年にも『Cookout』という映画を監督していた。今回の映画の内容は全くヒップホップに関係なく、普段からブラックのクリスマス・フィルムが少ないと感じていた彼が、脚本も執筆、監督する運びとなった。日本での公開はまずないでしょう？
　
● 今月の却下
現在も７月に起こした殺人未遂容疑で拘置されているレミ・マーが、否定していた証人への暴行が12／5、罪状に加えられた。元々ハンドバッグから二千ドルが無くなり、それを盗んだとされる友人のマケダ・バーンズ・ジョーセフの腹部に弾丸２発を撃ち込み、逮捕されていた彼女だが、事件の直後、目撃していたとされる女性の男友達など２名に暴行を加えるようにと男に頼んでいた。この二人は８月にブロンクスのプレイヤーズ・クラブで襲われ、病院に収容されていた。レミ・マーは有罪が確定すれば25年の刑と言われている？
　
● 今月の閉店
ウエスト21丁目にあったクラブ・デュヴェが12／１、警察によって閉店された。ブルックリンのラッパー、ファボラスの親友が刺殺された舞台にもなったクラブだが、詳しい事情は発表されていない。刺殺されたシャメル・マッキンリーは、ファボラスのクルー、ストリート・ファミリー・エンターテイメントの一員とされていて、数々の強盗に関わっていたと言われる。チェルシー付近のクラブに来ているNBAの選手、ラッパー、地元のドラッグ・ディーラーなど数名がチェーン・ネックレスを彼等に奪われたと証言しているが、ファボラスはこれを否定、メディアと警察が捏造した容疑と言っている？

　　　
沼田 充司
DJ／プロデューサー。 レーベル＜ブダフェスト＞主宰。 雑誌『ブラスト』でも執筆中。 ニューヨーク在住。 [Photo by Tiger]