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Unmissable Story extra pieces from Ruffn' Tuff vol.11
Steven Stanley

 
Interview by Shizuo "EC" Ishii / Translated by Mizuho Takahashi / Photo by Masataka Ishida
 

 
大物プロデューサー、故アレックス・サドキンに師事し、80年代前半にはコンパス・ポイント・スタジオにてグレイス・ジョーンズやトム・トム・クラブ等の革新的なサウンドを生み出し一躍時の人となったエンジニア、スティーヴン・スタンレイ。レゲエ作品としてはガッシーと共に「Champion Lover」「Telephone Love」等のキラビやかなサウンドで一時代を築いた彼はその後、ペントハウス、エクスターミネイターでもヒット曲を量産。現在も尚、誰からも信頼されている“音の職人の中の職人”だ。
 
若い頃は目上の人達から学んだよ。クライブ・ハントだろ、ウィリー・リンドにボリス・ガーディナー。彼らに曲のバランスの取り方を主に教えてもらったね。それからアクエリアスでピアノのチューニングをしてた人。え〜と、なんて名前だっけ。ハーマン・チン・ロイの兄弟なんだけどな。ハーマン・チン・ロイは昔、ハーフ・ウェイ・トゥリーにレコード屋を持っていて(アクエリアス・レコード・ショップのこと)、ピアノのチューニングやレコードのミックスもやってたんだ。彼は音楽がわかる耳を持ってたね。彼のミックスにはいつも彼だけのアレンジがあったから。当時はコンピューターなんてないし、ベースだけで始まって後からドラムの音を入れていくとか、その程度のアレンジだけど、俺が今やっている「ダブの素」は、彼から手に入れたんだ。
  
ミックスする音の素材をもらったら、まず、どういうアレンジができるか考える。それから、それぞれの音色が絶対にぶつからないようにする。「音がぶつからないように」っていうのはマイキー・チャンから習った。それからハーマン・バトラーっていうピアニストも俺の先生の一人だね。彼からは「音をめいっぱい詰め込んではダメだ」と教わった。先生も以前は曲を盛り沢山に入れて仕上げてたんだ。一気にピアノでダダダダダ、ダラダラダラ〜なんて弾いちゃったりしてね。完全にオーヴァーダブのし過ぎ。それが、ある曲をミックスしている時のこと。先生はまたまた音を重ねるつもりでいたんだが、そこにウィリー・リンドとボリス・ガーディナーがやってきて、先生に「正しくミックスする方法」を伝授して帰ったとさ。要は「詰め込みすぎるな」ってことだよ。結果として、その曲は凄くいい作品になった。俺はそうやって先輩たちから、何をするべきか、何をしてはいけないかを一つ一つ学んで、自分のスキルを磨いていったわけ。
  
俺自身の優れてる点? ピッチがほぼ完璧な曲が作れるってことかな。きっぱりとした間が取れる。それがミックスには役立っているかも。それから俺が“電気系”だってことね。今は昔ほどじゃないけど、俺は完全な“電気機器偏愛者”なんだよ。おかげで今の俺がある。加えて、音楽を凄く愛してるってことかな。
  
ドラム・マシーンとかシーケンサーのような機材ができないかと願ったこの世で最初の人間は俺じゃないかと自分では思ってるよ。生ドラムはちゃんと叩けないし、頭の中にメロディが浮かんでも他人様に聞かせられないほど歌が下手だろ。70年代に初期のリズム・ボックスが登場した頃、喜んで使ったよ。いつもスタジオに持ち込んで、誰もいない時や空いている時間に俺だけのデモを作るんだ。もちろん、自分で聞いて楽しむだけ。当然、ドラム・マシーンが出現した時は熱烈に歓迎した一人だ。だいたい、レコーディングをしていると、ドラムがトチって、時間が無駄になることがよくあった。ちょっと叩いてしくじる。また叩いてしくじるの繰り返し。最初からぜ〜んぶやり直し。ドラム・マシーンならトチったりしないし、永遠にビートが流れ出る。万歳!だ。その後、80年代になってメガ・ドラム・マシーンが登場した時は「これこそが俺のためにある電気機器だ」と思ったね。
  
現在作られている音楽? 俺は大好きだよ。本物と贋物を組み合わせたり、コンピューター使ったり、ほんと素敵だ。今は音楽を作るための全てが整っている。キレイで穏やかな音楽、フリーキーな音楽、エネルギーに溢れた音楽、何でもあり。今のスタイルには100%賛成! 誰でも創造性を形にできるから。ピアノが弾けなくてもドラム・マシーンを指で叩ける。あらゆる種類の音楽を聴いて、自分のスタイルに合うものをピックアップできる。選択に多様性があるって、本当にいいよね。
  
今までで一番気に入ってる仕事はTom Tom Clubだね。たくさんの人に俺が知られるキッカケになった作品だから。ちゃんとクレジットもしてもらえたし。でも、俺がやる仕事のほとんどはクレジットされない。確かに名前は書かれるよ。「Mixed by Steven Stanley」って。でも、それって俺がやった本当の仕事内容を示すわけじゃないから。ヴォイスを入れたり、何かをアレンジしたり、オーヴァーダビングしたりっていう仕事のことはクレジットされない。そもそも俺はトラックシートに自分のしたことをあれこれ書くのが好きじゃないんだよね。俺はただ、そうやった方がいいと思ったからやったまでで。ペントハウスなんかでいくら仕事したってクレジットはしてもらえない。でも、別に平気だ。俺は気にならない。音の聞こえが良ければ、後のことは全然構わないんだ、俺は。
  
とにかく俺はその日、その日をあるがままに生きている。仕事もそんな具合。「今日は気分がいいなあ、音楽でもかけよう」って感じで始まる。それをよ〜く聴いて、感じて、何度も何度もかけて、順番やイントロはどう? 小節はいくつ? ソロ・パートはある?っていうような情報を書き出す。何か不具合な箇所がないか探し出しで、見つけたら調整する。それが済んだらバランスをとるわけ。次は色付けね。ドライにしたりウェットにしたりディレイをかけたり。その色をニートにまとめる。最後に全てがバランスよく、いい感じになっているか確認してオシマイ。自分でもどうやってるかわかんない。I did it in my way。フランク・シナトラも言ってるだろ?[次号に続く]
 
『Tom Tom Club』
Tom Tom Club

[Sire]
  
■DVD
「Ruffn' Tuff 〜 Founders of The Immortal Riddim」DVD
監督:石井 "EC" 志津男
[Dex Entertainment / DXDS-0064]


  
■CD
「Ruffn' Tuff 〜 Founders of The Immortal Riddim」
O.S.T.

[Overheat / OVE-0100]
¥2,625(tax in)カリプソ、スカ、レゲエなど全16曲のベスト・セレクション。

 
■BOOK
「Ruffn' Tuff:ジャマイカン・ミュージックの創造者たち」
監修:石井“EC”志津男
A5判/192ページ

リットーミュージック¥1,890(tax in)

出演者の中から13名のインタヴュー+石井、石田、落合のエッセイ集。

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