HOME > 296 > RECORDS & TAPES from No.296

topics

Review by TAKASHI FUTATSUGI
 
 
ALBUM
 
1. Jay-Z / American Gangster (Roc-A-Fella)
“帝王”10作目のアルバムは、話題の大作『アメリカン・ギャングスター』のインスパイア盤。ドラック・ディーラーだった過去の“エモーション”を同映画で思い出し、約2ヶ月(?)で完成させたという彼らしいエピソード満載の作品だが、派手な要素を排し、どこか原点回帰(『Reasonable Doubt』辺り)を思わせる重厚な作り。ある意味、今の一線の若手とは距離を置いている点も流石である。参加プロデューサーはネプチューンズ、ディディ、ジャスト・ブレイズ、ジャーメイン・デュプリ、NO.I.D.、DJトゥーンプ他。
 
2. Twista / Adrenaline Rush 2007 (Atlantic)
泣く子も“笑う”高速ラップで業界中で確実に自分のポジションをモノにしているトゥイスタの新作。97年の“アトランティック”からの出直し作『Adrenaaline Rush』(名盤!)の10年越しの続編という位置づけの本作は、あらゆる面であの頃よりもパワー・アップした現在の彼のオーラル・テクニックと表現力、交友録をフルに活かしたモノとなった。これまで通りトキシックが中心となるシンプルかつ劇的なサウンド・プロダクションに映えまくる緩急自在のスキルフルなラップ、そしてリル・ウェイン、T・ペイン、R・ケリー、ファレル、ボンサグらゲストとの絡みもシビれる…。
 
3. Chamillionaire / Ultimate Victory (Universal)
カニエのソロ3部作最終章“卒業編”が到着。村上隆によるポップなジャケも驚きに値するが、中身の方はもっとブッとんでる? コモン新作ともまた一味違った、地に足着いた未来派志向はダフト・パンクねたの「Stronger」から、サウスの名代DJトゥーンプと組んだ「Can't Tell Me Nothing」、"PYT" ねたとT-ペインの起用が効いている「Good Life」、ノッツ作のトラックでリル・ウェインと絡む「Barry Bonds」、その他にもDJプレミアのスクラッチ、モス・デフ、ドゥウェレ、クリス・マーティンの客演等、ポイント多過ぎの鉄板作。主役は勿論、“ラップ”です。
 
4. Hurricane Chris / 51/50 Ratchet (Pologrounds / J)
「エイベイベイ!!」(モチロン!の意)のフレーズで全国区の人気者となったルイジアナはシュリーブポート出身、18歳の早熟ラッパーの“正式な”デビュー作。同地で“ラチェット”なるムーヴメント(クランクやハイフィーに近いが、もっとユル〜いノリ?)を巻き起こしているラヴァ・ハウスのプロデューサー=ファンク・ドッグと、最近ではソウルジャ・ボーイ・テルエム「Crank That」のNo.1ヒットで知られる売れっ子=Mr.コリパーク&パッケージストアらが協力バックアップ、というお膳立ても効いているが、それ以上に主役の華も実もあるラップが良い。よくいる一発屋に終わらない“何か”が詰まったサウスの“骨”が感じられる好盤。
 
5. Cornel West & BMWMB / Never Forget : A Lourney Of Revelations (Hidden Beach)
現在はプリンストン大で教鞭を執る黒人史研究家にして最強の論客=コーネル・ウエスト教授が自身のグループ=BMWMBやコンシャスMC達と作り上げた社会派ヒップホップ作品。その企画に賛同したのはKRSワンやタリブ・クウェリ、M1(デッド・プレズ)、ブラック・ソート(ルーツ)、ライムフェスト、キラー・マイク、アンドレ3000(アウトキャスト)ら、教授のセミナーに参加したアーティストが大半、とか。他にもプリンス、ジル・スコット、故ジェラルド・リヴァートの曲もあり、黒人音楽のディープでファンキーな部分が見事に炙り出された格好に。優良銘柄“ヒドゥン・ビーチ”より。
 
6. The Good People / Long Time Coming (Geneon)
「The Underground Railroad」のDJ/MC=エムスキーと、“アンクル・ジュニア/7ヘッズ”からのソロ作も出しているプロデューサー/MCのザ・セイントのデュオによる1年振り2作目。一回りほど年が離れている(前者はLLと同い年=39歳)、珍しいタイプのコンビだが、共にニューヨーカーで“好きなスタイルも同じ”というだけあって、今回もあらゆる意味でタイトな内容となっている。オーセンティックなNYヒップホプを継承する彼らの“ヒップホップ愛”がどれほど真っすぐなものなのかは聴けば判る。ヴァイナル・ジャンキーの支持率高いVolta Mastersによる話題のリミックスもアリ。
 
7. Zeebra / World Of Music (Pony Canyon)
言わずと知れた“先行(縞)馬”のソロ第5作。原点回帰を計った前作に続き彼一人が総合プロデューサーとなった今作も、また違った意味でバランス重視の“アルバムらしいアルバム”に仕上っている。3rd以来となる盟友Inovaderや、更に久々のDJ Hasebe、更に更に久々のDJ Taikiから、初参加のトラックメイカーまで、多彩なビート(ハウスやロックも?)を更に格好よく聴かせるフロウを次々と放ち、コンシャスなメッセージを盛り込む事を忘れない彼は、ヒップホッパーとして実に理想的なキャリアの重ね方を実践していると思う。
 
8. Nitro Microphone Underground / Special Force (Nitrich / Acehigh)
先行シングル「The Chronicle」(完売)がDVDとの2枚組という事にも驚かされたが、この3年振りとなる3rdには、そこでチェック出来た3曲の新録の内、「Dead Heat」1曲だけしかピックアップされていない、という事実には更に吃驚した。そんな全16曲、70分オーヴァーの大作。Nike Air Force1の25周年記念曲「Special Force」他、例によって黄金の8MCによる神出鬼没なパフォーマンスと、Nitro好みのビートメイカー達(今回はB.Moneyら海外組も)の科学反応はバチバチと音を立てている。新しい“仕掛け”にも要注意。
 
9. Seeda / 風街 (Exit Tunes)
間違いなく今、日本で一番期待されているMCの一人であるSeedaの新作が早くも到着。前作で全曲トラックをプロデュースしたBach Logicを始め、I-DeA、Focis、Jashwon & TKC、Vaxim、B-Money、DJ Watarai、Krevaらが繰り出す最先端のビートで、この東京Flowの持ち主は孤高のリリシストとしての真価をフルに発揮している。そのドキリとする描写の鋭さは、Ill Bosstino、Kreva、四街道Nature、D.O、Scarsの仲間やSmif-N-Wesson等とのコラボでもしっかり味わえる。ネガをポジに転換しながら街に風を吹かす彼の一つの到達点。クラシック!
 
10. Kemui / Blue Screen (P-Vine)
96年頃、Oboroの一員として登場し、東京アンダーグラウンド・シーンを沸かせたスキルフルなMC=Kemuiの初のソロ・アルバムが遂に完成! そのストイックなまでの求道者ぶり、盟友Rumiをして「肉食獣の中で生き抜いて来た草食動物的視点」が冴え渡る、圧倒的なまでの“ラップ・アルバム”である事は疑う余地ナシ。リアリティ・チェックの塊であり、非凡なストーリーテラーでもある彼をリスペクトする漢、Rumiそれぞれとの共演もポイントに。“サンプリング黄金時代”を想わせるT.Tanaka、Spier 1200の黒いビートとの相性も素晴しい!

 
11. 随喜と真田2.0 / Festa E Merda Di Toro (Gorgonzolge)
ナンナンダコレハ…!? 餓鬼レンジャー/Dos MoccosのFreaky随喜と元マイカデリックで2枚のソロ作もある真田人による初作品。豊富なボキャブラリーとB-Boyセンスでライムしまくる真にフリーキーなMCの2人だけに、“パーティ・トラック”を意識したイケイケのBなビート(Beat奉行他)の上で、立て板にアンドレの小便状態?面白トピック満載なのにマニアック志向じゃないところがミソ。「朝一の口臭よりDope!」な話題の58人マイク・リレー(汁トビスギ)も収録。尻アゲロ!
   
12. 韻シスト / Gourmelogic (Middle Tempo)
大阪発のグルメな音楽探究者達=韻シストの3rdアルバム。韻シスト=生バンドという認識が一般的だが、今作ではプログラミングの比率が上がり、またライヴでも披露している“ダブル・クラッチ”(口スクラッチが合図となる、2枚使い的演奏)も加わり、その表現方法は更に幅広くなった。勿論、3MCの地力/磁力も更に強まっているので最後までいいテンポで聴ける。ポジティヴでアーティスティック、“ダラダラ、じゃなくのびのび”という個性を失わず、男臭さを増した快男児達に幸あれ!

top
top
magazine

magazine

magazine

magazine

magazine

magazine

columns

GO BACK

ISLAND EXPRESS
UK REPORT
WHAT THE DEAL IS
PLAY IT LOUD
RECORDS & TAPES
RAW SINGLES
CHART
RING RINg RING
BOOM BAP
Day In Da West

columns
columns

columns
columns
columns
columns
page up!
Riddim Nation

"Riddim"がディレクションする
レゲエ番組「Riddim Nation
第19配信中!

Go RiddimNation!

nation