HOME > 296 > Jah Cure / the trueth is in his song

topics

296    ARTISTS    JAH CURE

Jah Cure
the trueth is in his song
 
Interview & Photo by Minako Ikeshiro
 

 “Free Jah Cure”。ここ数年、決まり文句のようにラスタ系のアーティストのショウで叫ばれた言葉が現実になった。7月29日に出所したのを受け、ここ2、3年のヒットを集めた『True Reflections〜A New Beginning』をVP Recordsから緊急リリース。新作と近況に関する、出所後本邦初のインタヴューだ。
 
 今年の夏前から、ジャマイカでもっとも話題になっているアーティストと言えばジャー・キュアーだろう。出所翌日の記者会見をはじめ、パブリシティーの展開は十二分。話題の人だけに、マネージメントのDanger ZoneとVP、筆者が何度かやり取りしてやっと決まったのだが、電話に出て来たジャー・キュアーはやけに素っ気ない。インタヴューの趣旨を伝えたら、「あのアルバムのプロモーションはしたくない」の一言。はい? 刑務所絡みの話こそしたくないだろうと、新譜に重点を置いた質問を用意していただけに、こちらは冷や汗全開。「俺は選曲にもタイトルの決定にもタッチしていない。VPが動いて、俺が承認しただけだ。もちろん、俺の歌っている想いが日本のみんなにいい形で届くといいなとは思っているけど。今までも自分の意志でアルバムをまとめたことがないから、『My Life』というアルバムをレコーディングしているところなんだ」。現在はキングストンに住み、「毎日のようにスタジオに行っている」とも。
 
「今、運転中なんだけど、まだ慣れてないから緊張してさ」、「いろんなことがいっぺんに起きて、対処するのが精一杯なんだ」と、それなりに状況を説明してくれるのだが、取材として会話が成立しない。ボンゴ・ハーマン参加曲やスタジオ・ワン使いの曲は「プロデューサーが送って来たトラックを自分がいいと思ったように歌っただけ」、出世(復帰)作“Longing For”を作ったドン・コルレオーニとの相性も「彼はプロデューサーの役割を果たして、俺は歌う役目だ」…以上。余談だが、これだけキツいやり取りは解散が決まっていたのを伏せて取材をこなしていた元ア・トライブ・コールド・クエストのQ・ティップ以来。
 
ジャー・キュアーが少し饒舌になったのは2回だけ。一回目は、ベレス・ハモンドの名前を出したときだ。「俺は歌い始めたのは12歳頃だけど、本格的に歌い始めたのは、ベレス・ハモンドのところなんだ。彼は俺の二人目のお父さんだよ。出所してからまだ挨拶に行けていないけど、早く顔を出してまた一緒にレコーディングをしたいと思っている」。2回目はシリアスな話題に転じた時。獄中にいた時、筆者は面会および電話インタヴューを行っている。事件の真相は絶対に分からないと考えているので、文中で本人のコメント以外は「無罪」とは書いていないのだが、「あの記事を読んで彼が無罪だと思っているファンは多い」と何人かの関係者に非難された。それを本人に伝えたところ、「俺はもう自由だ。刑務所にはもういない。俺が自由になって音楽活動を続けることを快く思わない人たちは好きにさせておけばいい。そういう人たちの幸運も俺は祈っているよ。みんな自分自身の問題を考えてりゃいいのに、とは思うけどね。俺の問題は彼らの存在じゃないし、見方が狭い人たちの目を開けてやりたいとも思うけど、そのやり方だけは分からない。自分で弁明するより音楽が解決してくれることを期待している。俺が作る音楽が届けばそのうち分かってもらえるだろう」 
 
本人にプロモートする気があろうとなかろうと、『True Reflections〜』は今のところ、彼の最高傑作だ。そして、学級委員長タイプの人たちがジャー・キュアーを糾弾し続けようと、彼が今現在、レゲエ界でもっともパワフルな歌声の持ち主の一人であるのも事実だ。「そのためだけにエネルギーを蓄えている」と言っていたCurefestは、取材の2ヶ月後にあたる10月中旬に2万人前後の観客を集めて幕を閉じた。3日間のイヴェントなのに、きちんとしたステージショウは最終日だけで、80人ものアーティストが集中してしまったという勿体ない展開だったらしいが、主役のジャー・キュアーは45分間歌い切り、シンガーとしての力量を示した。「作詞のインスピレーションはごく自然に出てくる」とキュアー。「みんなが食べたり眠ったりするように俺は歌う。鳥が鳴いて、魚が泳ぐように俺にとって歌うことは自然なことなんだ。それで自分を表現する」という発言があったように、彼は天性のシンガーなのだろう。
 
「今は目の前のことで精一杯で先行きをゆっくり考える余裕がないんだ。そのうち方向性や目標が定まってくるだろうし、そのときまた君に報告することが出てくると思う」と、こちらの当惑ぶりを察した言葉もあった。それなりに音楽活動をしていたとは言え、基本的に自由を奪われていた8年間から一転、スター扱いされる毎日で、彼自身が当惑しているのかも知れない。意地悪な見方をすれば、「獄中シンガー」というスキャンダラスな肩書きが取れたこれからが、アーティストとしての正念場とも言える。“Love”という言葉を含んだヒットが多い彼に、「どんな時に一番愛情を感じるか」と尋ねた際、「音楽に対しては強い愛情を抱いているけれど、俺がいつも愛を感じているわけじゃない」と言い捨てたのが印象的だった。ジャー・キュアーの心の塀はまだ高い。だからこそ、彼を知るには歌声を聴き続けるしかないのだ。
 
『True Reflections...A New Beginning』
Jah Cure

[VP / VP1782 / 2007年]
 


『Freedom Blues』
[VP / VP1718 / 2005年]
『Ghetto Life』
[VP / VP2215 / 2003年]
『Free Jah Cure: The Album, The Truth』
[Charm / KPCRCD0674 / 2000年]

top
top
magazine

magazine

magazine

magazine

magazine

magazine

columns

GO BACK

ISLAND EXPRESS
UK REPORT
WHAT THE DEAL IS
PLAY IT LOUD
RECORDS & TAPES
RAW SINGLES
CHART
RING RINg RING
BOOM BAP
Day In Da West

columns
columns

columns
columns
columns
columns
page up!
Riddim Nation

"Riddim"がディレクションする
レゲエ番組「Riddim Nation
第19配信中!

Go RiddimNation!

nation